四天王の困惑
ある日ある所に勇者のご一行が魔王を倒すための旅をしていた。
一人は戦士、一人は魔法使い、一人は僧侶、そして勇者といった平均的なパーティだ。
そしてたった今、四天王の一人を意外なまでにあっけなく倒したのであった。
戦士は息を整えながら言う。
「おい!四天王でもこんなもんだぜ!だいぶ弱いな魔王軍!この調子で魔王倒しちまおうぜ!」
魔法使いはそれに笑顔で応じる。
「いいねいいね、分け前は四等分だからね!」
僧侶は座ったままだが、はっきりと力強い声で言う。
「かなり弱かったけど、まだ一人目です!気は抜けませんよお二方!」
勇者はそれを受けて言う。
「僧侶の言うとおりだ。まだ俺たちは一人目しか倒していない。次はアレの数百倍強い奴が来るに違い無いから、気を引き締めろよ!」
おー、と四人の声が重なる。
そう。彼らはまだ一番弱いであろう四天王の一人しか倒していないのだ。魔王を倒すまで、気は緩められない。
一方その頃。
最初の四天王である彼が勇者にやられたと言う報を聞き、他の四天王は緊急会議を開いていた。
そのうちの誰かが口を開く。
「四天王の一人である炎を操るファイヤーが勇者に敗れた。我々は近日中に勇者を討ち取らねばならない」
もう一人が口を開く。
「でもよサンダーさん。俺たちじゃ無理じゃねえ?」
サンダーと呼ばれた人物は顔をしかめつつ口を開く。
「ああ。俺たち三人では無理があるかもしれない。しかし、これは死んだ仲間への弔い合戦なのだ」
すると今まで黙っていた最後の一人がおもむろに二人を見て、言った。
「まあ、問題は我々四天王の中でファイヤー君がずば抜けて最強だったことだよね」
「……ウォーターの言う通り」
サンダーは切なそうに頭を垂れる。しかしウォーターと呼ばれた彼は喋るのをやめない。
「だって、あんな意気揚々と『勇者倒してくらぁ!』なんて言った奴が雑魚キャラ扱いされてボコボコにされてるんだよ。もう僕ら降参しようか?」
「あ、俺はもう白旗の準備は出来てます」
「フリーザー、貴様寝返る気か!」
「だって死にたくないもん」
「貴様四天王の風上にも置けぬわ!成敗してくれる!」
サンダーは激昂しフリーザーの胸倉を掴み睨みつける。しかしフリーザーは余裕の表情でサンダーを見つめ返している。
「サンダーさん、俺を掴むと俺の能力によって手にしもやけが出来ますよ?」
「そんなもん、私の能力の静電気で打ち消してくれる!」
「いやいや俺の能力怖いですよ?喰らってから数分は手が冷たくて動きませんからね」
「私の能力は喰らったものが痛みを感じる!私のほうが優れているだろう!」
そんな二人をまあまあ、となだめつつ仲裁するウォーター。「争っていては解決しませんよ。落ち着きましょう」
しかしサンダーとフリーザーは同時にウォーターを見、そのリーダー面が気に入らなかったのか面と向かってぐちぐちと不満を言い始めた。
「大体ウォーター先輩って、一番弱くねえすか?俺の下位互換じゃないですか?」
「大体ウォーターは雷タイプの私の技が『効果ばつぐん』の癖に偉そうに!」
「大体ウォーター先輩、能力無くないですか?『ホース放水』くらいしか出来ませんよね?」
「大体ウォーターは雷タイプの私の技が『効果ばつぐん』の癖に偉そうに!」
「サンダーさん、それ前も言いました」
「……お前ら、僕が気にしていることをよくもおおおお!!」
二人の言葉の何が彼の触れてはいけない琴線に触れたのかは定かではない(どうでも良い)が、激怒するウォーター。彼はどこからともなくホースを出現させ、二人に怨念のこもった放水する。
「放水舐めんなあああああ!!」
「ちょ、氷解けるやめて」
「息できないから一旦話し合おう、冷静になるんだ」
「ほーらどうだ水強ええええええ!!!」
「いや、先輩、強いのは水であって貴方は何もごががぼ」
「ふ、フリーザーの言うとおりだ。怒りからは何も生まなごががぼごぼ」
不意に、強い衝撃と重いドアが開かれる音。そこには部下と思われる人影が目を見開きわなわなと震えている。
三人が部下の方を見ると、部下は声を張り上げて言った。
「たった今、魔王様が討伐されました!!」
「「「……え」」」
勢い重視で突っ走ってみた。
なんかもう、うん、鼻で笑ってもらえたら幸いです。