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プリズム!  作者: 龍野ゆうき
気になる『彼』?
10/40

‐1‐ 仲良し四人組

愛美の会いたい彼は、成蘭高校にいる。


お礼を言いたいだけだというけれど…

その想いはとても恋に似ている、らしい?


出来ることなら協力してあげたい。



でも、待って。

その『彼』って、まさか――…?






「…え?学園祭?」


ある朝、いつもの電車に乗って来た愛美が声を落としながらも興奮気味に話を持ち掛けて来た。

「そう!今週なんだって。成蘭の学園祭♪夏樹ちゃんも一緒に行こうよっ」

そう誘われて。

初めて女の子同士で出掛ける…という嬉しさの反面。

(よりにもよって何で成蘭高校なんだっ。…いくらなんでもヤバイよな…?流石にバレるって…)

思わず顔を引きつらせた。

(でも成蘭の学園祭…ちょっと興味ある…っていうか、行ってみたいかも…)


実は、夏樹は学園祭や文化祭というものを今までに経験したことがない。

中学にも文化祭は勿論あったのだが、当時は未だ『冬樹』で…。

学校自体サボってばかりで、ことイベント類に関しては殆ど出席などしたことがなかったのだ。

それは、そういったものに興味がなかった訳ではなく、人との関わりを避け、何より自分自身が楽しむことを良しとしなかった為であった。

それが高校入学後、雅耶や清香達に出会ったことで、その考え方も少しだけ変わり、『冬樹』でありながらも徐々に周囲とも打ち解け、学校生活を楽しめるようになっていったのだ。


でも、だからこそ思ってしまう。

今を後悔している訳ではないけれど、もしもあのまま冬樹として成蘭に通えていたら…と。

(きっと、楽しかっただろうな…)


そんな自らの思いに耽っている夏樹には気付くことなく、愛美は嬉しそうに言葉を続けた。

悠里ゆうりちゃんとさくらちゃんが日程とか色々調べてくれたんだよっ。ね?今度の土曜日、皆で一緒に行こうっ」

「う…うん…。そうだね…」

悠里と桜というのは最近仲良くなったクラスメイトで、学校ではこの四人組で行動することが多くなっていた。


(皆と一緒なら、何とかなるかな…?)

いざとなったら、普通に『冬樹の双子の妹』として通せば良いだけだし。



その日、学校で悠里や桜を交えてからも、話題は自然と学園祭のことについてばかりになった。

休み時間、窓際の一番後ろの席である夏樹の机に皆で集まって、話に花を咲かせる。


「何か部活の先輩達に聞いた話だと、成桜の生徒で成蘭の学祭に行く人達、結構いるらしいよー。何でも学祭の日から合同イベントの企画が動き出すらしいんだって」

「あ、私もそれ聞いた。両校の生徒会と実行委員が顔合わせするって言ってたね。多分、会長の早乙女さんとかも行く筈だよ」

「へぇー」

悠里と桜は二人とも吹奏楽部で、部の先輩に生徒会役員がいるとかで割と学園内のことに関しては情報通なのだ。

「合同イベントの実行委員になれば、成蘭の男の子達とも出会う機会が多くなって、彼氏出来る率がUPするんだってー。イイよねーっ。知ってたら私も実行委員なったのになぁー」

「ホント、羨ましいよね~っ」

悠里と桜は、二人でうっとりして盛り上がっている。

そんな二人の話を夏樹と愛美は笑って聞いていた。

すると、悠里が突然思いついたように話を振って来た。

「そう言えば、夏樹は彼氏とかっているの?」


「へ…?」


突然の質問に、思わず間の抜けた声が出た。

「わ…ワタシ…?」

思いのほか動揺が声に出てしまい、途端に三人の目が好奇の目に変わる。

「すぐに否定しない所をみると、もしや…夏樹は彼氏持ちだなーっ?」

悠里が目を光らせてにじり寄ってくる。

「ええーっ?裏切り者~!!罰として教えなさーいっ♪」

桜も笑顔で迫ってくる。

「良いなぁ♪夏樹ちゃんっ!どんな人なのっ?教えて教えてっ」

愛美は目をキラキラさせて期待の視線を送ってくる。


(こ…コワイ…)


三人の様々な迫力に押され、夏樹はタジタジになった。


「彼氏だとか、付き合ってるのかって聞かれると…イマイチ自分でもよく分からないんだけど…大切な人は、いる…かな」

照れながらも正直に話をすると、三人は目をキラキラさせた。


「幼馴染みの男の子かぁー。良いなぁー。超!憧れの設定だよねっ」

「お互いの距離が近すぎて二人の関係を何と言っていいか分からないだなんて…。超!美味しいすぎるー」

悠里と桜が、またも二人してうっとりしている。

「恋人である前に兄妹で親友かぁ。そういう関係も素敵だねっ」

愛美は微笑みを浮かべた。

「そ…そうかな…?そういうのも有り…で良いのかな…?」

不安げに語る夏樹に皆は、

「「「アリでしょう!」」」

と、声を揃えて賛同してくれた。


(――そっか…。別におかしくないんだ…)


皆が自分の気持ちに共感してくれて、内心でホッとしつつも、そんな優しい言葉が素直に嬉しかった。


「それで?その彼って、今何処の学校に行ってるの?」

そう普通に聞かれて、夏樹は苦笑を浮かべた。

「それが…実は――…」



「「「えええええーーーーっ!?」」」



三人の大きな驚きの声に、クラス中の生徒達が何事かと振り返るのだった。


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