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リーヴァル調査会社  作者: ヤシの実
相談者2人目 緘黙少女と消えていく姉
13/17

1話

 テーブルの上に -ぐつぐつ- と煮立っている石狩鍋が用意してある。

 今日は雨が酷く、深夜には止むとネットに載っていた天気予報を彼女は気にかける。

 黒髪の素朴なエルフの彼女は姉の帰りを少し心配する。姉からのLINE通知も特に無いが”大丈夫だろう”と心の中で思う。

 すると廊下から -ガチャ- と玄関ドアの音が聞こえた。彼女は玄関に向かいビショ濡れの姉を見て、ほっと安心した。


「ホント最悪。傘、意味ないし」

「今タオル持ってくるね」


 彼女は急いでタオルを姉に渡し、姉は嫌気をさしながらも濡れた髪を軽く拭き取る。


「無事で良かった。LINE来ないから何処かで雨宿りして、遅くまで帰って来ないかと思ったよ」

「深夜まで待ってられないし。それに終電逃したらココまで歩くとか、マジ勘弁―」


 暗めの赤い長髪をボサボサにして、姉は早めに風呂に入る。



 風呂上りでサッパリした姉は颯爽と冷蔵庫を開けてビール缶を1つ取り出し、食卓に運ぶ。


「ちょっと待って!」


 彼女はキツく問い詰める感じで姉の行動を止める。


「今お酒はやめてる筈でしょ?」

「大丈夫。最近調子良いから」

「薬飲んでるのに、また前みたいにオカシクなりたいの?」

「黙ってて悪かったけど、先週あたりから抗うつ剤を飲まなくても心が安定してきたんだよね」


 以前、姉はアルコール摂取後に精神薬を飲み、体調に異常をきたした事がある。そのことを思い出した彼女は咄嗟に心配になり、いつもより声を張り上げてしまった。もうあんな姿は見るに耐えないと。


「ダメ。まだ飲むは早すぎると思う」


 真剣な眼差しで彼女は姉に訴えかける。


「わかった。まだお酒は飲まない。心配させてゴメン」


 姉は自身の体調と精神面を、そして心配してくれている妹の気持ちを考えて飲酒は当分しない決意をした。



 夕飯の石狩鍋を堪能し、リビングでまったりする姉妹。

 猫の世話の時間になり姉は猫部屋に移動する。

 いつものように遊び相手になろうと、声をかけてオモチャを振り回すも反応は希薄である。よく見るとグッタリしている。異変に気付く姉は猫を持ち上げてリビングに出る。


「どうしたの?」


 姉は彼女に問いかけられるも大して反応なく、黙って大きいゴミ箱の前に立つ。

 次の瞬間、姉は猫をゴミ箱に放り投げたのだ。


「ちょっ!何やってるの?!」


 彼女は姉の突然飲酒しようとする行動から、立て続けに異常行動が見られ驚きを隠せない。

 その女は彼女の問いに淡々と答える。


「何って?もう要らないから捨てたんだけど。何かヘン?」


 その女は感情の無い人形のような空の言葉を吐き出した。

 ……女の存在が少しずつ薄くなっていく――





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