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ゆりゆりな天使は俺にご執心?!  作者: しろのうさぎ
はい、あなたに興味津々です
1/5

第一話 事故と彼女と魂転生

「めんどい……」

 それはいつもの朝、いつもの日常に退屈しきっていた田神真理たがみまことはカバンを片手に家を出る。

 そう、全てはここからはじまった――

 真理は閑静な住宅街を出て国道沿いを歩きいつものバス停留所に向かっていた、耳にイヤホンをつけて好きなアーティストの音楽を聞きながらダラダラと歩くこの姿は周囲から見てもあまり気持ちの良さを感じられない堕落しきった姿に見えていただろう。

「ったく、なんか面白いことねぇかな。

毎日毎日くだらないことばかりでつまんねぇ」

独り言を言う真理の後ろから軽快な足音と共に誰かが近づいてくる。

「お兄ちゃん! お弁当忘れてるってママが!」

 そう言って背中まで伸びた髪を両サイドで一つづつまとめたツインテールの美少女が走り寄って来た。

「あ? あぁ、別にいらねぇよ。

学食で飯買うし……それにあんまり俺に寄ってくるんじゃねぇよ、恥ずいから」

「またそんなこと言って、お兄ちゃんは結局私がいないとダメダメなんだから」

 真理を兄と呼ぶ美少女は呆れた表情をしながらも真理の隣に寄り添うように歩き出した。

 この美少女は顔こそ似つかない真理の正真正銘の妹で「田神水琴たがみみこと」と言う。

 水琴はまだ中学二年生……いや、今年で三年生になるこれから受験を控えていると言うのに毎度のごとく真理に構って来る……その行動や言動には余裕すら感じさせられる。

「それよりお前受験なのに俺に構ってる暇があるのかよ」

「あたしはいいの! どこかの兄とは違って優秀だから」

「そりゃ、悪ぅございましたね」

「それよりお兄ちゃん、今日は早く帰ってくるんでしょ?」

「あ? あぁ、そうか今日はお前の誕生日だもんな。

まぁ……善処するよ」

「なにそれ、感じ悪いなぁもう」


(今日は妹の誕生日か……まぁ、受験もあるし今日くらいは――)


 真理は毎朝こうした妹とのコミュニケーションを取るようにしている、っと言うのも妹は極度のお兄ちゃんっ子なのだ。

 水琴は相手しなければすぐに泣くし何かと世話もやいてくる真理は若干嫌々ながらもそれなりに妹を大事にしてきたのだ、だから今回の誕生日にだって一応彼女の期待に応えてやるつもりだった――

「じゃあ、あたしはこれで!

お兄ちゃん学校サボっちゃダメだからね!」

「あー……はいはい」

 先にある三叉路で兄に弁当を手渡され手を一生懸命に振る水琴とわかれると真理はイヤホンを耳につけると真理は周囲には一切の興味を示さず自分の世界に入り込んだ。

しかし、この何気ない行動が今まさに自分に迫る危機にすら気づかず大事故に巻き込まれることになるとは彼自身予想だにもなかった。

 そしてその危機は遠くから軽快な音と共に迫った。

「危ない!」

 そんな声がふと聞こえた気がした、真理はふと顔を道路に向けると一瞬で体が硬直したように動けなくなる。

 彼の視界には今まさにものすごい勢いで車がこちらに迫っているのが目についたのだ。

「……!!」

 真理は言葉を発する間もなく鈍い音が鳴り響きそして彼の視界が歪んだ、体が横に傾きカバンは空を舞い上がるそして意識がすぐに飛んで世界は真っ暗な闇に包まれたのだった。


                ◇


「んん……」

 真理はゆっくりと目蓋を開くと目の前には真っ白な天井が視界に入った。

「ここ……は?」

「やっと起きたんですね、どうですか? 体の方は」

 どこからか若い女性の声が聞こえて来た。


(あれ……俺死んで……ない?)


