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聖女様のおかしぃ

作者: valota666

 貧乏貴族の男は少し悩んでいた。この町の礼拝堂に訪れた聖女様の下されたお菓子である。ぶっちゃけていうと不味いのである。へそくりの金貨を寄付金としてこれは色々といいたい事がある。原価はいくらだとか本当に世のため人のためになるのかとか………それを言えないのは仕方ないことであります。

 これをお読みになっている皆様だって言えない事がありましょう。ここでぽいずんなんていってはいけません。いろいろ問題ありすぎます。

 貧乏貴族はこれを家に持ち帰っていいものかどうか悩んでいる。金貨を寄付してこれとはというのは色々不敬な事であるがおいといて、これを食べ物として認識して家のものが食べたら大変なことになってしまうからである。いっそのこと劇物指定されないのかと教団の上層部に言いたい気があるのだが下っ端貴族にはそれは無理なのであります。


 道の子(孤児の別称)は腹減りだった。孤児院の管理者達がいなくなって弟妹分達が腹をすかせている。兄貴分としては食わせてやりたいと思ったりもしているが結果が伴わないのです。

 心ある人に慈悲を乞い、身を粉にして働き、ゴミ箱をあさりながらも食べ物を求めるのです。彼のことを馬鹿にしてはいけません。行いはつたなく間違っていても志は尊いものであるのですから………

 心ある町の人たちはこの道の子にちょっとした仕事を言いつけて自分らも貧しいながらも手助けをするのです。町の人たちが満足感のためにやっているといってはいけません。やらない善よりやる偽善、偽善とは人の為にやる善意なのですから………えっと、これは日本語以外でどう訳されるのでしょうか?そういう突っ込みは他のなろう作家さんたちが嫌がりそうですね。

 そんな道の子は貧乏貴族に食を乞う、最初は恥ずかしく悔しくもあったけどそれでも帰りを待つ弟妹のために…………


貧乏貴族は腕の中にある菓子の包みを見て目の前にいる道のこの姿を見る。施しは富者の義務であり正しい行いである。貧乏貴族が富者であるとか抱えている菓子が本当にお菓子なのかおかしぃものであるのだとかはさておいて、食を乞う子供に聖女様のお菓子(毒劇物)を渡すのが果たして正しい行為なのか悩むのである。


 心の中の善意が『この菓子を渡すのです。飢えている子供に食べ物を与えるのはただしいことなのです。そして貴方はこの菓子が好みではない飢えている子供が食べ物を得られて、貴方はこの菓子を厄介払いできるうぃんうぃんではないですか!』

 それに対して心の中の悪意が『ばかいっているんじゃねえぇ!飢えた子供に聖女様の菓子(こんなもの)食わせるなんてひどい事を!これ食ったら体力のない子供なんていちころだぞ!さすがに人殺しになりたくないだろうが!』

 貧乏貴族の中の善意と悪意はどうなっているのでしょうか?この心中を聖女様に知られてしまったら貧乏貴族から貴族の文字が取り除かれてしまいそうです。もっとも、この説法と礼拝にきていたものの大半はくっそまずい菓子をよこしやがってと思っているからあれなのですが………そして貧乏貴族が出した答えは………


「飯でも食ってけ。」

 貧乏貴族は道の子を家に招き入れるのである。



 道の子は感激している。ゴミでないちゃんとしたごはんが目の前にあることに………

 思わずがっついてしまったことは仕方がないことである。若いのはちゃんと飯を食って力をつけておくのが正しいことである。

 食べた後で後悔する道の子、弟妹分たちに食べさせてやりたかったとか自分だけ食べてとか…………少なくとも食べてから食事制限(ダイエット)がとかという糞アマに比べれば真っ当な事である。



 貧乏貴族の妻女たちは道の子の涙を笑うことはしなかった。道の子の行いは幼く愚かしいが想いは間違っていないのだから。道の子は正しく間違える。想いが正しければ行いは正せばよい、行い自体も、非効率であるけれど悪くはない。これだから貧乏貴族の家から貧乏の文字が消えないわけである。それが良いことなのかどうなのかは知らない。


