第38話 命懸けのデート
初デートというものは、やはり恋人達のイベントとして、上位に君臨するものだと皇成は考えていた。
好きな女の子と結ばれて、初めてのデート。
もちろん、健全な男子高校生である皇成とて、色々と妄想を膨らませていた。
まずは、手を繋ぐ。
次に、名前で呼び合う。
あとは……キスとかしちゃったりして、とか?そういう妄想だ。
だが、残念ながら、皇成の初デートは、全く甘い雰囲気ではなかった。
なぜなら───
「テメーら、動くなぁぁぁ!! 一歩でも動いたら、ぶっ殺すぞ!!!」
皆さん、聞こえただろうか?
この脳天に響き渡るような下品な声を。
実は皇成。今、水族館ではなく、コンビニの中にいた。
そして、出くわしてしまたったのだ。
拳銃を持ってやってきた、コンビニ強盗に!!
(あれ? どうしてこうなった??)
そして、これも全て、矢印様の采配を無視したせいである!
第38話 命懸けのデート
◇◇◇
なぜこのようなことになったのか?
話は、数十分前に遡る。
「すみませーん! 今、代わりのバスが来ますので、数十分ほど、お待ちくださーい!」
あの後、水族館に行くと決めた皇成と姫奈は、その後、水族館行きのバスにのった。
だが、そのバスが、なんといきなり故障!
どうやら、出入口のドアが閉まらないというトラブルに見舞われたらしく、代替のバスがくるまで、車内で待つことになった。
「なんか、ついてないねー」
「……そうだな」
姫奈の言葉に、皇成は小さく相槌をうつ。
まさかバスが故障するなんて。しかも、ドアのトラブル。ということは、バスのドアが閉まらないたも、外の冷気が入り、車内は、とても寒い!
12月を目前に控えた、この日は、一段と冷え込む。
一応、それなりに温かい服は着てきたが、長時間、冷たい風に晒されれば、やはり寒いものは寒いのだ!
だが、ここから、水族館までは、歩いて1時間ほどかかる。
それならば、ここで代わりのバスを待った方がいいというわけなのだが……
「大丈夫?」
「ん、大丈夫」
姫奈を気遣い声をかけるれば、皇成の隣りに座る姫奈は、大丈夫といいつつも、手を擦り合わせながら、寒さに耐えていた。
スカートできているのもあるからか、足元は、更に冷えいるように見えた。すると皇成は
「俺、ちょっと飲み物、買ってくる」
「え?」
「暖かいのがあった方がいいだろ。何がいい? ミルクティー?」
「え、じゃぁ、私も一緒に」
「いいよ。代わりのバスが来たらアレだし。俺が、一人で行ってくるから。乗ってて」
「うん……わかった。ありがとう、皇成くん」
一緒に行きたい気もしたが、ココは皇成に甘えることにした。
その後、姫奈が、ミルクティーを頼むと、皇成はバスの運転手に一言だけ声をかけ、少し先にあるコンビニまで走って行った。
そして、それを見て、姫奈は一人頬を染めていた。
(やっぱり、優しいな。皇成くん……)
寒さに震える彼女を見て、こうして気遣ってくれる。
皇成は、幼稚園の時から、よくこうして気にかけてくれた。それを思い出せば、身体は寒くとも、心の中が、ポカポカしてくる。
だが……
「ねぇ、ウチら、めっちゃ不運じゃない!」
「マジ、バス止まるとか、初めてだし!」
ふと、同じくバスの中で話している女子高生の会話が聞こえてきて、姫奈は顔をあげた。
(そういえば、今日はやけに、悪いことが重なるなぁ……)
矢印様は、水族館に行けといった。
それなのに、まさか、バスが故障するなんて。
いや、バスだけでない。ここにくるまでに、小さな不運が何度もあった。
それも、全て皇成に──
(もしかして、映画館の方がよかったのかな?)
だが、そう思ったのだが……
(いやいや、そんなはずはないよね。だって、矢印様がまちがえるわけないし……)
だが、そう思いつつも、こうして一人で待っていると、ちょっとだけ寂しくもある。
それに……
(皇成くん、いつ名前で呼んでくれるんだろう)
いまだに名前を呼ばない皇成に、姫奈は少しだけ不安になった。
次に会ったら名前で呼ぶ──と、皇成は言っていたのに、あれから数日。いくら待っても、名前では呼んでくれないのだ!
(たかだか、名前で呼ぶだけなのに……今日は、呼んでくれるかなー?)
せっかくの初デート。
今日こそは、名前で呼んでほしい。
そんなことを思いつつ、姫奈は、皇成を一人待ったのだった。
↓
↓
↓
そして、それからコンビニに入った皇成は、ぐるりと中を見回していた。
このコンビニは、家からも遠く、初めて入るコンビニだった。
だが、幸い皇成の近所にあるコンビニと同じチェーン店のコンビニだったからか、中の作りはあまり変わらない。
皇成は、姫奈を待たせているため、早めに戻ろうと、すぐさま飲料コーナーに向かった。だが、その時
「あれ?」
その飲料コーナーで、ある人物がいるのに気づいて、皇成は目を見開いた。
「あ! 四月一日くん!」
「あ……矢神先輩」
そう、そこにいたのは、新聞部の一年生『四月一日 翼』だった。




