双子の僕と姉 ~愛情と依存~
深夜零時前。真っ暗な部屋で、一つの布団に二人でくるまる。
両手とも恋人繋ぎをして、おでこを合わせ、相手の吐息を感じる距離まで体を寄せる。
「明日が来るよ」
「来なきゃいい」
僕の言葉に、姉はすぐ返してきた。
「もうすぐ十八だね。大人だ」
「私たちは子供。ずっと子供」
「大人だよ。なりたくなくても、大人になる」
「嫌よ。何とかして。私はなりたくないもの」
「どうしてなりたくないのさ。自由に近付けるのに」
「大人はみんな汚い。私たちを捨てたのも大人だし」
「拾ってくれたのも大人だ」
「はぁ。あなたが一番嫌い」
姉が再度ため息を付いた。その息がはだけた胸を擽り、思わず手に力が入る。
「なによ。溜まってるの?少しくらいなら付き合うわよ。オーラルまでね」
「溜まってないからいいよ。今のは整理現象。それに、もうしない約束だ」
親に捨てられた僕らは、僕らしか信用しなくなった。そして信用は信頼に変わり、依存に帰着した。
その歪んだ依存の心を愛情と錯覚している。その自覚をしながら、見て見ぬふりをして過ごす。
罪悪感、背徳感、快楽。それらが相俟って、僕らはいつからかセックスを求めていた。
十八になったらやめる。その約束の時が来るまでは。
「だから大人になりたくなかったのよ」
姉がボソッと呟く。眉間に皺を寄せ、目を細めていた。
自分が傷付かないために、怒ったふりをする。姉の常套手段であり、逃げ場がなかった彼女が唯一できた小さな抵抗。
「………僕だってなりたくなかったよ」
「だったら子供のままでいいじゃない」
僕は姉の顔をじっと見つめる。ひとは、僕らの顔が瓜二つと言う。けど、姉の方が小顔で、肌も白くて、何より綺麗だ。
「別れ道、それが今なんだ。きっと」
────好きだよ。さよなら。
────愛してる。ばいばい。
深夜零時過ぎ。真っ暗な部屋で、二つの布団に二人はくるまった。