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そうだ、京都に行ってみよう 北向山不動院にて

◎ローリングボーン 「現在」の象徴 固有名詞はクレル・明方アカタ

女神の子守歌(22個の閉じた記号の音)に「レゾナンス」する

クレルの身体そのもの。その背中(背骨)に位置する。

クレル自身の行動力、変化に即応できる「身軽さ」に呼応している。

大宇宙の記録アカシャ・ドライブへのアクセスの必須要件。

そして最終的に明らかにされるクレルに内在する「女神の加護」と連動し

人間存在でありながら、男神に抗えるほどに「金剛」なる回避能力と

変動要素ハンニャ・パラメーターの上昇により拡張される運動性。

その時クレルは「神人化」し、物質の持つ限界や光速をも超える。

このエナジーは次元間の移動にも働く。

それはアカシァ・ドライブがすべての宇宙と繋がっているからである。

一度芽吹いたこのドライブとの接続は原初の男神の力でも破壊できない。



 秋風が吹き始める頃になっても、京都の街は依然として夏の熱気を引きずっていた。近年続く猛暑は、観光客にとっては殊更に厳しく感じられる。しかし、盆地の厳しい気候に長年鍛えられてきた京都の人々は、その暑さにも涼しげな顔で耐え忍んでいる。多くの人々が長袖を身につけているにも関わらず、暑さに動じる様子はない。

 クレルが今回訪れたのは、北向山不動院。その名が示す通り、この古刹は常識を覆す「北向き」という異例の配置で建立されている。通常、寺院は陽光を浴び、縁起が良いとされる南向きに建てられるのが常識とされているが、北向きという配置は、定められた運命や宿命に逆らう強い意志、あるいは未だ明かされていない秘密を象徴しているかのようだった。寺の深奥部へと足を進めた。

 クレルは、そこで燃え盛る炎を背負い、悪を焼き払う力を持つ不動明王と対峙する。その圧倒的な存在感に引き寄せられるように、「不動の炎」に触れたクレルは、自身のトラウマである父の死と向き合う強烈なビジョンを体験する。炎の熱がクレルの心に触れるたびに、あの悲劇がまるで目の前で起きているかのように鮮明に蘇る。しかし、それは単なる悪夢ではなかった。その炎は、彼女が追い求める「アカシァ・ドライブ」への暗号の一部を解読する力を秘めているのだ。炎の揺らめきの中に、無数の数字の羅列や複雑な幾何学的な図形が浮かび上がり、クレルの視床下部に直接、断片的な情報が流れ込んでくる。それは、ドライブの秘密の鍵となる手がかりのように思われた。


 本堂で、クレルは偶然にも高野山で出会った修験者・白蓮と再会した。

「あっ、白蓮さん」クレルが声をかけると、白蓮は柔らかな笑みを浮かべる。

「この間はどうもありがとうございました」とクレル。

白蓮は、山岳信仰における地母神と不動明王の協力関係について問答を交わすためにここを訪れたという。その深い知識と霊的な洞察力は、常にクレルの憧れの的だった。

「いつか出羽来てけろ」白蓮は、クレルが抱える心の闇、彼女が乗り越えなければならない試練を即座に見抜いていた。そして、それを乗り越えるための修行を優しく促した。彼女の言葉は、まるで出羽三山の深い森から響く木霊こだまのように、クレルの心に深く、そして静かに響き渡る。白蓮は、古くから伝わる修験道の奥義をクレルに教え、精神的な強さ、そして生きる上での確かな目標を強調するのだった。


 北向山不動院は、京都の歴史的背景と深く結びついている。平安時代には、この地で独自の女神信仰が栄え、陰陽道との複雑な関係を築いていた。父母のノートは、女神の過去の顕現が平安時代にあったこと、そしてその記録が寺院のどこかに隠されている可能性を示唆していた。また、陰陽道と仏教の女人禁制が、女神と男神の争いを象徴するものとして描かれる。かつて、実際に、この地では女神崇拝者たちと、女人禁制を掲げる仏教徒、そして陰陽道による権力争いが繰り広げられていたのだ。クレルは、現代の観光地と化した寺院の表面的な姿の裏に、かつて隆盛を極めた女神の苔むした「隠された祠」を発見する。そこには、忘れ去られた真実が記された古文書や、女神の姿を模したとされる秘仏が安置されていた。女神が人々の信仰から薄れていく中で、不動明王はクレルに「忘却されない者」としての使命を問いかける。


ナウマク・サンマンダ・バザラダン・センダ・マカロシャダ・ソワタヤ・ウンタラタ・カンマ


 北向不動院での滞在を終えたクレルは、不思議な巡り合わせと内なるインスピレーションに導かれるまま、いくつかの禅寺を訪れた。それぞれの寺では、「不立文字」や「公案」といった禅の深遠な教えがテーマとして掲げられていた。クレルは、ひたすら座禅を組む「只管打坐」や、抽象的な禅問答を通じて精神的な洞察を深めていく。ある座禅の最中、彼女は「拈華微笑ねんげみしょう」のビジョンを「目撃」する。それは、四角い記号に縁取られた神秘的な光景であり、この体験を通してクレルは「本当の真実は論理や言葉では表現しきれない」という根源的な気づきを得る。この啓示は、22の暗号がアカシャ・ドライブへと繋がっていることを彼女に直感させる。禅の教えは、彼女に直感と感性の重要性を説き、言葉や論理の枠に囚われない自由な思考を促した。そして、とある禅寺で、クレルは父母が遺したノートにも記された事実を認識することになる。明方家が、釈迦の十代弟子の一人であり、その知恵と慈悲で知られる摩訶迦葉まかかしょう・ピッパリの転生と深い縁があるというのだ。この事実は、明方家が古くから特別な宿命を背負ってきたことを示唆し、クレルの出自と、彼女に課せられた使命の重さを改めて彼女に突きつけるのであった。

 クレルは、宇調の知恵の根源である虚空蔵菩薩の奥義と、謎に包まれたアカシァ・ドライブの真理を追い求め、次なる重要な手がかりを求めて古都・京都を旅し続ける。京都は、万物を統合する「総和」の象徴である「四角」の地であり、「ここには、ごっつう大事なもんが隠されちゅう。」

 クレルは訳もなくそう確信するのだった。





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