 真理はベッドから上体を起こし左手で頭をぽりぽりと掻いた。

「……髪が伸びてる?」

 真理は自分の髪を手に取る、しかし違和感を感じたのはそれだけではなかった。

「腕が細い……なんだ? あ、そうか……俺事故にあって……」

 真理は事故から数ヶ月過ぎてからの目覚めで髪も伸びてしまったんだろう程度にしか感じなかった、しかしこの次には信じがたい言葉を耳にする。

「そうですよ、君は大事故にあって死んだんですよ」

「死んだ?」

 目の前には背筋まで伸びた綺麗な髪に透き通った綺麗な真紅の瞳それに今の時代その手の人しか着用しないであろうゴシック風の衣服を身にまとい、年は真理とそう変わらないであろう少女がコーヒーの入ったコーヒーカップを片手にそこに立っていた。

「私はメディスン、魂転生屋なの……って言っても信じてもらえないですよね」

 真理はきょとんとした表情を向けていた、するとメディスンと名乗った少女はコーヒーカップを机の上に置き真理の後ろに回り込むと腕を真理の体に回して胸を思いっきり揉んできた。

「!!!!!」

 真理は驚いてメディスンの腕を振りほどくと同時にベッドから転がり落ちた。

「な……なにすん――ってあれ……?」

そこで初めて自分の体の違和感に気づく、男であるはずの自分の体が今は女になっていたからだ。

「ななな! なんだこれ! どうなってんだ?!」

 気が動転しあたふたとする真理をよそにメディスンはお淑やかにコーヒーを飲み干す。

「まぁまぁ、落ち着いてくださいよ」

「こ……これが落ち着いてられるか! すぐに戻せ! 俺の体を返せ!」

 激しく激昂する真理だったが次の瞬間自分の目を疑うような光景を目にする。

「戻してあげてもいいけどこれでも戻りたいと思います?」

 そう言ってメディスンは一枚の写真を真理に渡す、そこには焼けただれた体に判別がつかない顔と見るに見かねない誰かの遺体が写った写真だった。

「うっ……だ、誰だよこれは……

こんなもの見せてどう言うつもりだ」

 思わず嘔吐しかかる真理だったがグっと堪えてメディスンに問いかけると彼女はピッと人差し指を真理に向けて指す。

「これ、事故直後の貴方の体ですよ」

「ふ……ふふふ、あはは! そんな冗談が――ってマジ……?」

 さすがの真理も空気を読んだのだろうメディスンの顔も大真面目に真理を見つめていた。


(そんな……いやいや、でも確かにあの時俺は事故にあったのは確かだ……)


「…………」

「これでわかったでしょう? 貴方は死んで私がその魂を救ってあげたんです」

「いや……しかし」

「しかしもへちまもないです、これが事実なんですから」

「だからって女の体にさせるやつがあるかよ!? これからどうやって生きていけば……」

「それには心配及ばないです、その体はとある女性の提供でちょうど転生先にはちょうどよかったのです。

それにここからのケアも私がばっちりきっちり管理しますから! 任せてくださいよ!」

 自信満々に胸を叩いてアピールするメディスン。

「ちょうど良かったって……じゃあこの体の持ち主の魂はどこに行ったんだよ」

「こちらの体の持ち主の魂はもう存在しないのでご安心を」

「安心って……どういうことだよ」

「説明をするといろいろ混乱するので追々お話しますって、ですから今はとりあえずその体に慣れてください」

 確かに今いろいろ聞いたところで今の真理には気持ちの余裕がなく混乱するだけだと真理自身もいろいろ知ろうとする自分の気持ちをグっと抑えた。

「ところで真理君でしたっけ? 転生した君の居場所なのですが……」

「あぁ? そんなもん自分の家に帰るに決まってんだ――」

 そこまで言いかけて言葉を呑んだ。


(この体で帰って親父やお袋にあったら……)


