6 断罪返し
「貴様、この手を離せ!」とつまみあげられたオランド様は、わめきながら体をよじりました。
威張りながらじたばたするポメラニアン、おかわいらしいですこと。
と、つま先に何か違和感がありました。けなげにもヒロインチワワが私の靴のつま先に噛みついていました。そっと脚を前にゆすると、チワワはころりと転がりました。
ヒロインチワワを守ろうと周りを固めていた親衛隊の皆さんや、面白がって気を抜いていた傍観者の皆さんも正体を現していましたから、あたりはマルチーズやコリー、プードルその他犬、犬、犬、犬だらけでした。
ただ、魔法が解けないまま、人間の姿を保っている方々も多数いらっしゃいましたので、犬に戻ってしまった皆様はきまり悪そうにしていました。
かわいらしい犬たちに囲まれて、私、ときめいてしまいますわ。
ですが、いつまでもふやけているわけには参りません。
そこで、私は、暴れているオランドポメラニアンを両手でつかむと、顔の前に持ち上げて言いました。
「直系の王子である以上、オランド様の魔法が解ければセントバーナード犬になるはずですが、どうみてもセントバーナード犬ではありませんわね。
自らの出自を隠し王子と称して王家の簒奪をたくらんだ、真の罪人は、あなたです。」
私は衛兵に合図をすると、衛兵が犬用のキャリーバッグを持ってきましたので、私はオランド様をその中に入れました。
「あと、そちらのチワワ用のキャリーバッグも必要よ。
そのチワワは、王家に対するたくらみを知りながら、オランド様と一緒になって、簒奪の障害になっていた私を陥れて排除しようとした共犯者ですもの。」
「あ、あたし、あたしはっ、王妃にしてやるって言われたからっ。」
ヒロインチワワは涙目でぷるぷると震えながら言いました。
かわいらしいですが、私はさっさとヒロインチワワを抱き上げると、衛兵が持ってきた別のキャリーバッグに入れてしまいました。
次回、後日談。