朝ご飯
昨夜は晩餐でしたが朝食はコンチネンタルスタイルです。
カナタが案内されたのは昨夜よりせまいけど池が見える部屋。
お膳は一つしかなく、ミチタネと地味姉さん以外は誰もいない。
ここで食べるのはカナタだけのようだ。
今朝のご飯は茶色いおかゆと漬物とお茶‥だけ。
「え、これしかないの」
さすがにカナタは文句を言った。
朝ご飯は本当にこれだけ。カナタはあきらめておかゆをすする。
(なんか調子がくるうなぁ。あ、怒られないからか)
いつもだったら早くしなさいって何回も言われながら食べているのだ。
こんなに静かな朝食は記憶にない。
「本日は何をいたしましょうか」
お茶を飲み終えたカナタにミチタネが聞いてくる。
「予定はないの?」
カナタは聞き返した。
ゲームだったらそろそろ村長あたりから指令が出る。
「それが学院の者は天界人の記録を調べることにかかり切りでして。夜までは
ご自由にと学院長がもうしておりました」
「学院長って誰だっけ」
カナタは人の名前はあんまり覚えられない。
「タブナ様ですよ」
お姉さんがそっと教えてくれる。
「あ、ばーさんのことか」
うなずきながらカナタは考えこんだ。
この世界にはゲームもマンガもない。ラインはできないし動画も見れない。
(うわ何もできないじゃん)
「異世界に来たら竜退治でも頼まれるかと思ってたのに」
カナタが残念そうにこぼす。
「何で倒すんですか」
口を開いたのはお姉さんだ。
言葉の意味が分からなくてカナタが迷っていると、ミチタネが補足してくれる。
「ああ昨日見た記録に、天界人の中には竜を何か‥恐ろしくて悪い生き物だと
とらえる方がいらっしゃると書いてありました。退治しようとしたこともあった
そうです。なぜでしょうか」
カナタは頭をかいた。まさかそんなこと聞かれるとは思わない。
お姉さんは質問を続ける。
「そりゃ竜がおどると嵐になるけど、でも竜がいないと困るじゃないですか。
雨が降らなくなっちゃいます」
カナタには良く分からない。
世界が違うと常識が全然違う。
「じゃあ、ここって何ができるの」
ぶーたれたカナタにミチタネがサッと答えた。
「ここは魔法学院ですから魔術の勉強なら。ご興味ございますか」
「やる、やりたい」
カナタは即答する。勉強は嫌いだけど『魔法の』がつけば話は別だもの。