「察したようですね、もう貴方の居場所はどこにもないのが今の一番の悩みどころ……いや、むしろ事情を説明すればわかってはもらえるでしょうけど」

「何を言ってんだ! 無理に決まってんだろ、だいたいだな息子が娘になりましたってそんな馬鹿げた話があるかってんだよ!」

「もぉ、そんな大声出さなくても聞こえてますって」

 指を耳につっこんで右目を閉じて迷惑そうな表情を浮かべるメディスン。

「あぁ……悪かった、ちょっと気性が激しい性格と言うかそんな感じだったからな」

「だいたいわかります、ガサツと言うかなんというか……これから思いやられます」

「うるせっ!」

ぎゅるるるる……

 そんなやりとりをしている時だった真理の転生した体からとてつもない音が部屋中にこだました。

「あら? お腹が空いたみたいね。

時間的にもちょうどいいし夕飯にしましょう」

 そう言ってメディスンは部屋を出ようとする。

「ちょっと待て、お前料理できるのかよ?」

「そんなの当たり前じゃないですか! 私はこう見えても料理の腕はピカイチなんですからね」

 自信ありありと自信に満ちあふれた表情をするメディスン。


(大丈夫か……いや、こいつを今は信用するしかない)


 どうしても嫌な予感しかしない真理だったが自分が作れるわけでもなく今はメディスンに任せるしかない。

 真理はそう思うようにして彼女を見送った――


 ――それから待つこと40分


「…………」

 真理の目の前にはずらりと悲惨な料理が並べられていた。

「なぁ……」

「はい? なんでしょう?」

「さすがの俺もここまで酷い料理は見たことがない……」

「え? 私としてはもう愛情バッチリ腕を振るったんだけど、あ! 見た目はアレだけど美味しいから! だからね? 一口食べてみてくださいよー」

 言われるがままにスプーンを手に取りスープ……いや、味噌汁?から手を付けてみる。

「糸引いてるんだが、本当に大丈夫なんだろうな?」

 真理は恐る恐る口にソレを運ぼうとした時だった、ソレの一滴が机に落ちるととてつもない速さで溶け始めたのだ。

「な――!!」

「ありゃりゃぁ……」

「ありゃりゃとか言ってる場合じゃねーだろ! もういっぺん殺す気か! 完全に悪意があるじゃねーかよ!」

「いやぁ、失敗失敗……てへっ♪」

 メディスンは舌をぺろっと出して可愛さを前面にだし謝ってくるがそんなもの真理には通用しない。

「てへっ♪ じゃねーよ! 

だぁああ! もういい、俺が作ったほうがまだマシだから俺が作る! 

ちょっと待ってろ!」

 真理はそう言ってキッチンへと向かって言った。


               ◇


「ったく、どうやったらあんな物を作れるんだ? あいつ本当に人間か?」

 ぶつぶつと独り言を言いながらも冷蔵庫を開けて食材を漁る。

「牛肉……それと玉ねぎに人参か、これくらいならカレーのひとつも作れるだろ」

 だが肝心なカレーのルーがない、真理はヤツに買いに行かせようとも思ったが思いとどまる。

「いやいや、あいつに行かせるととんでもないものを買ってきそうだ……俺が行くか」

 真理はこの姿で外に出ることを躊躇したものの背に腹は代えられないと決心しメディスンがいる部屋へと戻る。


「なぁ、お前ちょっと服を貸してくれないか?」

「しくしく」

「なぁ……聞いてるか? 服をだな――」

「しくしく」

 イライライラ

「だああああ! いつまで凹んでんだ! いいから服貸せやこのやろう!」

 真理が拳を振り上げてそう言った瞬間に部屋中に響き渡るくらいの大きな鈍い音が響き渡る。

「ちょっちょっと! 痛い! 何するんですかぁ!」

 頭をさすりながら涙目を浮かべるメディスン、真理の拳からは煙が出ているように見えた。

「お前がめそめそしてるからだろうが」

「うぅ……服は好きなの持ってってくださいよぅ」

「わぁったよ、適当に借りてくよ」

 そう言ってクローゼットを開けて適当に服を着る真理だったが……

「くっ、屈辱だ……俺がこんなひらひらしたもんを身につけるなんて」

 真理は黒いスカートに白いシャツを身にまとってみる。

「なかなかお似合いですよ」

 メディスンは涙目ながらも褒めてみせたが真理の鋭い目つきに睨まれ収縮する、まさに蛇に睨まれたカエル状態だ。

「はぁ、行ってくる」

「場所はわかるんですか?」

「ぁ? んなもんわかってるってーの。

何年住んでたんだと――」

「ちっちっち、あまいですね真理さん」

 真理の言葉を遮るように指を立てながらメディスンが言葉を挟んだ。

「なにがだよ」

「まぁ、落ち着いてください。

いいですか? 真理さんは事故にあってから3年経過してるんですよ。

魂だってすぐに転生させられるようなものじゃないのですよ、物事には順序と言うのがあってですねぇ魂を回収してから浄化、そして転生簡単な三つのこの順序ですがそれはとても長い期間が必要なんです。

