第四話 想いと死闘と生徒会長
無事に編入を果たした初花とメディスンは女子高の雰囲気にのまれそうになるもなんとかその空気になじもうとする、しかし彼女らの編入と同時に初花を襲ったフラムまでもが編入をしてきた!
「お前なんで!」
「わたくしもこの学園に編入することになりましたの――」
初花には彼女がなにを考えているのかわからない。
そんな中で新たに再度命を狙う魔の手が彼女らに忍び寄っていた。
学園バトルラブコメ第四話はじまります!
「はぁあああ!」
フラムは大鎌を振り回しながらも敵をなぎ倒していく、そしてメディスンも手に持つ弓から矢を放ち遠距離ながらも敵を討ち崩していった。
しかし敵はいっこうに減る気配がなくむしろ増えているようにも感じられた。
「フラム、これじゃあキリがないですよ」
「弱音を吐くならやめてもらってもよろしくてよ?」
「誰がやめるもんですか!」
二人はどれだけ相手が大した相手ではないと思っていてもこれだけ数がいては流石にむちゃがある。
「お……おい、大丈夫か……?」
二人の姿を後ろから見ているだけの初花は心にくすぶる何かを感じていた。
「ふん、ハウロス家の力がこんなものだと思わないでくださいまし!
行きますわよ! わたくしの本当の姿をお見せしますわ!」
フラムは大きく息を吸うそして目を見開くと体中から黒い光が溢れ出す。
「んん!」
足そして腕と順番にその見にまとう衣服が変化していく。
「ああん!」
胸そして頭とそして最後には空から例の大鎌が回転しながら落ちてくるのを右手で受け止めたかと思うとなぜかそれっぽくポーズをとるフラム。
「フラム・ハウロス、業火の炎であなたたちを焼き尽くしますわ!」
「ではわたしもそれに習ってみますか!」
メディスンも目を静かに閉じなにかを念じている、するとフラムとは逆に白く眩い光が彼女を優しく包み込んだ。
するとそれまで着用していた制服が溶けるように消えはじめたかと思うとみるみるうちに彼女の姿が変わっていく。
「あぁ!」
はじめは腕。
「んん……ふぁ!」
そして足。
「はぁああん!」
最後に体と次々と彼女の風体が変わったかと思えば最後には弓を構えて可愛くポーズをした。
(どこの特撮だよ……こんな時に格好つける必要が……?)
「くっ――おっ俺も戦いてぇ!」
『なんじゃ、さっきからうるさいのぅ』
闘争本能剥き出しで叫ぶ初花、そんなときどこから声がした。
「だっだれだ!?」
『ワシはお前の頭に直接話しかけておる、主の願い聞いてやらんでもないが……』
「ほっ本当か!」
『ただのぅ、主の体力が持つかどうかはわからんぞ?』
「構わねぇよ! こんな楽しいイベント放っておけるかってぇの!」
『ふむ……本来ならばこれは自ずと覚醒させるべきなのじゃがな。
仕方がないのぉ、今回は覚醒の手伝いでもしてやるかの。
あ、ちなみにワシはサナと申すしっかりと覚えておくが良いぞ』
「あ!」
その時メディスンの驚く声が響き渡った。
「なんだ……あれは――」
群れをなす堕天使の奥から一際大きい物体が姿を現していた。
「ルキフルギス……ですわ。
どうして……」
「ルキフルギスって言うと願いを叶えると言う能力と別にありとあらゆるものを破壊する能力があるって言う――あのルキフルギスですか?」
「ですわ、これを召喚できるのは一部の堕天使だけですわ。
グレモリー一族とバァル一族のみがその召喚する術を持っているはずですのに……」
「オォオォォオオオオ」
「それじゃあ、あそこにいた堕天使はその一族なのですか!?」
「わからないですけれど、可能性としては――
でも少しでも可能性があるのならば……わたくしは戦えない」
「逃げるのです?」
「知性を持たぬ堕天使ならば殺したところで問題ないんですの、けれどこれを破壊することはできませんわ」
「だったらさ、俺が破壊してやるよ」
二人の後ろから初花の声がする。
「なっ! なにを言ってるんですか?!
とても正気とは思えないですよ、初花さん!」
「ですわ!
さきほどのわたくしたちの話を聞いておりませんの?!」
「いんや、聞いてたよ」
「でしたら――」
「こいつをお前が倒しちゃ堕天使内でなにかあるんだろ? 問題が、だったら俺がなんとかしてやるって」
初花は二人に並ぶようにして立つ。
「でも生身でどうしようと言うんですか!?
