現れた計算器-2
遠くに見える山の中腹を、一本の白い直線が横切っている。その直線の上では、小さな箱型の物体が、左から右へ、そして右から左へと静かに移動している。高速自動車道路だ。
その自動車道路の開通で、私たちの街、小田島市は大きく発展した。そう、授業で習った。
それまでは水田と果樹園しかなかった小田島「町」が、隣接する工業都市で使用する部品を作り売り始めるようになった。人口が増え、街では新しい建物がドンドンと増えた。工場、市場、病院、そして学校。
もっともそれは、50年以上前のこと。当時にできた建物もいくつかは立て直された。私たちの小田島市立甲谷中学校もそうだ。古い学校をすべて解体し、高台に移設したのだ。それもまた過去のこと。今年の春に移設20周年記念式典とかがあり、その時に教えてもらったのだ。そうでもなければ、全然知るはずがない。
何しろ、私たちには直接関係がないもの。私たちは、たまたまこの街に住む両親たちの子供として生まれ、この街で大きくなっただけ。そして次の進路に応じて、その場所で暮らしていくのだから。私だけではない、卓也は子供の頃からいっしょだから当然に。ナルちゃんもきっとそうだ。だから、これからもこの小田島市で住むのかなんて考えたことないし、聞かれたこともない。
そんな先のことよりも大切なこと。それは夏休み!
だからこそ、この掃除もさっさと終わらせないといけない。いけないのに。
「どりゃっ!くらえっ飛虎極武剣!」
「させるかっ!華舞殺法陣!」
勇者二人は、まだ戦っていた。相打ちになってしまったら世界は平和になるのにな。