しかしながら真理さんの場合魂自体がとても特別で通常何十年と歳月がかかるところを3年と言う短期間で転生まで行えたんです、私たち同業者の間ではとても希少なケースなんですよ。

しかし、人間界ではこの3年は大きいんじゃないですか? 特に町なんかは大きく変化しますし、知らないところも多いですし。

そもそも――っておーい、聞いてますかー?」

 メディスンが言い終えないうちに真理はさっさと出かける準備を進めていた。

「お前が心配してくれているのはよくわかるが話が長い。

そして俺はぐだぐだ話すそのへんの学校長みたいに話の長いやつも嫌いだ。

言いたいことはわかったから地図を描け、それを元に行ってくる」

「うぅ……真理さんが冷たい」

「そもそもなんで初対面の俺に馴れ馴れしいんだよ」

「いやぁ、だって面白そうだし」

「野次馬根性丸出しだなオイ」

「冗談ですよー、じゃあこれが地図なんで迷子にならないようにしてくださいね。

ぁ、それと女の子なんですからナンパには注意ですょー」

「はぁ……はいはい、わぁったよ」

真理はため息を一つつくと外へと出て行った。

「…………」

一口も食べてもらえなかった悲惨な料理をメディスンは一人で片付け始める。

  その彼女のその後ろ姿はどこか哀愁が漂っていた。


                 ◇


「ったく、あいつは何を考えてるのか……まったくわけがわかんねぇよ」

 スーパーへ行く道中に真理はまたもや独り言を言いながらも一人歩を進めていた。

 

(それにしても本当に何者なんだ……あいつ、魂転生――とかなんとか言ってたけど嘘を言っているようには思えない、それに現に俺が男だったはずの俺がこうして女として生きているのも事実だ)


 真理は考え込みながらも道を進んでいくとどこからか見知らぬ男が声をかけてくる。

「ねぇねぇ、君可愛いねこの辺じゃ見かけないけどどこの学校の子?」

「…………」

「あれ? シカト? つれないことしないで俺と遊ばね?」

「…………」

「あ、あのさ……いいカラオケ知ってるんだけどさ、パァーっとやろうよ」

 考え事をしていた真理にしつこく言い寄ってくる男に対して真理はだんだんと苛ちを覚え始める。

「だから――ね? 俺と――」

 男が言い終わらないうちに真理が言葉を遮るように口を開いた。

「あぁ!? 俺が考え事をしてる最中に話しかけんじゃねーよ!」

 自分が考え事をしている時や何かに打ち込んでいる最中に邪魔されることをもっとも嫌う性格のせいか怒りが絶頂を迎えると真理は鋭い目つきで相手を睨みつけた。

「おっと、そんなに怒らないでよ俺はほら、君が可愛いから声をかけてみただけなんだから」

 相手はいかにも真理の嫌う性格の持ち主、俗にいう「チャラ男」だった。

「ウザい、キモい消えろこのクズ!」

 真理はそう言葉を吐き捨てる、だがさすがにチャラ男も頭に来らしく言葉を荒げ始めた。

「はっ、なに? 馬鹿にすんのも大概にしてくれない? ちょっと可愛いからってお高くとまりやがって」

「はぁ? おめーが吹っかけてきたんだろうが!

なに俺が間違ってるような口ぶりしてんの? 

真性の馬鹿なの? 死ぬの?」

「くっ……」

「口で勝てねぇなら最初っから話しかけてくんなっつーの」

 真理はそう言うと歩く速度を早めてその場を後にしようとする――が

「ちょっと待てよ」

 この男も女にそう言われて後に引けなくなったのか真理の腕を掴んだ。

「ちょっ! おめぇ本当にしつけーな!」

「女に馬鹿にされるほど俺も穏やかな性格じゃないんだ、ちょっと付き合ってもらうぜ」

 男はそう言うと真理の腕を強く引っ張る。

「付き合うもなにも時間の無駄だ、早々と家に帰れよこのくずが!」

 真理も負けじと腕を引き離そうとする、しかし――


(力が……入らない?)


