転生
生き物はその命を終えるとまた違う世界に生まれ、その世界で一生を過ごすらしい。
そんな事に恐怖し始めたのは、私たちの住んでいる世界での一生を終えたなら、この世界でもっとも醜い世界とされる場所で生まれ変わり一生を過ごすと言うことを祖母から教えてもらったときのことだ。
それを聞いたとき、私は心底震え上がったものだ。ああ、あんな醜く汚い世界に行くなんて、と。
もう私の祖母はこの世界での生を終え、その醜い世界に旅立ってしまった。
なんでも其処は、人がゴミの様に生き、ゴミのように殺される世界らしい。
そんな場所には死んでも行きたくなかった。
しかし、誰にでも必ず命の終わりは訪れる。
私にもその時は訪れた。
私の寝たきりの体を支えているベッドをぐるりと囲むように家族が私を看取ろうとしている。若いのに病気なんて可哀想ね、と誰かが声が聞こえたが誰が言ったのかは分からなかった。
私は死の間際にも誰かがいると言う事に安堵し、そしてこれから訪れるであろう醜い世界との対面に恐怖していた。
視界がぼんやりし、とうとう命の灯火が消えかかっている。
私は最後の力を振り絞り、人生最後の頼みごとを呟く。
「次の一生もこの世界がいい……。私は、「人間界」っていう世界だけは、行きたくない……」
「私」の住んでる世界が人間界じゃなかっただけの話ですん。
これに似たような話をもう一個書くつもり。