November 2nd — Euryops Remington(ユリオプス レミントン)
父上は国に仕える魔術師。
母上は魔術検定の試験官。
そんな2人から生まれてきたうちは、魔法に興味がない。
魔法を使ったことはあるが、学ぼうとしないため知識がゼロ。感覚でなんとな〜くで使ってきたため、水を飲もうとしたら家を燃やしたり、風で落ち葉掃除しようとしたら、近くにいた女のスカートめくっちゃったりして母上にめちゃんこ怒られた。それでもでもうちは魔法書を読みたくなかった。だってさ? ながぁーーーい文章、無理! じぃーーーっとしてるの、無理! なんだもん。しょうがないじゃん。
今まではそうやって理由をつけて魔法書から逃げてきたけど、今年からそうはいかない。なぜなら魔法学校に入学しなければいけないから。学校に行き始めれば、強制的に魔法書と魔導書に触れなきゃいけない。地獄。大地獄。
なんで皆んなそこまで魔法に執着するのかわかんないよ。うちは金持ちの女と結婚して、なんもしないで生きていければそれでいいのに…。皆んな欲深いから、魔法なんて意味わからんものこの世界に取り入れちゃってさ、頭に入れるもの増えるだけじゃん。バカだよ、ばーか。
それでもこの世界に生まれちゃったんだから、何とか過ごすしかないよなぁ。
……そうだ、父上に相談してみよう。
うちは、リビングにある皮のソファーでコーヒーを飲む父上の隣に座った。
「どうしたんだ? ユリオプス」
「あのさ、どーしてもやりたく無いことがある時ってどうする?」
『魔法書が読みたく無い』と言って、殴られたあの時の痛さを知っているうちは、遠回しで伝えることにした。もう二度とあんな思いをしたくない。
「私は、そんなこと考えてる暇があったらやりたく無いことでも手を動かすな。時間を無駄にしたく無い。」
「だよね、そうする」
父上に聞いても欲しい言葉は返ってこないとわかっていた。でも、会えなくなる前に少し、ほんの少しでも良いから話をしたかった。
学校が始まるとほとんどの人が寮に入る。事情があったり、家族と過ごしたい人は寮に入らないかもしれないが、うちがどんな状況であろうと興味がない両親は、そんなのどっちでも良いんだろうなぁ。
母上は仕事が忙しく、うちを見送る事はできないらしい。まぁ、しょうがないか…。父上に別れを告げて、満たされない心を抱えて家を出た。
一月が始まった