 真理は何かを思い出したかのように考えを巡らせた。

「そうか……今は女で男と女の力の差って言うのがあったんだな」

「何一人でぶつぶつ言ってんの? ちょっとそこまで付き合ってもらうからな」

 チャラ男はさらに腕を強く掴んで引っ張りこもうとする、その時だった。

「そこの若い人! あまり女の子をいぢめるものじゃありませんよ!」


(この声……どこかで……)


 真理は声のしたほうを振り向く、そこには家に置いてきたはずのメディスンが立っていた。

「おまっ! 何しにきた?」

「何しにもへったくれもないですよ! こんな危機的状況を放って置くわけにもいかないでしょ! だから助けに来たってわけ! おわかり?」

「だからって女のお前に何が――」

「まぁまぁ、いいからいいから」

 メディスンは拳をボキボキと鳴らしながらもチャラ男の方へと向かって歩いてくる。

「なんだよ……女になにができるって――」

 チャラ男が言い終わらないうちに彼の体は宙に浮きメディスンの後方へと投げ飛ばす、もとい放り投げた。

「!?」

 チャラ男は尻餅をついて唖然としている、それに対して何が起きたかもわからずに混乱しているようだ。

「さぁ、立てますか? 鷺森初花さん」

「はぁ? 俺の名前は――」

「初花さん?」

「……あぁ、立てるよ。

それよりもなんだ今の力、お前は人間じゃないのか?」

「もちろん、わたしは人間のつもりですけど詳しいことはまあ追々。

それよりもこれで現実味が湧いたでしょ? 自分が女だと言うことが」


(確かにこいつの言う通りだ、本当に女になっちまったんだな……)


 真理は自分の手を見つめて小さく肩を落とした。


「で? その名前は一体なんなんだ?

俺に名乗れってことなのか?」

 近くの公園のベンチに並んで座る真理とメディスン、季節は夏場を迎える5月。

 この時期はとても暖かく夕暮れになってもまだ暑いほうだった。

「うーん、名乗れって言えばそうなりますかねぇ?

でもその体の持ち主の名前ですからどっちみち名乗ってもらわないと持ち主にも迷惑ですよ」

「もぉ、なんでもいいよ。

どのみち俺は一回死んだんだろ? 名前なんてもう無意味に等しい」

 これまでの真理とはうって変わって力なく言葉を発する。

「人間って儚いものですよね。

生まれてきてもいつ死ぬかわからない恐怖に怯えながら生きなければならない……死ぬなんて言うのは簡単、でも――」

「お前の言うこともわかる気がする、俺の男としての人生もあっけなかったもんな。

こうして別人の体を有したところで俺にはどうしていいかわからないし」

 真理はグっと拳を握り締めると決心したかのようにベンチから腰をあげる。

「まこ……と君?」

「決めた、俺はこれからこの体で生きていく!

真理の名は捨てる、人生を始めからやり直すんだ。

だからメディスン、俺と一緒にいてくれ……料理が下手だって構わない、俺に協力してくれ」

 まっすぐな表情でメディスンの顔を見つめる真理、メディスンはそのまっすぐな表情に答えるかのように彼女もまたベンチから立ち上がった。

「……わかりました。

でも一言だけ――」

「なんだ?」

「そのセリフなんか告白っぽいです」

「う……うるせっ!」

 小さく微笑むメディスン、真理は急に恥ずかしくなりそっぽをむいた。


 はじめまして、初投稿になります【しろのうさぎ】と申します。

 まずはこちらの投稿作品に目を通して頂きまことにありがとうございます。

 さて、初作品「初めて咲くその花には毒がある」ですがいかがだったでしょうか?

 いきなり主人公がお亡くなりになられるわけですが(基本は生きてますけど)魅力のある作品に少しでも近づければと思いますので何卒ご鞭撻の程宜しくお願い申し上げます。

 また、ちょっと改正するかもしれないのでその都度当ブログと活動報告の方でご報告させていただきますので宜しくお願い申し上げます。

 次回もまた楽しみにしていてくださいね。

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