May 8th — Mellow Doux(メロウ ドゥーズ)
今日は朝から紅茶を飲んでいる。
僕の心の安定剤だ。
出来るなら朝はゆっくりと過ごしたい。
コンコン
「開けるよー」
ガチャ
問答無用で兄さんが部屋に入ってきた。
「飯持ってきた」
兄さんの手元には、綺麗にプレートに盛り付けられた僕の朝食があった。
「ありがとう」
「今日入学式だろう? よく食べて一日元気に過ごせよ。 あ、でも無理はするなよ」
胃が弱い僕を心配してくれているのだろう。そんな心優しい兄が大好きだ。
「ちょっとやめてよっ」
「そっちこそ離して」
聞き慣れた声が耳にさらさら入ってきた。
バンッ
部屋の扉は強く押され、誰かが部屋に入ってきた。
「「メロ兄はどう思う?」」
2つの声が聞こえて僕は振り返った。
白い肌に、長く細い青みがかった髪。ビー玉のようにコロコロとしたオーカーの瞳。間違いない。双子の弟Transと妹のParentだ。
「2人仲良くしてくれるならそれでいいよ」
優しさに溢れた柔らかい声で僕は2人にそう言った。
「でもこれ私が見つけた木の枝なの、だけどトランスが僕が使うって威張るから……」
「……!? 違うよメロ兄! 俺は、ペアレントとこの枝を半分こにして一緒に遊びたいんだ!!」
本人達は至って真剣だから申し訳ないのだが、この会話すら愛おしい。
……きっとペアレントは枝を折りたくないんだよな、でもトランスの思いやりの気持ちを壊したくはない。だから僕は2人でもう一本良い枝を見つけに行くように伝えると、2人も納得したのかすぐさま庭に走って行った。我ながら良い案だと思う。
そんな2人を追いかける様に、僕は家を出た。
一月が始まった