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【106】初登校

 登校時間だというのに、学園の坂道はあまり人通りがなかった。


 目に見える一番近い人でも、結構距離が開いているから挨拶するにも至らない。


 俺的には、朝は生徒たちでごった返しているかと思ったんだけど、どうやら通いを選択する生徒は極一部で、殆どは寮住まいをしているらしい。


 そんな坂道を俺は、レインと並んで歩いている。


 スズネちゃんはどっかに消えてしまったし、ツクヨミとセンは朝ごはんを食べに行ってしまったから、今は二人だけだ。


 そんな中、俺とレインのやり取りは、宿を出た後もまだ続いていた。


「ブルは学園のことも、世の中のことも詳しくないんでしょう? サポートしてくれるパートナーが必要だと思うんだけど?」


「わからない事は、誰かに聞くから大丈夫だよ」


「それじゃあ、あなたが普通じゃないことが直ぐに周囲にバレてしまうでしょう?」


「隠すつもりなら、レインにも言ってないからバレたらバレただよ」


「あのね。【LG】の存在なんて知れたら大事になるわよ。最近だって、キャロットの街でSランクの闘士が【LG】を扱うって、随分と話題になったんだから」


「あー、それね」


「……? 何か知ってるの?」


 ……いや、その事については聞かないで欲しい。


「噂ぐらいならね」


「ふーん、その闘士もウンエイに属しているわけじゃないのね」


 ウンエイなんて組織はないけど、ある意味属していたんじゃないですかね。運営イコール、ロリさまみたいな感じだし。


「とにかく、俺は普通の学園生活を謳歌したいだけだから、お構いなく」


「そういうわけにはいかないわ。私にはパートナーが必要だもの。現状で私のパートナーとして相応しいのは、ブルを置いて他に居ないわ」


 自分の都合かよ! なんかレインが関わると普通の学園生活から遠のく気がするんだよなぁ。


 そんな話をしていたら学園の門へと辿り着いてしまった。


「おはようございます、レインお嬢様。それと、ブル君」


 昨日の事務員さんが、校門で待っていた。


「本日はお加減がよろしいのですね」


「ええ、彼が私のパートナーになってくれたから、暫くは大丈夫そうよ」


「それはそれは、早速レイン様に見初められるとは、大したものですね」


 おいっ! だから、パートナーにはならないって言ってんじゃん! レインのやつ言いふらして俺を言い逃れできないならようにしようとしてるな!


 レインは名探偵なんかじゃない!


 詐欺師やったんやー!


「いや、パートナーにはなってないからね」


「何を言っているの? 私の寝込みを襲ったくせに」


「襲ってませーん! 襲われたのは俺の方でしょ!」


「唇を奪おうとしたわ」


「そんな事、して……したかもしれないけど、レインが起きないから、フリをしただけなんだからね!」


「やっぱり奪おうとしたんじゃない」


 ぐぬぬ、こやつなんて事を言うんだ!


「随分と打ち解けていらっしゃいますね」


 事務員さんが微笑ましい表情を俺たちへ向けてくる。


 その目をやめろ! 勝手に事情を察してる感じを出すな!


「それじゃあ、私は自分の教室に行くから。また、後でね」


 レインは言いたいことだけ言ってさっさと行ってしまった。


 俺はどっと疲れが出た。


「それではブル君も教室へ行きましょう。その前に職員室ですね。案内致します」


 あれ? もしかして事務員さんは俺を待ってくれていたのかな?


 とりあえず、レインの事を否定はしておいたけど、事務員さんは俺の言葉なんて右から左で聞いちゃいなかった。



 そして。


 案内された職員室で担当の先生に挨拶をして、暫くしたら先生と一緒に教室へと向かう事になった。


 担任の先生はウォーカー先生。


 メガネをかけた、優男って感じ。白髪混じりの中分けがちょっと知的そうな雰囲気をしていた。


 ウォーカー先生に付いて辿り着いた教室は、【1-C】と書かれていた。


 一学年はFクラスまであるらしく、ひとクラスで三十名前後の生徒が在籍しているとのことだ。


 ガラガラガラ。


 引き戸になっている教室の入り口を先生が開けると、中から聴こえてきた喧騒は急に静まり返る。


 先生に続いて中へ入ると、教壇が目に留まり、そこに向かって一段ずつ高くなった席が続いていた。ふた席ずつ一つの机になっていて、そこに腰掛ける生徒たちがこちらを注目する。


 おお、なんだか懐かしいな。


 前世でも確か転校した時、こんな感じだった。


 知らない人たちの視線。


 なんとも言えない緊張感が、俺を包み込む。


 そうして、先生と共に教壇の前に辿り着くと、一人の生徒がガタンッと席を立った。


「そんな、馬鹿なっ!」


 目付きの悪い短い髪の男子生徒が一人、驚きに顔を歪めている。


 誰だろう? あの人は?


 俺がそう考えていると、男子生徒は続けて呟きを漏らした。


「何故、生きている! ブル・ドッグ!」


 え? あー、知り合いでしたか。


 でもさ、その発言ってどうなの?


 それってさ、俺が死んだ時の事を知ってるって事だよね?

お読みくださりありがとうございます。


普段お酒は飲まないんだけど、付き合いで多少は嗜む。


ゴーデンウィーク初日。


俺は真昼間から焼肉屋へと駆り出され、酒を呷っていた。

それはいい。だが、終わった後が最悪だった。

頭痛いし、気持ち悪いし。帰って速攻寝ましたよ。そして朝になった。


ああ! なんにもできてねえ!

俺の連休は後悔からスタートしたのであった。

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