 貧乏貴族は道の子を見て

「明日にもお前の弟妹分の様子を見に行こう。」

 と軽く言う。


 というか、この貧乏貴族一家見ず知らずの道の子を受け入れて危機管理とかどうなのかという突込みは置いておくとしよう。寧ろお人好し過ぎて心配である。

 貧乏貴族の心中は


 善意『このガキなんてほっておきなよ、世界によくある不幸だろ。』

 悪意『バカなこと言うなよ!ここでガキに恩を売っておいて仕事を紹介して小銭をせしめたらいいじゃないか?』

 善意『だったらガキを売りとばしたらどうだ?』

 悪意『バカ野郎が!ノウハウもないのに素人商売でそんなことしたら一発でアウトだろうが!』

 善意『なるほど、となるとガキの弟妹分の様子を見つつ善意の人という印象を周りに見せながら………』

 悪意『ついでに孤児院を見捨てたやつを煽ってやろうぜ。(人物名削除)とか(団体名削除)とか』


 翌朝、道の子を連れた貧乏貴族が孤児院(?)を見てみれば……

「治安部隊、治療部隊!!」

 と叫ぶのであった。


 孤児院(?)は孤児っ子たちで死屍累々………(死んでません)手には聖女様のお菓子(おかしぃ)、道の子も弟妹分たちのそばによってあわてるのであった。


善意『えいせいへーいえいせいへーい!』

悪意『えいせいへーいえいせいへーい!』


駆けつけてきた街の衛兵さんたちやら子供好き(ショタコン)薬師さん(マットドクター)やら苦労性の祭司様が孤児っ子たちを介抱していきます。

「あのくそあま また自分で作りやがったな!」

 呟いた祭司様の言葉は誰も聞いておりません。聞かなかったことにしてあげてください。信仰と慈善に身をささげるものが汚い言葉を吐くのはよろしくないのでしょうが神様は寛大です(たぶん)。聖女様のお菓子(おかしぃ)をささげられても文句言ってこないのですから。そこっ!神様が文句言ってこないのは神の不在証明だとか言わない。そして、アワアワしている道の子を見ておいしそぉと涎を垂らすな薬師さん。


 そんな光景を見て貧乏貴族は呼ぶ人選間違えたかなと思ったりするが………遅かりし由良の助。


 祭司様はそのままの勢いで昨日の参列者を呼び寄せます……


話を聞いてみると聖女様のお菓子(おかしぃ)をもったいなくて食べていないのと後で食べようとしていた、まずさに気がついていないのが大半………これに祭司様はほっと胸をなでおろしていた。不味いのを知っていて食べないようにしていたのが残りの大半………

 人道に反すると思ったのは道の子(ストリートチルドレン)お菓子(おかしぃ)を与えた面々と聖女様のお菓子と称して美味に反省して道をまともに戻せと牢屋にいる面々にお菓子(おかしぃ)を与えた牢番。しかも最低なのは不味いと知っている人や知らない人に「牢にいるやつらに聖女様のお菓子を食べて立ち直ってもらいたいのです。」と話を持ちかけてお菓子(おかしぃ)を集めて牢の経費を………ちょろまかそうと………

 それはマテと貧乏貴族と祭司様は思いましたが牢の中に入っているのは酔っ払って粗相をした大工の親方(神様に寝取られていないのを指す)と親の権力を自分のものと勘違いした貴族様の末っ子だったので一食位はと放置することにしました。大工の親方はともかく貴族様の末っ子はうまいものを出せとかいいそうですし、ここで滅多に手に入ることができない聖女様のお菓子(おかしぃ)を手にして痛い目に合えばいいと………

 ちなみに孤児っ子たちにお菓子(おかしぃ)を与えたのは近くの富農のご隠居さん(富農だけど不能ではない)聖女様のお菓子がおかしぃであることを知らず孤児っ子たちが悶え苦しんでいるのを知って慌てて駆けつけて必要なものはとか騒いでいたのは人となりを知るよき話である。


