September 4th — Jaktar Hawkshaw(ジャクター ホークショー)
ギュイー…ギャイギャイ パタパサパタ……
昨日の夜、私は中庭の錆びたベンチにりんごを置いた。朝起きて見ると、スカスカになったりんごだけがそこに残っていたから、多分また来たんだと思う。しかも3日前よりずっとスカスカ度が増してる。仲間に知らせているのかは知らないけど、きっと何匹か来て食べてるんだと思う。
毎日のようにオナガの独特な鳴き声で目覚めるから、最近は早起きが出来ている。みんなはうるさいって言うけど、私からしたらなかなか便利な鳥だ。
「ジャクター! やっほー!」
軽快に走ってくる足音が聞こえた。毎朝のことだからもう誰か分かる。
「相変わらず早起きだね。Chiffon。」
シフォンとは一緒に暮らしている。家族とはちょっと違うけど、私達からしたら限りなく近い存在だ。ちなみに名前は私が付けた。初めてシフォンがここに来た時に、作ったのがシフォンケーキだったからそう名付けた。その時は特に何も考えていなかったが、今思えば、シフォンのふわふわの癖っ毛に良く似合う名前だと思う。
「なーにしてんの?」
「鳥が食べたりんご見てた」
「ジャクターってほんっとよく趣味変わるよね」
……これは趣味っていうか、なんとなく見ときたいって感じなんだけど…
「まぁ、そうかもね」
説明すると長くなると思い、私はその言葉を飲んだ。
「Haltenさんがジャクターのこと探してたよ。早くおいでね!! みんな待ってるから!」
「りょーかーい」
そう言ってシフォンは室内に戻って行った。私はしばらくオナガを観察してから戻ろうと思う。
じーっとオナガを見つめていると、私の視線に気付いたのか何匹か飛んで行ってしまった。オナガは名前の通り尾が長く、水色で綺麗な鳥だ。それに加えて縁起も良く、神の使いとしても崇められているらしい。
……きっと私達の状況を察して来てくれたのかな… だとしたら相当賢いな、お前ら。
そんなことを考えながら室内に戻った。
「あ、やっと来た」
そう私に声をかけたのは、ハルテンさんだ。
ハルテンさんはここ、Hamelnplace(孤児院)B班のsaule(児童指導員)だ。いわゆる、血の繋がった親と一緒に過ごせない奴のためにある家、そこのゾイレだ。一班12人で構成されている。
「今日は入学式だから、早めに準備したの。ジャクターとDementiのためにみんな早起きしてくれたのよ。だからちゃんと感謝伝えてね♪」
「みんなありがとう」
「…」
私はそう感謝を伝えた。ハルテンさんに言われなくても言うつもりだったから、すんなりと言葉が出て来た。デマンティーは相変わらず喋らない。同じ15歳なのに私と全然違う。
夜ご飯並に豪華な朝食は、12人で食べればあっという間に終わってしまった。
ハルテンさんにお礼を伝え、シフォンとまた会う約束をした後にハーメルンプレイスから出た。今はデマンティーと学校に向かって歩いている。正直クソ気まずい。一言も喋ることなく学校に着きそうだ。
一月が始まった