ここではないどこかに
大繩大会ではカナタのクラスはビリだった。
カナタはミスした女子をギロッとにらむ。
(優勝は一組か。そりゃそうだろ運動神経いい奴が集まってるもんな。ズルいー
チートじゃん。あーあ、オレのクラスハズレかよ)
やっと放課後。
カナタは家にランドセルを放りこんですぐ、トモヤの家に遊びに行く。
カードゲームの対戦だ。
今日やるのは、今一番ハマっている『バトル☆スターズ』。
カナタは友達には負けた事がない。
もちろん今日だってトモヤに快勝!
「よっしゃー! オレ様バトスタ最強」
調子に乗って叫んでいたら、「へぇ俺も混ぜろよ」なんてトモヤの兄ちゃんが
顔を出してきた。もう中学三年なのに。
結果‥カナタはうなだれながら帰宅する。
しかし、最悪はこれからだった。
ランドセルに入れっぱだったテストが、母親に見つかってしまったのだ!
「どうしてこんなに点数低いの⁉ は、公式を忘れた? だからいつも言っている
でしょう、ちゃんと勉強しなさいって。やってるの? 大体あんたはいつも口先
ばっかだし、買ってあげた物もすぐに壊すし。私が、いっつも苦労しているって
考えたことはないの⁉」
オニババアから逃げ出すためカナタは家を飛び出す。
(何でオレはこんなに不幸なんだ。もうこんな世界は嫌だ)
カナタはがむしゃらに走る。
(どこか全然別の場所に行きたい。ここじゃないどこかに)