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12 波乱の舞踏会 deux(デュー)

 カタリナの魔石化というパフォーマンスが終わるや否な、声を上げて壇上へと歩み寄ったのはブロン第三王子殿下。


 それを見たガウェインは目元を細め、


(やはり貴様から動くか)


 敵意を剥き出しにしつつ、


「なんだ、ブロン? カタリナの素晴らしいショーに水でも差す気か?」


 素知らぬフリをし、そう尋ねた。


「そんなつもりは毛頭ない。なに、兄上にひとつ訊いておきたい事があってな」


(来たな……)


 内心で思いながら、


「なんだ? それは今この場で必要な事なのか?」


「そうだ」


「ほう? ならば申してみよ」


 ブロン殿下は、ゴホン、と軽く咳払いをし、


「うむ、率直に言わせてもらう。兄上はこのカタリナという令嬢が現婚約者であると言ったな。数ヶ月前にいたフランシス家のルフィーリアとは何故、婚約破棄をしたのだ?」


 やはりか、とガウェインは思いつつも、


「何故、だと? ブロン、貴様もその場に立ち会っていたであろう。理由は重々理解していると思ったが?」


 強気に返す。


「いや、私は全く理解できていない。何せ私は頭が悪いものでな」


 ブロンはまるで煽るように指先でトントンと自身の頭をつつきながら、


「よければこの場でフランシス家のご令嬢であるルフィーリアとの婚約を破棄し、そのルフィーリアの妹君であるカタリナと新たに婚約したその経緯をもう一度、説明してもらえるだろうか?」


「……ふん。それは構わんが、いいのか? 今日ここには多くの貴族や有力者が多数集まっている。もしかしたらそのルフィーリアの家族や、下手をすれば本人が来ているのかもしれぬのだぞ? 恥を晒す事になっても私は知らんぞ?」


「ふむ、兄上が他人の心配をするなどとは珍しいな」


「ほう? ブロン、貴様私に喧嘩を売っているのか?」


「……そういうわけではない」


「まあいいだろう。ブロン、貴様が何を企んでいるかは知らぬが、そんなに私の粗探しをしたいのなら遠慮なくルフィーリアを婚約破棄した経緯を話してやる」


 ガウェインは口元を歪ませて、少しだけタキシードの襟元を緩め、まるで戦闘態勢に入るかのように近くのワインをぐいっと飲み干した後に、ブロンを睨め付けた。


「我がニルヴァーナ王国の今後の発展の為にも、魔石師の力を貴族の者たちだけが保持し続けていくのではなく、我がニルヴァーナ王家にもその血筋を伝えるべきだと私と我が父は考えていた。そこでフランシス家の家長であるエメルド・フランシスと相談し、フランシス家の長女であるルフィーリアとの婚約を交わした」


 そこまではルビイを取り巻く全ての人たちが知り得ている話。


 ブロンも、人混みに紛れているルビイたちも、そして隣で話を聞いているカタリナも黙したままガウェインの言葉に耳を傾ける。


「だがルフィーリアには魔石師としての力が不足していた。しかしそれでも彼女の人柄に私は惚れ、彼女と結ばれようと考えていた。だがしかし、彼女は最悪の悪女だったのだ」


 会場がざわつく。


 ルビイも人混みに紛れながらも、遠目でガウェインの話にしっかりと耳を傾けている。


「ルフィーリアには義理の妹がいる。それがこのカタリナだ。カタリナは先程見せた通り、魔石師としての才能に優れていた。それに嫉妬していたルフィーリアは、日々カタリナを虐めつくしていたのだッ!」


 ルビイは婚約破棄された時と同じセリフを、今度は大勢の前で公言され、さすがに目眩がしそうだった。


 それはガウェインに婚約破棄された事がショックなのではなく、今は単純に憤りから来るものであった。


「更にルフィーリアはカタリナに魔石を作らせ、それを父や母に自慢し、自分の手柄にしていたそうだ。なんという見下げ果てた女よッ!」


 ルビイは憤りに震えながらも、今はまだ大人しくジッと耐え忍ぶ。


「カタリナはずっと我慢してきた。肩身の狭いフランシス家で! しかしルフィーリアは私の婚約者となった後も、執拗に陰でカタリナを虐めていたらしい。それを私はカタリナから相談され続け、婚約破棄を決めたのだッ!」


 ざわざわと、舞踏会会場のグランドホールはどよめきが増していく。


「……兄上、それは本当なのか?」


 ブロンが尋ねる。


「うむ。我が最愛の婚約者であるこのカタリナから、毎夜聞かされてきた事実だ」


「事実、か」


「ブロン、貴様はその事実に証拠でもあるのか、とでも言いたげだな?」


「いや、兄上にそんなつまらん事を言ったところで水掛け論になるだけだろう」


「よくわかっているじゃあないか。なんにせよこれが貴様が聞きたがっていた婚約破棄までの経緯だ」


 ガウェイン殿下が声を大にして、そう言った。


(さあ、ブロン。ここからなのだろう? 貴様が私を陥れるのは?)


 ガウェインがそう腹の中で思い、心構えをしていると、


「ならば兄上。私から更に聞きたい事が増えてしまった。よろしいか?」


「ああ、いいとも」


「聞いた話だが、兄上は最近隣国のラダリニアに赴いたらしいな?」


「な、何故それを……?」


(きたな)


 ガウェインは予想通り、と内心ほくそ笑む。


「それは何故だ?」


「そ、それはだな……」



(と、わざとらしく私のうしろめたさを出してやるぞ。さあ、ブロン、私を追い詰めてみるがいいッ)





ご一読いただきまして、本当にありがとうございますッ!


面白かった、続きが気になる、と少しでも思ってくださったならブックマークやこの下の⭐︎で評価を頂けるととても嬉しく励みになります。どうかどうか、よろしくお願い致します。

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