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【103】吸血鬼は名探偵

 ふきふき。


 レインはスズネちゃんから手渡されたハンカチで口を拭っていた。


「なかなか美味だったわ」


 そう言ったレインの肌は健康的な色艶が戻っていた。


 相変わらず、スケスケピンクのネグリジェ姿だから、あれやそれやがそれはもう大変な事になっていて、目のやり場に困るというかなんというか。


 しかし、そんな状況でも俺のリビドーは沈静化したままである。


 というか身動きが出来ない。


 レインにかぶりつかれて血を吸われた俺は、何故か体の自由が利かなくなり床に倒れていた。


 唯一動かせるのは眼球だけ。


 悔しいから凝視してやる!


「これで暫くは遅刻せずに学園に通えそうですね」


「ええ、丁度良く提供者が現れてくれて助かったわ」


 何を勝手な事を言ってるんだ?


 提供どころか、罠に嵌って強制的に吸い付かれたんですが!


 文句を言いたいけど、声一つ出せません!


 俺がなんとか体を動かそうと頑張っていると、レインはベッドから降りてスズネちゃんが差し出した椅子へ足を組んで腰掛けた。


 赤い瞳が怪しく光り、昨日までのちょっとボケた感じは微塵も感じられない。なかなか堂に入っている。


「さて、ブル・ドッグ。私の質問に答えなさい」


 レインが偉そうな態度で声を発する。


「あなたは何者なのかしら?」


 何者と聞かれても、なんと答えればいいのだろうか?


 一般ピーポーな俺が、偉そうに語れる肩書きなんて何も無い。


「答えないつもり?」


 ちげえよ! 声が出ないんだって! 出たとしても答えられることなんて何もないけど!


「魅了が効きすぎているのでは?」


 スズネちゃんが言うとレインは何かに納得したような様子で頷いた。


 そして、指をパチリと弾くと俺の体が僅かに軽くなる。


「あーあー、おぉ、声が出る! つかいきなり何すんだよ!」


「質問しているのは私よ?」


「レインが何を知りたいのか全く理解できないね。俺はただのGランク闘士で、しがない転校生なだけだよ」


「……スズネはね。コウガで最強と言われた忍者なのよ。そのスズネを圧倒する忍者を従えている人物……あなたの事を、昨晩の内に色々と調べたのよ。

 ブル・ドッグ。ドッグ家の嫡男で、特別目立ったところのある人物ではなかった。勉学には秀でていたようで、入学模試では高い成績をを残しているわ。

 そして、ふた月ほど前に消息を絶っていて、入学金の払い戻しが行われている」


 レインが怪しく光る瞳を向けてくる。


「ところが、あなたは突然姿を現した。最強を超える最強の忍者を連れて。平凡な家柄であるあなたの資金力は、どこからくるのかしら? 彼女に稼がせたものなのかしら? いえ、そうでなければ理解ができないわ。だから私は聞いているのよ。あなたは何者で、この二ヶ月の間に何があったのかを。あなたの生い立ちでは、あなたという人物は出来上がらない」


 ……め。


 名探偵だった!


 レインは言い訳のスペシャリストなんかじゃない! 名探偵だんたんやー!


 俺も知らない事を一晩でよく調べあげたものである。


 素晴らしい推理と洞察力に感服した俺は、仕方ないからこう答える事にした。


「……内緒」


 俺がそう言うと、レインがガタンッと立ち上がった。


「私を誰だと思っているの!」


「スケスケヴァンパイアちゃん」


「スケ―――この!」


 レインが青筋を立てて怒りを露わにしていたが、俺はあんまり気にしていなかった。


 というのも、なんかピンチッぽい状況だけど、レインは俺をどうにかしようとは思っていないからだ。


 何故わかるのか?


 それは、センが俺の事を放って置いているからである。


 たぶんセンは事前にレインの心の中を覗いているだろうし、今も聞き耳を立てているかもしれない。


 というわけで、センが放って置いている内は、俺になにかが起こるようなことはない。レインの態度も俺から情報を聞き出したいが故なのだ。


 それがわかってしまうだけに、どうにも緊張感が生まれない。


 いや、元から緊張とかしないんだっけ?


「レインは俺が、異世界からやって来たって言ったら信じるかい?」


 俺の唐突な言葉にレインは目を見開いた。


 だが、その表情は真剣で、顎に手を当ててなにかを考え込んでいる。


 しかし、何かに思い当たったのか、目線を上げて俺を見つめるとハッキリと言った。


「ええ、信じるわ」


 その言葉には、逆に俺の方が驚いてしまった。

お読みくださりありがとうございます。


目の前で女子高生が、おっさんにつられて電車を降りようとしたら目的地じゃなかったみたい。

そんでその子は友達とおっさんに対して文句を言ってるから、なんでやねんって思って聞き耳を立てていたら、どうやらそのおっさんは学校の職員だったらしい。

なんで手前の駅で降りたねん!

気付けば、女子高生と同じツッコミを内心で入れていた俺だった……

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