第四章
「・・・ということで、大臣の皆様。収穫祭はアヴィを招待して執り行うことに変更になりました。」
翌日。
大臣の投票も含め、アヴィを要人として招くことが決まった。
「それから、昨日と今日と、色々変更があってごめんね。特別手当を出しておくわ」
「チェリア様、ありがとうございます!」「さすが女王陛下!」「チェリア様万歳っ!」
「じゃあ、各大臣は担当分野の計画書を作って、今週中に持ってきてください。」
「「「「「「はい」」」」」」
会議場を、清々しい気持ちで出ると、メイドのリラが切羽詰まった様子で話しかけてくる。
「チェリア様・・・」
「どうしたの?」
「・・・シャオリ殿が、いらっしゃったそうです」
「・・・失神したいのはなんでかしら・・・」
「ごめんなさい・・・。通さないなら武力を使う、とシャオリ殿が仰って・・・」
「それは仕方ないわね。」
「申し訳ございません・・・」
「気にしなくていいわよ。あなたたちは彼を入れないよう努力したんでしょ?・・・あの男はすぐ追い払うから安心して」
「チェリア様・・・!お美しいです!」
「あ、ありがとう?」
着替えを終えて、シャオリを通した応接室へ向かうと、扉の前でそわそわしていた騎士が目を輝かせた。
部屋の中に聞こえないように、防音の結界を張ってシャオリの様子を聞く。
「シャオリはどんな感じ?」
「特に何か起こっている様子はありませんが、たまに微弱に魔力を感じます」
「・・・もし中で何か起こっていると感じても、私が呼ぶまで入ってきちゃだめよ。」
「・・・かしこまりました。ご武運をお祈り申し上げます」
「ふふっ。じゃあ扉の守り、頼んだわ」
「シャオリ、急に来るのはこれからはやめてね?」
「別にいいでしょ、今更畏まる仲じゃないし」
「・・・で、今日はどうして来たの?」
「すぐに分かるさ」
一体、何が・・・と思った瞬間、シャオリから赤黒い煙が出てきて、こちらへ向かってくる。
・・・これは、魅了魔法?
とりあえず防がないと!
魅了魔法をぎりぎりのところで跳ね返すと、シャオリは大きな声をあげて笑い出す。
「はははっ!・・・おいチェリア、俺の嫁になれ」
「・・・は?」
突然の爆弾発言に驚いていると、シャオリが近づいてきて、私の顎を上に動かす。
「チェリア、お前って相当魔力強いよな?」
「・・・え、ええ。そうかもしれないわ」
「それなら尚更だ。お前の国民の安全は保証するから、俺に全てを任せて俺を支えてくれ」
「・・・私に何の利点があるのかしら?」
「魔力の強い世継ぎが生まれて、国民は南国の協力を得てもっと裕福な生活ができる。・・・言わずとも、これぐらいならわかるだろう?」
「断るわ」
「なんだ、アヴィが忘れられないのか?」
「それもあるけど・・・自国の民ぐらい、自分の力で守れるわ。裕福な生活より、国民は信頼出来る安全を求めているわ」
「・・・そしてその『信頼出来る安全』を叶えてくれるのは、あなたでは無い。」
あんたは信用出来ないよ、と遠回しに伝える。
「・・・その選択を後悔しなければいいけどな」
「もう帰ってくれる?用は済んだでしょ?」
「・・・ああ。」
シャオリは、部屋を出たあと、誰にも聞こえないぐらい小さな声で呟いた。
「・・・ああ、収穫祭が楽しみだ・・・」