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プリズム!  作者: 龍野ゆうき
気になる『彼』?
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‐2‐ 『好き』という気持ち

「まさか、夏樹の彼氏が成蘭高校だったとはねー。正直びっくりだよ」

「…ごめん。別に隠すつもりとかは無かったんだけど、何となく言い出しにくくて…さ」

昼休みになり、四人で食堂へ向かいながら、先程の休み時間の話の続きをしていた。

「まぁ良いでしょう。その代わり!学祭行ってその彼に会えたら、ちゃんと紹介してよねっ。ついでに、その子のお友達紹介してくれても大歓迎よっ」

「あはは…。了解…」

学食に着くと、各自で今日のメニューを決めながら料理を取って行き、同じテーブル着いていく。


四人皆が席に着いて、各自で「いただきます」と食事を始めた時、不意に桜が口を開いた。

「そう言えばさ、愛美が会いたいって言ってた彼も成蘭だったよね?」

突然話を振られ、愛美は慌てて頷いた。

「う、うんっ。そうだけど…」

「それならさ、夏樹の彼に聞いてみれば少しはその人のことも探し易いかも知れないよね?まぁ学年が違かったりすると難しいのかも知れないけどさ」

スパゲティをフォークでくるくる絡めながら桜が言った。

「そうか!愛美は学祭でその彼探しが出来るんじゃん」

悠里も、今それに気付いたというように声を上げた。

「うん。見つけられると良いんだけど…」

自信無さ気な愛美に、夏樹も口を開いた。

「まぁ確かに、成蘭は生徒数が多いし…偶然を期待して探すのは大変かも知れないけど、特徴とか教えて貰えれば…」

そこまで言うと、

「えっ?そんなに生徒数多いの?夏樹、詳しいんだね」

だなんて言葉が返って来て、夏樹は内心焦る。


(流石に、自分が成蘭の生徒だったから…なんて言えない…)


「ははは…まぁ…」

そこは、渇いた笑顔で流す。

「でもさ、愛美?もし彼を見つけて会えたとして、本当にお礼を伝えるだけなの?」

桜が不思議そうにしている。

「え?うん…。そのつもり、だけど…?」

「えー?ただお礼を言いたいだけだなんて違くない?会いたいんでしょう?それって、その彼に恋してるんじゃないの?」

悠里が持っていた箸で愛美を指差しながら言った。

「そうだよね?だって、別にどうでもいい奴なら『ありがたい』とは思うけど、普通は会ってまでお礼言いたいなんて思わないよ?」

桜も同意見のようで愛美に視線を送った。

「えっ?そんな…私は別に…」

愛美は、思わぬ指摘に顔を赤らめながらも両手をぱたぱたと横に振った。

「自分でも、何て言ったらいいか分からないんだけど…。ただ、本当にもう一度会いたいなって思ったんだ。それだけなの」

困ったように笑う愛美に、悠里と桜は「ふーん」…と少し残念そうに頷いた。

「それって、一目惚れと違うの?」

どうしても恋の話に持って行きたいようだ。

そんな皆の会話に苦笑を浮かべつつ。

(でも、自分の気持ちを何て言ったらいいのか分からないっていうの…よく解るかも…)

夏樹はハヤシライスをスプーンでつつきながら思った。



ただ『好き』とか『大切』っていう言葉で括ってしまうのは、ある意味とても簡単だ。

だけど、それだけでは足りない想いや気持ちというのもある…と思うのだ。


自分は雅耶のことが『好き』で、とても『大切』だと思う。

でも、俗にいう『彼氏』だとか『付き合っている』という言葉で簡単に言い表せない程、雅耶はもっと自分にとって深く、重い所に居る。

勿論自分達には、それ以前に兄弟のように育ってきた絆がある。

そして『冬樹』であった時の、親友として築いてきた信頼関係もある。

それぞれがあって、今の自分達がある。


でも、だからこそ…迷ってしまうのだ。

夏樹に戻って、雅耶の隣で『彼氏・彼女』の関係でいるよりも『親友』として傍にいた時の方が、雅耶との距離が近かったような気がして。

実際、学校でも毎日顔を合わせていられる環境だったから…というのもある。

以前の方が一緒にいられる時間が長かった分、その頃を思い出して今の状況に満足出来ないだけなのかも知れないけれど…。


簡単に『彼氏』だなんて言葉で括りたくない。

ただ『好き』だなんて言葉では、言い表せない。


(――でも…これって、ただの我が儘…なのかな…)


夏樹は自らの思いに沈み、心の中で溜息を吐いた。



「…夏樹?どうかした?」


黙り込んでいる夏樹に気付いた悠里が、声を掛けてきた。

思わず考えにふけってしまっていたことに気付き、夏樹は慌てて「ううん、何でもないよっ」…と笑った。

愛美が相手にどんな気持ちを持っているかは別として、『もう一度会いたい』って希望は、友人として出来れば叶えてあげたいと思う。

(成蘭の学生だっていうなら、少しは役に立てるかも知れないし…)


そこで、夏樹はずっと聞きたいと思っていたことを口にした。

「ね、愛美…?その人ってどんな人なの?」

すると、悠里と桜も突然身を乗り出して来た。

「そうそう!それっそれっ!聞きたかったんだよねっ!」

「詳しく教えなさいよー」

三人に注目され、愛美は苦笑を浮かべた。

「うーん…。どんなって…」

照れてるというよりは、少し困った表情だ。

「やっぱり、もう一度会いたいというからにはカッコ良かったんじゃないの?」

「背は高かった?誰かに似てる?」

悠里と桜の勢いに押され気味の愛美は、一生懸命その時のことを思い出そうとしているようだった。

「うーん…。カッコ良かった…っていうか、綺麗な感じの男の子だったような…。でも、助けて貰ったことで、私の中で美化しちゃってるのかも知れない。今となっては何とも言えないよ。私、記憶力に自信無くって…」

これ以上は無理だというように、愛美は笑った。

「でも、それ分かる!確かにその時のシチュエーションで美化しちゃうってあるよねっ」

「うん、うん!その時点で既にフィルター掛かっちゃってるんだよねっ」

盛り上がっている悠里と桜に。

「…そういうものかな?」

素朴に疑問を感じて夏樹が呟くと。

「もーっ!愛する幼馴染みクンがいる人はコレだからーっ」

とのツッコミが返ってきた。


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