表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/65

第2話 荒れた戦場

 ここは、カラミーア領西方の荒れた土地だ。天気は薄暗い曇り空で今にも雨が降り出しそうであった。パッと光を放つと、スフィーティアのシュライダーが、空間を裂き現れた。なだらかな丘陵地帯だ。

 「座標は、間違いないな。とりあえず、遠くから戦闘の模様を眺めているか。ドラゴンが出てこないことには、手出しのしようがない。この地には、ヘリオドール・ドラゴン(黄色のドラゴン)が出現したというが、また現れるかな」

 彼女は、到底人間では、確認することができないような地点から、カラミーア軍とガラマーン族との戦闘の状況を確認できた。シュライダーを操り、遠くに戦闘が一望できる崖の所まで来て、戦闘の状況を見守った。


「申し上げます!テンプル騎士団ブライトン卿指揮下100騎が到着いたしました」

 伝令が駆け込み、報告する。

「なんと!本国は、あの精鋭を100騎も派遣してくれたか」

 戦況を見守っていたカラミーア伯は喜んだ。カポーテ・ド・カラミーア伯爵。大柄で筋骨逞しい、長い黒い髪に胸まで届く髭面の男だ。長い間戦場を駆け抜けて来た落ち着きと風格を漂わせていた。

「それほど、王都はここの戦況を重視しているのでしょう」

 傍らの小柄の女性が口を開いた。サンタモニカ・クローゼ。身長は低いが、凛として豊かな知性を感じさせる面立ちに小さめの丸いレンズの眼鏡をかけた黒髪の女性だ。全身濃い紫色の装束に身を包んでいるところを見ると、魔道士なのだろう。まだ若いながら、カラミーア伯の信頼も厚く軍師を任されていた。

「うむ、後はドラゴンさえ出現しなければ、ここは押し返せるな」

「その心配もないかと。王都は剣聖の派遣を剣聖団に送り、剣聖団は了承したとのこと。ここカラミーアにも派遣されましょう」

 下がった丸いレンズの眼鏡を指で押し上げながら、サンタモニカは答える。

「しかし、まだ来ぬではないか。それに噂に聞く剣聖の力、本当にあの巨大なドラゴンを倒せるものなのか、俄かには信じられん」

「信じましょう。それしかありません、今は・・」

 サンタモニカは、今にも大粒の雨が降り出しそうな曇天の空を見上げた。


 派遣されてきたテンプル騎士団は、わずか100騎とは言え、さすがアマルフィ王国が誇る精鋭であった。テンプル騎士団の登場で戦況が俄かに動きだした。カラミーア軍が、テンプル騎士団を先頭に攻勢をかけたのだ。テンプル騎士団がガラマーン軍と接触すると、ガラマーン軍の小柄な褐色肌の兵士等は吹き飛ばされた。特に先頭のブライトン卿は凄まじかった。手に持った大斧を振り回せば周囲から敵が消えた。テンプル騎士団が突撃し、ガラマーン軍の陣に風穴を開けると、押されていたカラミーア軍も奮起し、大軍のガラマーン軍を押し返し始めた。

「今だー。進めー!蛮族どもをカラミーアから追い出すのだ!」

「うわー!」


 戦況は、カラミーア軍が優勢となり、ガラマーン軍が崩れだした。特にテンプル騎士団が突撃した前線は大きく突出し、ガラマーン軍は壊走し始めていた。しかし、そのタイミングであった。


 ズドーン!


 曇天の雲を突きのけ、空から大きな物体が落ちてきた。緑色のドラゴンだった。その衝撃で騎士団の騎士等が消し飛び、踏みつぶされた。

 急に雷が鳴り始め、大粒の雨が降り始めていた。


「来たか!」

 スフィーティア・エリス・クライが動く。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