「……この体は混在種の体なんだろ?」
「!?」
二人は驚いた、どうしてそれを?っと言った表情で初花を見る。
「なんか俺の頭に話けるやつがいてな、そいつに力を借りることにしたのさ。
これで俺も戦える!」
「話しかけるやつ……ですか?」
メディスンはなにやら思い当たる節があるようだ。
「あんだけデカいんだ、ちっとやそっとじゃやられはしないんだろうな」
「あっ当たり前ですわ!
あんなもの召喚されたんじゃわたくしでも倒すのが難しいですのに」
「まぁ、いいや。
俺は行くぜ」
「なっ! ちょっ!」
初花はそっと目を閉じ全身の力を抜き体全体を覆う空気の流れを読もうとしている。
「…………」
すると彼女の足元から青い光のようなものが現れ始める。
「そんな――!」
「まさかこれを行えるまでに精神と肉体が一体化しているなんて……考えられないですわ」
二人は驚きながらも初花自身に起こる変化を見守っていた。
「オォオ……オオオオ」
ルキフルギスは雄叫びを上げながら胸部分にある大きな水晶状の珠から光を発する。
「いけませんわ! 初花さんが変化を終えないうちに――」
「わたしたちが援護に回りましょう!」
「ダメですわ、わたくしは……戦えない……」
「こんな時にまでなにを言ってるんですか!?
いつもの強気はどこに行ってしまったってんですか!」
初花はそっと目を開ける、すると彼女を覆っていた光はさらに輝きを増しメディスン同様制服が溶けるように消えそして――
「なんだ……この感覚は……ぁっ」
足が手が、そして体と順番に衣服は再び彼にまとわりつく。
「これは――」
初花は自分の姿を手で触り目で見て確認をする。
「恥ずかしすぎるぞ! なんだこの格好は!?」
スカートの裾を手で掴んで下にひっぱる。
「お似合いじゃないですか! ってそんな悠長なこと言ってる場合ですか!?」
「あ、ああ。
そうだったな、じゃあちょっくら腕試ししてくるわ」
初花は二人をおいて走り出した、目的はすぐそこにいるデカ物のルキフルギスだ。
「行くぞ、サナ」
『あいよ、じゃあフラムやメディのようにお前さんも武器が必要じゃろうから神経集中させて手に召喚するんじゃ』
「いや、俺に武器は不必要だよ」
『なんじゃと?!』
初花はまっすぐルキフルギスめがけて走るがその手を阻むように堕天使たちが立ちはだかった。
◇
「行くぞ!」
初花は自分の攻撃するイメージを浮かべてその手に神経を集中させる、すると――
「なんですか、あれは……」
「わたくしもあんなのはじめて見ますわ」
二人は自らの目を疑った、それは初花の手には小さくだが電流のようなものが現れそしてそれは徐々に大きくなっていく。
「守られるのはゴメンなんだ、俺は俺の手で自分を殺した相手を見つけてみせる!
そのためならどんな障害でも乗り越えてみせる!
いっけええええ!!!」
初花はその手に集まった雷を前方に一気に解き放った、すると解き放たれたその雷は前方に立ちふさがる堕天使たちに直撃する。
「まだまだぁ!」
今度はなにをするかと思いきや――
「いくら言葉が通じない相手でもこれだけはわかるだろう!
お前は俺には勝てない! なぜなら!」
「オォォオオオォオ」
ルキフルギスと相対するかのように立ち止まる、ルキフルギスは胸の水晶状の珠に集まった光を一気に初花めがけて放った。
「危ないです! 初花さん!!」
必死に訴え掛けるメディスンだったがその声は初花には届かない。
「なぜなら俺は自己の判断すなわち意志があるからだ!」
初花は右手をルキフルギスに向けてかざすと、手のひらを中心にしてなにやら魔法の術式らしき紋様が現れた。
「いくぞ! 雷霆!」
紋様から強大なエネルギーが放出されたかと思うとそれはルキフルギスの放った光と真正面からぶつかりあった、周辺は眩い光に包まれ飛び散ったエネルギーの飛び火は周辺に固まっていた堕天使たちをも巻き込んでしまっていた。
しかし、片腕だけでその膨大なエネルギーを放出するには無理があった。
ジリジリと初花の体はエネルギー放出の勢いに負けて徐々に後退していく、たまらずに左手で右手を支えた。
「想像以上だ、こいつただのデカ物じゃなかったな」
『当たり前じゃ!
無謀にも程があるぞ、一旦後退せんか!』
「へっ、俺がただの猪突猛進な男とでも思っているのか?