牢番が牢に入って聖女様は祭司様に説教されている姿を背景に富農のご隠居さん(お妾さんが5人ほどいる)が自らのもたらした惨状を知っていろいろ子供たちの手当とかしている。はっきり言って兵隊さんいらないレベルである。

「衛生兵!下剤の準備と体力回復の霊薬………は予算とか諸々でだめか!ならば檸檬の蜂蜜漬けと塩!あとは清潔な水!西の湧水地で汲んで来い!付き人、うちに行って粥をこさえて来い!肉もありったけ!」

「ご隠居!飢えて胃袋が縮んだガキにありったけの肉はダメでしょう!骨の出し汁と脂身を除いた肉を用意しないと。そして麦も野菜もちゃんと刻んだ粥を用意しないとダメでしょうが!!できれば重湯!薄めた薬湯で炊いたものを!」

「なんてことを!これは劇物よ!こんなの人の口に入れてはダメじゃない!」

「解毒魔法が効かないなんて……」

「まずは魔法を受け入れるだけの体力を!」


 道の子は泣いていた。兄弟分が苦しんでいる様に……そして何もできない自分に……助けてくれる人のいることに……

 道の子達の手当てが済むと一人、また一人と去っていきます。道の子達はとりあえず教団の礼拝堂に保護されることになりました。ある意味口封じです。証拠隠滅です。


 貧乏貴族の心中は

悪意『どう考えても証拠隠滅とかになってない気がするが……』

善意『このまま放置して道の子達に何かあったら、見殺しにしたとか言われるだろ。不味い菓子(おかしぃ)でびっくりしたくらいなら笑い話になるけど、聖女様が毒殺なんてことになったら寄付が減るじゃないか!』

悪意『そもそも、聖女様の菓子(おかしぃ)は何で出来ているんだ?』

善意『それを問わないのが優しさ(保身)というものだよ。』




 しばしの時が流れました。道の子達は教団の下働きをすることで食事と寝床を得ています。貧乏貴族一家も富農のご隠居(先月子供を授かりました)も時折様子を見て、健やかなることに自分の事のように喜んでいます。

 聖女様は絶対に厨房に立つなと祭司さんからきつくお叱りを受けました。礼拝堂でも修行所でも聖女様がいる所では厨房の入り口には見張りがついています。それでも見張りの目を盗んでおいしいものを作るのだと騒ぎを起こしているのはどうなんでしょう。



 そしてある日、礼拝堂の説法会の時…………

「…………聖女様のお菓子はお世辞でもおいしいとは言えません。一見聖女様の菓子は悪しき物であるように見えますが神々に祈り捧げる聖女様の菓子は善き物であるのです。その菓子が齎した縁で道の子達は日の目を見たがその証拠であります。さぁ、祈りましょう。」


 説法を聞いた貧乏貴族の心中は

善意『綺麗にまとめましたね。【災い転じて福となす】とでも』

悪意『どっちかというと【変毒為薬】じゃね?上手くごまかしたのは認めるが。でも、あのお菓子(おかしぃ)に金貨払うのはしたくないな。』


「祈りましょう。本日配られる聖女様の菓子が美味であることに…………」


 祈りを促す声に聴衆は突っ込みの叫びをあげたのは仕方の無い事である。そして、この説法師は………聴衆達に詰め寄られて聖女様のお菓子(おかしぃ)を食べる羽目となり悶絶する羽目になる。

 そしてこの説法の内容を聖女様に知られた説法師は…………(お察しください)


 貧乏貴族はとりあえず寄付はするけどお菓子(おかしぃ)は受け取らないようにしないと考えるのであった。

 


つい、かっとなって綴ってしまった。

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[一言] 生きておられたかばろちゃんさまっ!?わーい メシマズ聖女さま、歴代だいたいメシマズの悲劇 奇跡のメシウマ聖女の苦境に涙
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