魔法
「他にこことは違うことはあるのかしら」
ヒナゲシが小さな声でつぶやく。
「うーん服は違う」
「とてもなめらかな生地ですね、裁断もこちらの方法とは異なるようです」
カナタはヒナゲシの頭を見た。
「髪の毛がその色なのはあんまり見ないね」
「天界では魔法で染めませんの?」
「茶髪や金髪は良く見るよ。ってかヒナゲシの髪の毛は魔法で染めてるのか」
そう言う設定なんですねとカナタが納得しているとミチタネがうなずく。
「はい、姫様は魔力が豊富ですのでこの魔法学院に通われているのです」
「あ、ここ魔法学院なんだ」
カナタは楽しくなってきた。もう今の状況が本物でも作り物でも、どっちでも
かまわない。
「じゃあさ、何か魔法使ってよ」
カナタとしては本気じゃなかった。手品でも見せてくれるかな、くらいだ。
ヒナゲシが「幻影の技なら‥」と手を組んだまでは平気だった。
その手の上に花が現れた。
前振りも何もなく、ほとんど空中にだ。
花も良くある紙のじゃなくて本物。
「どうぞ」
手渡された花はカナタの指の中でフッと消えた。
(え、え)
カナタの思考が止まる。びっくりして声も出ない。
(マホウ‥本物)
今までの記憶がグルグル頭をかけめぐる。
「え、うあ、異世界だ。オレ来ちゃった」
心臓がドキドキする。やっと理解が追いついたのだ。
「じゃあモンスターとかもいる?」
テンションがマックスになるカナタを他の二人はキョトンと見る。
「もんすたあ? が分からないのですが」
言葉が通じていないのでカナタは言い直す。
「オバケとか妖怪みたいなの」
「ああ魔物のことですか」
今度は伝わった。
「夜になれば魔物が出ますわ。北の山脈には竜もいるそうですけど、わたくしは
まだ見ていませんの」
カナタはガッツポーズをする。
「よっしゃリアルに魔物狩りできるじゃん」
でもヒナゲシとミチタネは不思議そうにカナタを見る。
「魔物を狩りますの?」
「食べられない獲物は狩りませんよ、普通は」
カナタは「ええ~」となさけない声を出した。
この世界の魔物は大した被害を出さないので放置されています。