June 7th — Robust Harris(ローバスト ハリス)
「ぉーぃ……」
「おーい…」
「ローバスト起きて!」
うちはかーちゃん以外全員男だ。暑苦しく分厚い声をしている男達の中に混ざる、黄色くハキハキとした声はすぐに誰か分かる。
「遅刻だよ! 急いで!!」
……遅刻? そんなわけないじゃん。俺は学校に行ったことないんだから、かーちゃん疲れてるのかな。子ども食堂忙しいもんね。
「入学式だよ? はやく!」
……入学式?
ドタドタドタドダダダダダダダダ………
「あ、時間やばい。 私もう食堂行くからね?」
俺はとにかく走った。必死に寝ている脳みそを起こして言葉を搾り出した。
「……っ食べ物! 何か食べないと死ぬ!」
すぐさま食卓に駆け込んだが何も並んでいない。もうみんな食べ終わったみたいだ。この家はみんなでご飯を食べることを大切にしているから、時間になっても席に座らない人の分は作らないという決まりがある。ちなみにかーさんが決めた規則だ。食堂でも同じルールでやってるらしい。
誰もいない家はシーンと静まり返り、俺のお腹の音だけが響いている。1人の朝は、なんだか心細い。心も腹も満たされない現状だけがここにある。
「ただいまっ ……ん?お前まだ家にいたのか」
仕方なく、買い物から帰ってきたとーちゃんに朝ご飯を作ってもらう事にした。極力とーちゃんの料理は食べたくない。不味いわけではないんだけど、量が……
「ダダーン とーちゃん特製、巨大ローストチキンの完成だ!! たっくさん食え!」
…‥半端ない、
「あ、ありがとう…美味しくいただくね…」
とーちゃんはフードファイターだ。最近は市場で開かれる大会によく呼ばれている。そんなことも相まって、景品の食材が山ほどある。とーちゃんも、料理も、景品も、胃袋も、みーんなビッグだ。
「なんだ、元気ないな。話聞くぞ?」
……ごめん、とーちゃん。今それどころじゃない。
そして俺は今までにないくらい爆速で食べた。そのせいか、緊張のせいか分からないが気持ち悪い。入学式で吐かないといいけど……
「行ってきまーす!」
勢いよく扉を開け外に飛び出した。
俺は明日に向かって走っている。
遅刻しないように。
一月が始まった