表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/71

第65話 神聖剣

 スフィーティアは、グングニールの一撃により大きな森の中へと弾き飛ばされてしまった。


 そして、グングニールの関心は、魔女ヴェファーナであるエリーシアに向いた。




 ドラゴンは、魔力を好むため、魔導士は襲われやすいのだ。桁違いに強い魔力を持つ魔女ヴェファーナとなれば余計だ。竜を()()()()()と言っても良い。ただ、通常ランクのドラゴンでは、それは喰いきれないため、対象とはならない。少なくとも最強クラスのドラゴンであるPS級でないと魔女の膨大な魔力を取り込むことはできないのだ。

 

 因みにドラゴンの階級とは、下からOD級、DT級、BT級、FG級、そして最強クラスのPS級の5クラスである。

 これは、剣聖団がかってに格付けしたものだ。通常、エメラルド・ドラゴン(風属性)とアンバー・ドラゴン(土属性)などは、ODとDTがほとんどで、上位3種のドラゴン(クリムゾン・ドラゴン(炎属性)、サファイア・ドラゴン(氷属性)、ヘリオドール・ドラゴン(雷属性))は、DTからFGまで見られる。最上位ランクのPS級は、極々まれなのだが、グングニールはその範疇にも収まらないPS級をも超える規格外のドラゴンだ。これらには、剣聖団優先討伐コードが付されている。G(グラムGram)、G´(グングニールGungnir)、L(ロンギヌスLonginus)の三大最恐龍となっているが、これ以外にもいるとかいないとか。




 話を戻そう。


「おお!我がにえよ。我の糧のなり、我の竜力フォース高進に貢献せよ」


 グングニールが、エリーシアを捉えようと動いた。


 後方からユニコーンに接近し、腕を伸ばし、エリーシアを捉えようとする。

 しかし、シンの駆るユニコーンの動きは素早い。

 グングニールは、中々ユニコーンを捉えることはできない。



(このまま奴から逃げ続けるのは無理だ)

 シンは、思案していた、



「エリーシア様、私があの竜をここで食い止めます。その間に逃げてください」

「なりません。あれの狙いは私です。ならば、私が相手にします」

「しかし・・・」

「こんなことを話している場合でもないでしょう。覚悟を決めましょう」

「わかりました」


 今のエリーシアは、8歳の少女のそれではない。今自分がやるべきこと、採るべき覚悟というのを認識していた。シンもエリーシアをただの少女とは思わず、主君の覚悟に触れ、頷くしかないと思ったのだ。



(絶対にエリーシア様をお守りする。師匠パドローネ力を貸してください!)


 

 シンは瞑目し、一瞬、師であるアトス・ラ・フェールを思い浮かべると、クワっと眼を見開いた。


「来い、神の手(ゴッドハンド)


 シンは、逃げ回るのを止め、ユニコーンがグングニールと向き合った。


 そして、間髪入れず、神の手の一撃をお見舞いする。

 グングニールがこれを腕で受け止めるが、もう一方の神の手は受け止めきれずに、殴られ飛ばされた。

 間髪入れずに、神の手はバランスが崩れたところをグングニールに上方から更なるパンチの一撃をお見舞いする。

 強烈な神の一撃により、グングニールは地上に落下して行った。


「これでも食らいなさい!」

 さらにエリーシアは、右手に光の槍を作りだし、それを次々と投げつけ、追い打ちをかけた。


(エリーシア様。凄い、何て魔力なんだ。エリーシア様からの魔力供給で不安なくゴッドハンドで戦える。さらに、ご自身でも魔法攻撃を加えるなんて。まだ子供の身でありながら、既にこれほどの魔法力おちからをお持ちとは・・・)



 グングニールは、地面に激突する寸前で体勢を立て直し、着地した。エリーシアの光の矢の攻撃もグングニールに当たるが効果はあまりないようだ。


「フフフ、この魔力、まさに魔女ヴェファーナのもの。儂の欲するものだ」

 エリーシアの光の矢を左腕を掲げ防御し受けつつ、グングニールは、見上げてそう言った。



「魔法が全然効かないなんて・・」

 エリーシアに焦燥の色が見えた。

「エリーシア様、私に策があります」

「策?」

「はい、エリーシア様は、私に魔力供給をお願いします」

 シンが後ろを振り返り、任せて欲しいという真剣な眼差しを向けた。 

「わかりました。シン、あなたに任せましょう」

 エリーシアは、シンを()()として認めたようだ。

「御意」




『シンよ。黄金剣はな、只の剣じゃない。魔法と組み合わせることで様々な、より強力な攻撃が可能となる。何せ神聖オーディンの力を発揮することも可能と言われる剣だ。そのことを覚えて置け。それは、魔女の騎士たる筆頭騎士プリンシパル魔女ヴェファーナを守るための力だ。その時、神の手と黄金剣の真の力が発揮されるだろう』

