不思議な建物
外に出るとやっぱり明るい。
カナタがいたのは横に細長い建物で左右に障子戸が並んでいる。
「すいませーん、誰かいませんか」
カナタが呼んだらお姉さんが出て来る。
「あのオレ迷ったみたいで」
話しかけただけなのに、お姉さんはギョッとした目でカナタを見る。
「え、え」
あわてたお姉さんは別の建物に逃げて行った。
(オレそんなに悪いことしたかな)
そりゃぁ知らない人の家に入っちゃったけどさ、とカナタはむくれる。
お姉さんが入って行ったのは古くて大きな家だ。まるで神社やお寺みたい。
わざわざ階段を上らないと入れないくらい床が高い。
(こんな家が近所にあったんだ)
キョロキョロしていると、その建物から人が出てきた。
階段を下りるとまっすぐカナタに近づいて来る。
「すいませんオレ迷っちゃって」
カナタがそのお兄さんにあやまると、きれいなお辞儀をされた。
「お待たせいたしました、ひとまずはどうぞこちらへ」
すっごく丁寧なその人は大きな建物にカナタを連れて行く。
(変なかっこう)
カナタは後ろから青年を見て思う。
お祭りでよく見るジンベイみたいな服を着ていて草履をはいている。髪は
お団子に結んでいた。
「玄関は遠回りになりますのでこちらから」
お兄さんは階段を上がる前に草履をぬぐからカナタも靴をぬぐ。
障子戸の中はからっぽの部屋だ。板張りの床に座布団が二枚だけ。
「急に呼び立てをお許し下さい、私はミチタネと申します」
座布団に二人が座るとお兄さんが自己紹介してきた。
「あなた様の案内役をおおせつかっております。失礼ながらお名前をおうかがい
してもよろしいでしょうか」
「おれはカナタ」
知らない人に名前を教えるのは抵抗があったけど、迷ったのは自分だからと
カナタは素直に答えた。
「カナタ様ですね。さて突然ですが、ここはあなた様の世界ではありません。
別の世界なのです」
カナタはキョトンとする。
(何言ってんの? ここの人たちヤバいんじゃない)
とにかくミチタネは大まじめだ。
「作り話ではございません。この国では数年おきに天界人を召喚する儀式を
行っております。と言っても形だけで終わることがほとんどなのですよ」
しかしまれに儀式が成功してしまうらしい。今回みたいに。
「はぁ‥でオレが天界人だと」
カナタの言葉に青年はうなずく。
「はい、風変わりな服と靴に短い髪。昔話で聞いた通りのお姿、まさに天界人」
「へー」
まだカナタの頭は追いつかない。
「この度は姫が儀式用の絵札を勝手に持ち出し術を行ってしまったそうです。
ご面倒をおかけし申し訳ございません」
ミチタネは仰々しく頭を下げる。
(変な話。〇チューブのドッキリ企画かな? まぁしばらくは家に帰りたくないし
別にいいか)
カナタは話に乗ってみる。
「分かった、オレは何すればいいの」
ミチタネはほっと息をはきながら頭を上げた。
「ご理解に感謝いたします」
その時「失礼いたします」と声がして障子がカラッと開いた。