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スケルトンの正しい使い方  作者: 浮浪人
序章
2/5

第2話、天職の儀その1

おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃ...。


「あら?急に泣き止んでどうしたのかしら。まあ、これで編み物にも集中できるから良かったわ。」


若い女の人の声が聞こえる。


あれ?俺、さっきまでコンビニで買い物していたはず。


俺は急に視界が真っ暗になった事、そして聞き覚えのない女の人の声が聞こえたので、不思議に思って目を開ける。


どうやら、ただ単に目を瞑っていただけだったらしい。


しかし、ここは俺が先ほどまでいた自室では無いようだ。


「・・・!・・・。」


俺は驚きのあまり、声を挙げようとしたが、言葉を発する事は出来なかった。


不思議に思い、俺は自分の手を口に当てる。


ぷにっとした、柔らかいくちびるに触れた。


変だな、俺の肌はいつもカサカサしていて、特に唇の乾燥はひどく、今の季節は常にリップクリームを塗っているはずなのに。


そして、俺が唇から手を離した際に、目にとても30を越えたおっさんのものとは思えない、とてもとても小さな、もみじのような手が視界に入った。


「・・・!?・・・!」


また叫んでしまったが、相変わらず言葉を発することが出来ない。

一体どういう事だろう?


「あらあら、むずむずしてどうしたの。もしかして外に行きたいの?

しょうがないわね、じゃあ連れていってあげるから。」


女の人がそう言い、俺の近くに歩いて来た。

そして、次の瞬間、謎の浮遊感が俺を襲った。


うおっ?!な、なんだ?


女性は、俺を自分の体に寄せ、肩の部分とケツに手を当て、そのまま歩いた。


ちょっ、胸が当たってる!いや、そもそもこの女、デカくね?

...ん、そういえば俺の手はまるで赤ちゃんのような手になっていたな。

そして、この女は俺に妙に優しい。

これは、アレでは無いのか?


俺がよく読んでいたライトノベル。その中でも特に人気のあるジャンル。そうーー、


異世界転生って奴に巻き込まれたのか?


「ほーら、ルキウス。あなたは笑っている顔が一番素敵よ。」


女性が急に止まり、俺にそう話しかけて来た。その言葉につられ、左を向くと、鏡に映った金髪碧眼の美女と、同じく金髪の美女に抱えられた赤ちゃん。つまるところ、俺の姿が写っていた。


まじかよ。


△△△


十年後の秋。

俺が転生した、『ハルベート』という世界において、10歳の秋というのはおそらく、人生で一番大事な時期を指す。


と、いうのも10歳の秋には、『天職の儀』という、人生を左右する大事な儀式がある。


『天職の儀』というのは、10歳になった子供たちが各地方の教会に集められ、そこで子供たちは神様に祈って、職業を授かる。


それを知った俺は、長年夢だった、死霊使者ネクロマンサーに慣れるのか!と、歓喜した。


しかし、死霊使者ネクロマンサーという職は禁忌タブーとされており、もし授かった場合は、教会に連れて行かれ、強制的に転職させられると書いてあったので、俺のなりたい職は誰にも教えていない。


そこで授かる職業は、完全にランダムで、村の番長みたいな子が回復職である僧侶に、もやしみたいな痩せている子が鍛冶屋。なんてこともよくあるらしい。


ちなみに、親が張り切って、今日の朝ごはんは吐きそうになるまで無理矢理食わされた。まあ、美味しかったから良かったんだけど。


しかし、いくら自分に合わない職業であっても、授かるのは10歳。まだ子供だ。


なので、彼らは嬉しそうに自分の職業に適した技術を鍛え上げる。その姿を見ると心が痛むとは、神官の言葉だ。


自分に合わない職業でも、頑張って鍛えたら一人前に...、とは全員がなる訳では無い。


その為に、二十歳になると『転職の儀』という救済措置があるらしい。

もちろん漢字の意味のままで、10歳に授かった職業を変えるというものだ。


勿論、タダで変えれる訳では無い。


まず、鍛え上げた分が無駄になる。無駄になるというのは、鍛え上げた力や俊敏などのステータスが初期の値に戻るという事だ。


さらに、職業ランクSS以上の職には就く事が出来ず、職業ランクSSの職の人は、『転職の儀』を行う事が出来ない。


大きなのはこの四つだ。


しかし例外として、死霊使者ネクロマンサーなどの禁忌とされる職を授かってしまった場合は、『天職の儀』の後、すぐに教会に行き、神官に事情を説明し、10年間修行をする事によって、『転職の儀』にて、村人に転職できるらしい。


そして今、俺は村にある教会にて、『天職の儀』の説明を受けている最中である。


俺のなりたい職業は死霊使者ネクロマンサーのみなので、もし10歳の時に別の職業を授かったら、『転職の儀』を行なうつもりだ。


ちなみに、昔読んでいた異世界転生ものの話に、幼馴染は勇者に、主人公は村人になるという話を読んだ事があったので、『天職の儀』の話を聞いた3歳の頃から俺は、仲の良い友達を作るのをやめた。


べつにボッチでは無いっ!コミュ障だからという訳ではなく、これは戦略的に友達を作らなかっただけだ。というか、中身がおっさんの子供に友達が出来ると思うか?答えは否だ!


え?この10年間をどうやって生きてきたかって?

そんなもの決まっている。読み書きを覚えるのに七年間。そして常識を覚えるのに一年間。その後、教会に置いてある本を読んでいたらいつの間にか10歳になっていたのだ。


どうだ、完璧過ぎる俺の幼少期は。『天職の儀』で魔法職を授からないと魔法は使えないそうなので、毎日倒れるまで魔法を使うという、効率厨のような事は出来なかった。


「ごほんっ。これより、『天職の儀』を行なう。子供たちは大聖堂に行くので儂について来なさい。」


青い神官服をきたジイさんが大きな声でそう言い、教会の入り口の扉を開け、さらに奥にある、一年に一度しか開かれないという『天職の儀』を執り行う為の部屋に続く扉を開けて中に入っていった。


その後に続くのは今年、10歳になった12人の俺を含む少年少女。


俺、いや俺たちはこれから授かる職に期待を抱きつつ、教会の中へと向かった。

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