Hometown 2
車が家の敷地に入ると、小さないとこの到着を待ちわびていたふたごが先を争うように飛び出してきた。
「ザカリー! ザカリー!」
その後からシンディも子供たちに負けないくらいの勢いでポーチに出てきた。
「ラルフ! いらっしゃい。早くザカリーを抱っこさせて。あ、エヴァンもお帰りなさい」
「ひどいな、シンディ。また今回も僕は脇役かい?」
肩をすくめておおげさに落胆して見せるエヴァンをシンディがハグした。
「そんなことないわ。お帰りなさい、New dad! 早くおうちの中に入って。ザカリーが寒がるわ」
ラルフがザカリーを抱いてそのあとをキャリーバッグを引いたエヴァンが続いた。
「ザカリーのベッドがあるんだよ」
「わたしたちが赤ちゃんのとき使っていたベッドよ」
ふたごたちはいつものようにラルフにまとわりつくようなことはしないで、小さないとこをエスコートするように家に招き入れた。
ミルクを飲ませておむつを替えて、すっかりおねむになったザカリーをリビングに置かれたベビーベッドに寝かせようとしたラルフは枕元に並べられた小さなぬいぐるみや車のおもちゃを見た。それらはどれも新品ではなく自分たちのお気に入りのおもちゃから選んだものらしかった。
「まあ! ザカリーのためにありがとう」
ふたごたちはうれしそうに顔を見合わせた。
「いつまでも小さいと思っていたグレッグとセシリーだけどザカリーがやってくることになったら急にしっかりしてきたの。そろそろ次のBABYを考えなくっちゃってことかしら?」
シンディがそう言いながら夫に向かってウィンクした。
「それは神様が決めることだね」
肩をすくめたイーサンが笑顔でかわした。
「ところで兄さん、スーザンとスコットは? L国から帰ってきた?」
エヴァンが叔母のスーザンの近況をたずねた。ザカリーが眠ってようやく大人たちはゆっくりコーヒーを飲むことができた。
「帰ってきてるよ。明日やってくるよ」
スーザンはイーサンとエヴァンの叔母である。20歳という年齢差を越えて教え子スコットと結ばれたのだった。
「明日はにぎやかになるわね。さぁてお料理を仕上げなくちゃ」
キッチンに戻ろうとするシンディに続いてラルフが席を立った。
「アタシも手伝うわ」
「いいのよ、ラルフ。長旅で疲れたでしょう? ゆっくり休んでて」
「ぜひ手伝わせて。アタシたちはお客様じゃないもの。二人でとびっきりのお料理を作りましょう」
「ありがとう。ラルフの腕があれば高級レストランにだって負けない本格的なパーティー料理ができるわ」
キッチンからシンディとラルフの楽しげな笑い声が絶えまなく聞こえていた。それといっしょに料理のいい匂いも漂ってきてイーサンとエヴァンの鼻腔をくすぐった。
はしゃいでいたふたごもいつのまにかザカリーのベッドの周りで眠ってしまった。
イーサンがふたりにブランケットをかけながらしみじみと言った。
「子供ってかわいいよな。おまえにもわかるだろ?」
「うん、ザカリーを授かってなにもかも変わったよ。ザカリー中心の生活になったというか。夜中でもギャンギャン泣いていろいろ訴えてくる、でも楽しいんだ。愛おしくてたまらない」
「あはは、おまえもすっかり父親の顔になったな」
そのときイーサンのスマホがマナーモードでの着信を知らせた。スーザンからだった。
「ハイ、スーザン。うんさっき着いたよ。エヴァンに代わるね」
「Hello? スーザン」
イーサンから受け取ったスマホからスーザンのいつも通りのきびきびした声が飛び込んできた。
「おめでとう、エヴァン! ついに父親になったそうね。ラルフは元気? ザカリーはハンサムなんでしょうね」
「うん、みんな元気だよ。ザカリーはもちろんハンサムさ、ラルフに似てる。それよりも聞いたよ、スーザンとこのビッグニュース!」
「うふふ、エヴァンたちに負けないくらいすてきなニュースでしょ?」
「うん、明日が楽しみだ。すてきなクリスマスになりそうだね」