 シンは、師アトス・ラ・フェールの遺した言葉を思い出した。


「わかりましたよ。師匠パドローネ



(あの時は、どういう意味かわからなかった。でも、今エリーシア様の近くにいて、それが、どういうことかわかった)


 シンの腰の黄金剣が光を発し反応している。エリーシアの魔女ヴェファーナの魔力に反応しているのだ。


 

 グングニールは、飛び立つと向かって来た。



 シンは輝く黄金剣を引き抜き、頭上て回転させた。

来たれ(クリアー)神の手(ゴッドハンド)!」

 神の手がシンの背中付近から現れた。

 それは、今までよりも巨大な神の手だった。グングニールの大きさを超えている。


 シンは、黄金剣を神の手に向かって投げると、神の手がそれを掴む。

召喚クリアー神聖剣セイクリッドソード!」

 

 神の手が黄金剣を掴むと、黄金剣剣が黄金の輝きを発した。

 すると、黄金剣が透明な大きな剣へと変化していき、『神の手』がこれを握り、大きな透明な剣は、眩い黄金の輝きを発した。


 それは、巨大な腕と剣だけであるが、神の神々しさを纏っていた。

 まさに、神が持つにふさわしい、『神聖剣セイクリッドソード』と云えよう。


「喰らうがいい!」

 シンが叫ぶ。


 シュンッ!


 神の手が上段から神聖剣で斬りつける。

 その動きも神速と言える速さだ。


 グングニールは、咄嗟にこれは、まずいと避けたが、遅かった。

 神聖剣により左腕がストンと斬り落とされた。



「何と、これはあの時と同じ・・」



 シュン、シュン、シュンッ!


 更にシンは、グングニールに接近し、神速の神聖剣の連撃を繰り出す。



 グングニールのもう一方の右腕が飛び、翼も斬り落とすと、グングニールはバランスを崩し、地上に落下した。



 地上に降り立つと、グングニールの落とされた右腕と左腕がボコボコッと復活し、翼もバサッと羽ばたかせると復活している。


 恐ろしいまでの回復力だ。

 この最恐龍を倒すなど想像すらできない。



「何という回復力・・・」


「フフフ、やはり魔女ヴェファーナの力は、我を脅かすか。だが、その魔力こそ我が望み。よかろう、絶望をくれよう」



 グングニールは、上空高く飛び立つと、領都カラムンドの方角を向いた。

そして、黒炎ブレスをその口から放とうという姿勢に入る。


「ダメよ!あれを止めないと!」

 察したエリーシアが叫ぶ。



 グガガガガガガガガガガガーーーッ!


「お任せを!」

 グングニールがブレスを放つとほぼ同時に、シンは神聖剣の神速の一閃をグングニールの放った黒炎ブレスの軌道上に振り上げた。


 シュンッ!


 見事に、神速の一撃が、黒炎ブレスを下方から捉えると、ブレスの軌道を上空へとずらし放り上げた。


 チュドドドーーーーーーーンっ!


 暗い夜空の分厚い雲を貫き大きな黒炎ブレスの爆発が発生し、空が赤く染まった。

 その後に、スコールのような雨が落ちて来た。



 尚も、グングニールは黒炎ブレスを領都に向けて放つが、全て神の手による神聖剣により、遮られた。


「シン、グングニール(あれ)を攻撃してください」

 そう言うエリーシアだが、辛そうだ。


 神聖剣発動による魔力消費は、絶大だ。いくら彼女の魔力量が半端ないとは言え、消耗して来ている。


「御意」

 そのことは、シンも承知していた。


(これ以上戦い長引かせる訳にはいかない。ここで決める!)



