【101】朝ですよー
チュンチュンチヨ。
朝である。
相変わらず変なのが一匹混ざった鳥の鳴き声で、目を覚ました。
珍しく今日はスッキリ爽快。
普段はツクヨミの衣で簀巻きにされて、センに抱き枕にされた状態で目を覚ますのだが、今日は違う。
なぜなら、別々に寝ているからである。
一緒に寝るのが嫌なわけじゃないけど、寝苦しいのは困る。というかわけで、俺は持て余す財力を使ってベッドを二つ部屋に置いて貰ったのだ。
ベッドが三つ並んでいても、狭く感じないほどこの部屋は広い。でも物はあまり増やさないようにしないと、直ぐに窮屈になってしまうかもしれない。
気を付けないと。
さて、今日は初登校の日だし、余裕を持って行動しよう。
俺は未だにスヤスヤ眠っている二人を起こさないように、静かに準備を始めた。
顔を洗って歯を磨いて髪型を整える。
うむ、今日もイケてる!
新品の服に袖を通して、パリッとした格好をすれば、イケメンの出来上がりである。
大人しそうな顔付きが気にならなくもないが、身だしなみさえ整えれば、俺だってそれなりにそれなりっぽくそんな感じに見えるのだ!
さあ、朝ごはんを食べて来ようかな。
因みにだが、この宿では従者の朝食は出ない。
出るのは借りた本人の分だけらしい。追加で料金を支払えば、ちゃんと用意はしてくれるみたいだけど、ツクヨミやセンが食べる量となるとどうなるかわからない。
だから、ツクヨミたちは俺が食事を終えた後に、外のお店に連れて行く事にした。まあ、おこずかいもちょくちょくあげてるから、ツクヨミは衣の中に、センは尻尾の中に結構な量の食料を蓄えてるのも俺は知っている。
だから、多少時間が遅くても、お腹が空いたと駄々をこねることもないのである。
準備を完了した俺は、部屋の外へと出た。
そこではたと思い起こされる昨日の出来事。
俺にこの宿を紹介してくれたレインは言ったのだ、起こしに来いと。それを告げるとレインは俺の返事も聞かずに、さっさと自分の部屋へと入って行ってしまったのだ。
要するに、朝が弱いレインは、寝坊対策として俺にこの宿を紹介したみたいだ。
俺の資金力を目の当たりにした彼女は、俺ならこの宿の宿泊代ぐらい出せるだろうと踏んで、わざわざ早退までして誘導しに来やがったのである。
初めて会った人の事を、目覚まし代わりにしようとか、普通考えないと思うけど。
無視しようかな?
でも、あとでめちゃくちゃ文句言われそうだしなぁ。
そもそも、鍵を貰ってないから部屋に入れない。
おお、言い訳が立った。
んじゃ、まあそいう事で。
「何処へ行くのです」
俺がレインの部屋へ寄らずに立ち去ろうとすると、背後から声が掛かった。
振り返るとそこにはスズネちゃんが立っていた。
いったい何処から現れたのか……まあ、忍者相手につまらん事を詮索をすまい。
「食堂に行こうと思って」
「であれば、お嬢様を起こされてから、ご一緒に向かわれた方が良いでしょう」
「鍵が無いから部屋に入れないんだって、ノックしたぐらいじゃどうせ起きないでしょ?」
「問題ありません。鍵は私が開けておきました」
まあ、なんて気が利く忍者なんでしょう。つか、部屋に入れるならスズネちゃんが起こせば良いじゃない。わざわざ俺が起こしに行くとか、ふざけんな!
たぶん、というか間違いなく俺は思っていることが表情に出ていたのだろう。
スズネちゃんは、腕を組んで唸ると一言述べた。
「お嬢様の寝巻きは、スケスケのネグリジェです」
……なん、だと!
今、この忍者はなんと言った?
ネグリジェ? スケスケ?
色はもちろん―――
「ピンクです」
ガガーン!
完璧じゃないか! レインの細い体にスケスケピンクのネグリジェ! 無防備な表情と乱れた髪。肩紐がずれて、見えるか見えないかのチラリズム。
これは、見たい!
否!
男の子なら是非とも拝まなくては、人生の半分は損をする!
俺は表情を引き締め、【307】号室に手をかけた。
俺の背後でスズネちゃんが笑みをこぼした気がした。
お読みくださりありがとうございます。
昨日は左目の奥が痛かった。
たぶん俺の封じられし邪眼が目を覚ました……とかではなく、モニターの見過ぎで眼球を高速で動かした所為でジャイロ効果を生み出し、マーフィーの法則によってうんぬんかんぬん。
とりあえず治った!