それならそのイメージは払拭しなきゃな!」
初花の目の色が変化し始める、碧眼だ。
(こりゃ当分寝たきりかもな……)
彼女は心の中で思った、さすがに体が悲鳴をあげているのがわかっていた。
「さぁ、これで終いにするか!
雷霆解除!」
初花は雷霆を解除をするとルキフルギスの放つエネルギーが初花めがけて押し寄せてくる、それを横に素早く飛び回避する。
しかし、ルキフルギスは回転しながらもその攻撃対象から外そうとしない。
「確実に殺そうとしてるな、あいつ」
「初花さん! 援護します!!」
その声とともにメディスンが矢を放つも敵にはまったく効果がないようだ。
「空を狙え! メディ!」
「はい!」
初花はメディに指示をすると彼女はその通りに矢先を空に向けて射る。
すると放たれた矢は空高くまで飛び空中四散し雨のごとく矢が降り注いだ。
「よくやった! あとは俺に任せろ!」
初花はもう一つの能力を使う。
「幻視!」
するとルキフルギスの動きが止まった。
「動きを止めた?!」
「残念だったな、これでトドメだ――ってあれ……?」
急に力が体から抜ける、体が限界を迎えたようだ。
(肝心なときに……くそっ……)
崩れ落ちるように倒れこむ初花、しかしルキフルギスはこの機を逃すはずもなく攻撃を加えようとしたその時だった。
どこからともなく紅く燃やし尽くす業火の炎がルキフルギスを襲った。
「燃やしつくしなさいませ! 絶業炎砲!」
「フラ……ムか……どうして?」
「見ていられないですわ、もうここまでやったんだからわたくしが引導を渡して差し上げますわ!」
「初花さん! 立てますか?」
「あ……あぁ、大丈夫だ。
すまないな」
初花のもとに泣きそうな表情を浮かべながら走り寄ってくるメディスン、彼女は初花を抱きかかえながらもその場を離れようとした時だった。
メディスンの前に現れたのは堕天使だ。
「なっ! なんで……」
メディスンの顔色が絶望めいたようにみるみるうちに変わっていく、堕天使はその手に伸びた長く鋭い爪を突き立てる。
その時だった――
「オオ……オォォ……」
なにかの光が横一閃したかと思えば堕天使は呆気なくその姿を消していく。
「…………」
うっすらと目をあけるとそこには一人の少女が剣を携えて身構えていた。
「あなたは――?」
「あたしは奏月亜栖夏って言う者よ、今は早くその子を安全なところへ」
亜栖夏はそう指示するとメディスンは羽を広げて安全圏へと脱出する。
「……ねぇ、ルキフルギス。
あたしはそこまでやれとは言ってないんだけど? どういうつもりかしら?」
「オォ……オオオ」
「はぁ、もういいわ戻りなさい。
知性のないものを使うのも気苦労が絶えないわ」
術式を展開させる亜栖夏、そして彼女は校舎上にいるある人物に向き直ると――
「あの子もそろそろ解放しなきゃね、精神が持たない――っか」
亜栖夏は指を鳴らすと校舎上にいる人物は倒れ込んだようで姿が見えなくなった。
「どういうつもりですの?
まさか貴女までが人間界まで来るなんて聞いてませんわよ」
「もうフラムちゃん怖い顔しないで、あたしはなにも本気で殺そうとか思ってたわけじゃないんだから。
その証拠に助けてあげたじゃない」
「グレモリー家の近臣とはいえアシュタロット家の人間まで出てくるなんて……事はそんなに深刻ってことなのでございますの?」
「さぁ、それはどうかしら?
