4 禁断の武器使用
「いったいどうなるというのでしょうか。教えていただきたいものですわ。」
「なんだと。」
「やってもいないことに謝罪をすることはできません。いいかげんな言いがかりをつけるのはおやめただきたいですわね。」
「リイン・ドロス、貴様、罪を認めないというのか。」
「私は神に懸けて誓います。私は、その女に何ら接触していません。いじめたなどというのは言いがかりです。
これでも私の罪を問うというのなら、あなたがたも神に懸けて真実を明かすべきです。」
さすがにオランド様は神に誓いを立てたことの重要さを理解していたようで黙りました。嘘を真実だと言い張って神に誓いを立てれば、加護を得られなくなります。王族が神の加護を失えば、たちまち神の怒りに触れて雷が落ちると言い伝えられています。
しかし、ここで彼らが神に誓いを立てなければ、自分たちが根拠なく私に罪を押し付けようとしていたことを自白するようなものです。ミミは言いました。
「ならば、私も神に懸けて誓います。
私はリイン様に教科書を破って捨てられたり、池に落とされたりといじめられました。」
オランド様は驚いていたようでしたが、やがて意を決したように言いました。
「私も神かけて誓おう。真実に基づいて、リイン・ドロスの罪を糾弾するとな。」
会場の参列者はみな息をのみました。皆、私の無実を知っていましたから、雷が落ちるのではないかと身構えたのです。
しかし、少したっても何もおこりませんでした。オランド様はにやりと笑い、言いました。
「見よ、雷は落ちなかった。王族が神に誓約し、神がそれを認めた以上、私の述べていることが真実だ。」
参列者も私がいじめをしていたのではないか、と驚いている様子です。
一方、私は前世の『きらベル』から推測していたことが事実だったと確信しました。
「なるほど、しかし、私はその女が言ったいじめをしていません。私に罪があるとすれば、畏れ多くも王家の名を騙る者を今まで糾弾しなかったというその一点のみ。」
「なんだと?」
「オランド様、王家の名を騙るのは重罪です。よくおわかりですよね?」
すると、オランド様は青ざめながらも、怒鳴りました。
「貴様、敬称をつけないとは不敬だ。」ミミもミミより身分が上の私を、敬称をつけずに呼んでいましたけどね。とはいえ、話を本筋に戻すため、私は、そのことをとりあえず置いて言いました。
「オランド様、これは警告です。」
「うるさい、うるさい!衛兵、この不敬な女を牢に入れろ!」
「ご理解いただけなかったようで、残念です。」
私は、禁断の武器を仕込んだ指輪を地面にたたきつけて呪文を唱えました。
「尊き石よ、真実を明らかにせよ!」
指輪は地面に当たると、閃光を発し、何も見えなくなりました。
次回、犬だらけ回。