第3話、天職の儀その2
「ごほんっ!では、これより『天職の儀』を始める。子供たちよ、神に祈るのだっ!」
『天職の儀』を行なう部屋に入った俺たちは、目を瞑り片膝をついて、自分の両手を組んだ。
しかし、俺は死霊使者になれなかったらどうしようという、不安と緊張により、少しだけ他の子供たちと目を瞑るタイミングがずれてしまった。
10秒くらいたっただろうか、俺はようやく決心がつき、祈ろうとした瞬間、祈っている子供の体が次々と淡い光に包まれゆくことに気づき、どうしたのだろうと思い、観察することにした。
すると、今度は光の粒子が子供たちの手に集まっていく。それはやがて長方形の形を形成していき、そこでなぜか子供たちが目を開ける。
子供たちが目を開けると、長方形の形の光が薄れて行き、古びた本のようなものが現れる。
子供たちは組んでいた両手を離し、ゆっくりと落ちてくる古びた本を両手で受け取った。
多分、あの本に天職が書いてあるのだろう。
「すげぇ・・・。」
俺は暫しの間、自分の祈りを忘れてその幻想的な光景に目を奪われていた。
ゴツン。
「痛っ?!」
しかし、突如謎の痛みが俺を襲い、俺は両手で頭を軽く押さえ、後ろを振り向く。
「ほれ、何を呆けておるんじゃ。はよう祈らんか。」
「あ、すいません!」
神官に言われ、俺は慌てて目を閉じ、両手を組んだ。
神様、どうか天職が死霊使者でありますように。死霊使者、死霊使者ネクロマンサー)...。
「っ?!ま、まさかこの光は!」
急に神官が驚きの声をあげた。
俺はどうしたのだろうと思い、思わず目を開けてしまう。
そこには、光の粒子に覆われた俺の両手でがあった。
しかし、先ほど見た子供たちの光景と少しだけ違う点があった。
それは、光の粒子の色が虹色という事だ。
先ほど見た子供たちは皆、金色のような光の粒子だった。
「おい、目を開けるな!『天職の儀』が途中で終わってしまうぞ!」
俺は神官の声を聞き、慌てて目を閉じた。
ところで、神官が驚いていたので、アレだろうか。
アプリにあるガチャの演出でよくある、虹色の光が出たら最高レアリティ確定!...みたいな?
あ、あれ?もしかして俺、勇者になりましたーとかは無いよな?
嫌だよ?魔王と戦わないといけないとか。ダルいし。
俺はそう思い、自分でも分からないが、ここで目を開けたようが良い気がして、目を開ける。
そして、長方形の形を形成している虹色の光の粒子の中から出てきた古びた本を手に取り、一枚めくってみる。
すると、紙の真ん中に、自分の天職が書かれていた。
そう、俺の天職はーー、
『死霊使者』
...よ、
「よっしゃぁぁぁぁ!!」
見事、死霊使者になれた俺は、嬉しさのあまり、大声で叫んでしまう。
すると、コツコツコツと、俺に近づいてくる足音が聞こえる。
む、まさか神官、俺の天職を盗み見する訳ではないよな?
俺は、神官に見られるまいと、古びた本を自分の胸と両腕で挟み、神官に背を向けた。
しかし、そんな俺の心配は杞憂に終わる。
ゴツンッ!
「痛え!」
「痛え!じゃ無いわバカ者。
神聖なる神の間で騒ぐんじゃ無いわい!
それと安心せい、儂ら神官がお主たちの天職を盗み見することは固く禁じられておる。
じゃが、これだけは言っておく。お主を覆った先ほどの虹色の光は希少職以上の良い職が当たったという印じゃ。
まあ、お主みたいな騒がしい輩が勇者、なんて事はないと思うがまあ、よかったのう。
お主の人生は勝ち組になったも同然じゃ。
ほれ、わかったらとっとと出ていけい。」
神官はそう言うなり、俺から離れて行った。
俺は良い職である、死霊使者になることが出来たと言うことがわかり、とても喜んだ。
そして、この事を1番の友達に話そうと、急いで神の間から出て行った。
ふふふ、話したらきっと羨ましがるだろうな。
待ってろよーー、
「母親!」
この時、俺はすっかり死霊使者ネクロマンサー)が禁忌とされている事を忘れていた。
今日の投稿はここまでです。土曜日に次の話を投稿する予定です。