 シンは、ユニコーンを上空高く舞い上がらせた。

「逃げるのか?」

 グングニールがそれを目で追った。


「誰が逃げるものか!」


 次の瞬間、グングニールの背後に神聖剣を持った神の手が出現し、十文字に神速の一撃をグングニールにお見舞いしたのだ。


 虚を突かれた形となり、グングニールの右上半身が斬り落とされた。


 グガッ!


 これには、グングニールが口から大量の血を吐いた。


「よし、行ける!」


 神の手が神聖剣による鋭い突きの一撃をグングニールの心臓目がけて放つ。

「小賢しきかな」

 グングニールの傷口から巨大な鱗のついた右腕が復活し、神聖剣の一撃を止めた。

「良かろう。少し本気を見せてくれる」



『グヴォヴォヴォーーーーーーーンッ!』


 心に直接響く咆哮をグングニールが上げた。


 この声は、辺りに地響きの如く轟き渡り、領都にまで轟いた。




 領都カラムンドでは。

「うわーっ!何だ!この内から響く声は?」

「怖い!怖い!怖い!」

「何よ、これ?この世の終わりなの!」

 人々は、頭を抱え、逃げ惑う。

 領都カラムンドは、恐怖に染まり、混乱に拍車がかかった。




 地を覆うほどの咆哮をあげたグングニールの竜体は、急激に巨大化していった、


 そして、体長100メートルを超えよう大きさの漆黒のドラゴンの姿へと変化した。

 頭には巨大な二本の角、巨大な翼、何物も受け付けないほど固そうな鱗に覆われた身体、長い手足と体長ほどもある長い尾っぽを持っていた。



「なんだ!この巨大なドラゴンは!」

 

 巨大ドラゴンへと変化したグングニールにより、右手の握力で神聖剣は砕かれ、消された。


「チッ!」


 黄金剣が、飛ばされてくると、シンはユニコーンを軌道上に走らせ、黄金剣を掴んだ。


 『神聖剣セイクリッドソード』を強大龍へと変化したグングニールに粉砕され、シンとエリーシアは、その上空を、ユニコーンを旋回させながら、見つめていた。



 神聖剣での攻撃でエリーシアの魔力消耗が大きくなり、限界が来ていた。

 エリーシアの呼吸が荒くなり、苦しそうにしていた。


「エリーシアさま、大丈夫ですか?」

 シンが、気遣いの言葉をかける


「ハアハア、大丈夫です・・から」

 エリーシアが、無理して微笑む。それが却って痛々しい。



(クソ、エリーシア様に負担をかけ過ぎた。僕は、聖魔騎士だ。エリーシア様を守るための騎士だ。この身に代えても守る!)




『遊びもこの辺で良いだろう。さあ、魔女よ、我のところへと来るが良い』

 直接心へと響くグングニールの声が二人へ届く。


 グングニールが手招きをすると、エリーシアがユニコーンから浮かび上がって行く。

「きゃあッ!」

「エリーシア様!」

 シンがエリーシアを行かせまいと手を伸ばしたが、掴めなかった。


 そして、浮かび上がったエリーシアを赤い光が包み込んだ。

 赤い光が、徐々に赤い透明なカプセルへと変化する。


「え?何これ?」

 エリーシアが、赤い透明なカプセルから出ようと叩くが、ドンドンと音がするだけだ。


 シンが、ユニコーン旋回して来て、エリーシアを包む赤い透明なカプセルに追いつき、黄金剣で破壊しようと斬りつけた。


 カキーンッ!


 しかし、それは固く弾かれてしまう。


 グングニールが左手の中指を動かすと、エリーシアを包む赤い透明なカプセルは、グングニールの左手の指先へと移動していく。


 そして、近くにきた赤い透明なカプセルを指で摘まんだ。

 カプセルを目の前に近づけ。大きな赤い目で、エリーシアを視つめた。


 エリーシアは、グングニールの赤い眼に睨まれ、背筋に冷たいものが走り、身を震わせた。


「嫌、嫌、ここから出して!スフィーティアーーーーーーーーーーッ、助けてッ!」


 

 一気に落ちてきたスコールのように振った雨により雲が消え、エリーシアの悲痛な叫びが、澄み渡った空へと響き渡った。


                                     (つづく)


神聖オーディンの力をも最恐龍グングニールは通じなかった。囚われたエリーシア。彼女の悲痛の叫びは、届くのか?この剣聖の物語もクライマックスを迎えます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