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いただきます

そう言えば俺は彼女というものとしばらく無縁だ。

別に女性が苦手とか、モテないという訳ではない。

ただナワカミさんが家に来てからは、付き合った女性は皆悲惨な末路を辿っている。


社会人2年目で付き合った同期の春香は、俺の他にも上司とも関係を持っていた。おまけに上司は妻子持ちだからつまるところ愛人だ。

俺は春香が割とビ◯チだとなんとなくわかっていたから、それほどショックは受けなかったが、俺のことを弄んだと思い込んだナワカミさんは報復に出た。

春香は二股が発覚してから1週間行方がわからなくなっていたが、その後変死体となって見つかっている。

体は半分だけなくなっていた。


社会人3年目で付き合った真由子は一回り離れた年上の女性だ。合コンで知り合った後半ば向こうがストーカー化し、酒の勢いで肉体関係を迫られ、結婚や子供というワードも出ていたくらいだ。

この真由子はなかなか曲者でさすがの俺も軽く参ってしまった。

ナワカミさんはそんな俺を見捨てはしなかった。

真由子も春香のように突然行方不明になり、発見された時には、×××にびっしりと、赤ちゃん人形の手足が詰め込まれていた。


同じく社会人3年目で付き合った大学生の瑞穂はうっかりメッセージチャットで俺に、「樋口は便利なATM」と誤送信してしまいナワカミさんの逆鱗に触れた。

それから瑞穂とはしばらく連絡が取れなくなったが、人づてに聞いた話では、両親が仕事でとてつもない損失を出し、大学を辞めざるを得なくなり、風俗に落ちてしまったらしい。

その果てに自殺したそうだが、何故か飛び降りにも関わらず、体が真っ二つに割れていたそうだ。


振り返ると俺の恋愛遍歴は凄まじいものだが、何よりナワカミさんが僕を過剰に見守っているのは言うまでもない。

そんな時は決まって部屋にむせ返るような甘い匂いが漂っている。

そしてその翌朝必ず俺は夢×しているのだ。


だが最近周囲でも、そして自分にもナワカミさんがあまりに干渉してくるので、俺はナワカミさんを鬱陶しく思い始めている。帰る度に歯ぎしりの音、食べ物が半分だけ消える、テレビが突然点く…

今更だが俺はとんでもないものを引き入れてしまったのではないだろうか。

ここ3年で自分の周囲だけで何人死んでいるのかわからない。


俺は勇気を振り絞り、ナワカミさんに抗議をしたことがある。

耳元で虫が飛ぶような音が聞こえた。翌朝激痛で目を覚ますと、耳にムカデが入っていた。

俺はなんとかしてこのナワカミさんから逃げなければならない。でなければいずれ俺の周囲から人間がいなくなってしまう。

ナワカミさんは夏の終わり以外は外へ出れない。

俺は仕事へ行くと偽って、除霊で有名な寺を歩き回った。どこもかなり名の知れた場所のはずだが、住職は皆一様にばつが悪そうに、


「あ、それウチじゃ無理。」


と言った。


俺は途方に暮れた。財布を無くしたことから家に得体の知れないものを招き入れ、自分の命までが危険にさらされていることに。

俺は方々の図書館を渡り歩き、全国の民話、伝承を調べ尽くしたが、ナワカミさんと思しきものは見つからなかった。

俺に残された手段は2つ。

まず一つはナワカミさんとの共存。ただこれは今まで通り、俺の周囲で誰かしら人間が死んでいく。そして俺は恐らくナワカミさん以外の人間と仲を深めることができなくなる。完全にナワカミさんに束縛されることになるのだ。


もう一つは徹底的にナワカミさんを除霊すること。これが最良の選択肢だが、今のところ望みは薄い。

今はもう5月。夏の終わりまであと3ヶ月ほど。ナワカミさんが外に出られるようになれば俺のしていることもばれるだろう。

今までの付き合いからナワカミさんは裏切りというものを極端に嫌う傾向があるとわかった。

俺がしていることはナワカミさんへの立派な裏切り行為だ。俺は背筋が凍る思いだった。

ばれたら耳にムカデを入れられるくらいじゃ済まないだろう。


はっと、俺は気づいた。家から出られない、家に取り憑いているものであれば、家ごと処理すればもしかしたら消滅させられるのではと。

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