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僕の騎士道物語 孤独の主と友誼の騎士  作者: 優希ろろな
プロローグ
1/119

江口比呂という少年

 江口比呂は、小さな頃からヒーローに憧れていた。

 特撮系はもちろんのこと、アニメやマンガ、ゲームや映画に出てくる主人公を心の底から尊敬していたし、いずれ自分も大きくなったら、誰かの力になれる皆のヒーローになりたいと思っていた。

 困っている者に手を差し伸べ、弱者には優しく、強者には勇ましく。時には自己犠牲も厭わずに他人を優先し、助ける英雄。

 両親も、たくさんの人達の力になれるような、勇気と勇敢さを兼ね揃えた頼りがいのある男に育ってほしいとの願いを込めて、比呂という名前を与えてくれた。


 名前の通りヒーローに憧れる事となった比呂は、まず初めに形から入れるように、小学生の頃から剣道を習うことにした。自分の理想とするヒーローが振るう剣の構え方とは全く型が違ったが、誰よりも強くなるためにはそんなことなど言ってられない。

 好きこそ物の上手なれ、と言うように、比呂は礼法から足さばき、基本打ち、素振りなど、見る見る内に頭の中へと叩き込んでいく。その上達っぷりは師範も驚く程だ。

 気づけば比呂は道場の中で、他の子達よりも群を抜いてトップに躍り出ていた。

 だがそこで一通りの事を覚えてしまった比呂は現状に満足してしまい、次のステップへと踏み出していくことになる。本来ならありえない展開だ。


 試合に出る事もなく師範に頭を下げ、剣道はすぐに辞めてしまうこととなり、次に向かった先は弓道への道だった。

 剣技を覚えたのならば、次は弓だ。弓道だ。

 比呂は一人、調子に乗っていた。周囲の目など気にすることもなく、前を向いて己の道を突き進んでいた。ゴーイングマイウェイというやつだ。


 剣道の時と同じように、覚えだけは他の生徒よりも人一倍早く、すぐに比呂は一通りの所作を覚えてしまった。

 だがやはり長く続くこともなく、またも基本だけを覚え満足してしまった彼は、次なる道を探し進んでいく。

 次は自己防衛術を覚えなければと意気込み、合気道や空手に手を出そうとするも、両親に泣く泣く止められてしまった。

 新しいものを学ぶという事は、それはもちろん道具一式を一から集めなければいけないというわけで。費用も馬鹿に出来ない程、多大なる金額が負担されているのだ。

 しかも極めるわけでもなく、長く続けることもなく、すぐ違うものに手を出してしまう金をドブに捨てるような行為に、両親のほうが先に悲鳴を上げてしまった。否、悲鳴というよりは怒号だった。

 比呂は鬼神と化した母に、人生最大級に叱られる事となった。

 道場に通ってもすぐに辞めてしまう比呂の代わりに関係者達に頭を下げて回っていたのが両親だったのだ。

 そんな両親の事情など露知らず、次々と目新しいものに手を出そうとする比呂に対し、母はそのあまりの責任感の無さに徐々に怒りの念が募っていったらしい。

 目を三角にして叫ぶように怒鳴り散らされた時、これからは二度と同じ過ちを繰り返してはならないと彼は胸に誓った。正直、殺されるかと思った。


 それからはなるべくお金がかからないよう、自分なりに考えて、自分なりに体を鍛えることにした。地道な努力も必ず実を結ぶと考えたのだ。

 高校に入る頃には近所の子供達に、厨二を拗らせ大きくなった悲しいまでの英雄バカと変なあだ名までつけられた。

 だが比呂は気にしなかった。なぜなら彼は高校生になった今でも、ヒーローを心から尊敬し、敬愛し、夢を捨てきれない純粋な少年でいたからだ。


 ヒーローが、大好きだ。

 かっこよくて、みんなの憧れの的で、強くて優しいヒーローが大好きだ。

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