ただあたしとしては鷺森初花の精神と肉体の状態を知りたかっただけよ」
フラムの質問に亜栖夏は笑顔で意味深に答えた――
◇
「――で、サマエルはどうなっているのかしら?」
「現在は活動を休止しているようですわ、それともう一つ報告することがございますの」
「なにかしら?」
「そのサマエルなのですがヤツと契約を交わしている者がいると言う噂が堕天使界で広まっていることですわ」
フラムは真剣な面持ちで口を開き亜栖夏に報告をする。
「そしてもう一つ天使界でも動きがありましたの、セラがなにやら不穏な動きをみせているようでそれがサマエル対策かどうかはわからないですけれど……」
「そう、だったらフラムは当分彼女についていなさい。
鷺森初花は恐らくあたしたちが思っている以上に成長が早いわ、今無理に動いて同志を失うわけにはいかない。
今は彼女の成長を待つしかない、そしてそのためには――」
「言われなくともわかっているつもりですわ」
「それとルキフルギスを破壊しようとしたフラムちゃんの罪は不問しておくから。
あんな木偶の棒でも一応はグレモリー家の物、本当なら大罪ものよ?」
「わかっていますわ、しかしあのような危険な状況で鷺森さんを助けないわけには……」
「だからこそよ、サマエルを消滅させるには鷺森初花の力が必要なの。
そして彼女の成長を促進させるにはあたしたちが動かないといけない、あたしは今回はどんなことをしてでも彼女の力をみたかった。
ルキフルギスを召喚させたのも無茶だとは思ってはいたけれどあたしの中ではそれが一番手っ取り早いと思った」
「…………」
「まぁ、今回はご苦労さまね。
あたしは本日でこの学園に編入、生徒会長として滞在することにしたからなにかあったら直ぐに連絡をしてね」
「……わかりましたわ」
フラムはどうにも腑に落ちない様子ではあったが一つ返事で答えた。
「ふふ、いい子ね。
じゃあ、壊れた校舎を元に戻すと同時に異空間解除しますか♪」
亜栖夏は両手を天高くかざすと手のひらの上で紫色をした光が現れ地上に崩れ落ちている瓦礫を空中に浮かすとそれはみるみるうちに壊れた校舎に向けて飛んでいく。
「さぁ、あとは空間解除っと」
校舎は綺麗に元どうりにすると次は空間解除の魔法陣を創りだす、辺りを包んでいた空間は消えるようになくなり空の色や辺りの景色の色が元に戻った。
「あれ?」
「私たちなにをしていたの?」
消えていた生徒たちがその姿を取り戻すように次々とその姿を現した。
メディスン自宅では――
「…………」
「スー……スー……」
ベッドでぐっすり眠っている初花の隣でメディスンは彼女の手を握って眠っていた。
『起きなさいメディスン、聞こえているんでしょう?』
メディスンに話しかけるようにどこからか女性の声が聞こえてくる。
「んん――その声――セラ様?」
『そうだ、堕天使界で動きがあったわ』
「はっ! はい!」
メディスンは慌てて飛び起きる、彼女はシャワーを浴びていたせいか髪が寝癖で逆だっている。
『堕天使界では鷺森初花の成長促進計画が進められています、そしてこれは我々天使界においてもそれは憂慮しなければいけない問題になりかねません』
「はぁ……」
『それはなぜだかわかりますか?』
「えっと、それは堕天使は神を裏切り自らの欲望を満たすために堕ちた存在だから――ですか?」
『あながち間違ってはいないでしょう、現在世界がもっとも恐れているのはサマエルの再起動そして暴走化です。
鷺森初花の精神と肉体の完全融合、そしてそのないないに秘める力の覚醒がサマエルの暴走化を防ぐ最良の手段なのは周知の事実、しかしながら堕天使側ではその力を堕天使のために利用しようとする者もでないとは言い切れない。
あなたには苦労をかけさせますが初花の監視そして心のケアを引き続きお願いしたいのです』
「それはもちろん喜ばしいことではありますけど――あ!!」
っと突然メディスンは大声をあげた。
『なっなんですか?』
声の主も驚いたようで声が裏返る。
「ぁ、いえ……」
(もしかしてあのルキフルギス……)
なにか思い当たるフシがあるように考えに更け始める
『なにかあったんですね?』
「え? あぁ、それが――」
メディスンは前回で起こった戦闘の詳細を声の主に伝える。
『――なるほど、そんなことが』
「わたしも尽力はしたんですが、結果初花さんに無理をさせることになってしまいました……」
『結果はどうであれ鷺森初花はそこまでの成長を見せていたなんて良い意味では喜ばしいことです。
堕天使の動向に気をつけつつも彼女を守りなさい、それが今のあなたに課せられた使命なのだから』
「わかっています」
『では任せましたよ』
「…………」
メディスンは主の声が途切れると再び初花の眠るベッドへと向かう。
「初花さん……」
「…………」
彼女の呼びかけに無反応の初花。
「初花さん……早く目覚めてください」
「…………」
(やっぱりあの時の無理が精神肉体ともに深刻的なダメージを与えている)
メディスンは唾を飲むとそっと顔を初花に近づける。
「わたしは――」
彼女は唇を重ねてキスを交わした。
第四話投稿です。
この三日間で三話分の投稿ができました、それもこれも皆様が楽しみにしていただいてくれているおかげだと私自身思っております。
第四話は前回の話の続きで主にバトルシーンが占めています。
楽しく読んでいただけると嬉しいです!
さて、気になるところが多々あると思いますがそれは第五話以降のお楽しみにって言うことで(笑
それでは次話でお会いしましょう♪