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新作試食会

 さて、今のうちにデザートを作っておこうかな。

 アイテムボックスから材料を取り出しテーブルに広げる。

【材料】

・クリームチーズ

・生クリーム

・ステビア粉末

・リモーネ

・バター

・ビスケット

・マシュマロウ

・ストロベリートマト

・ミントの葉

 

 この材料を見て私が何を作るのか分かった人もいるだろう。そう、レアチーズケーキだ。

 新しく栽培したハーブの中に、マシュマロウがある。元々マシュマロウはその名の通り、マシュマロの原材料として使われてきた。マシュマロウは根、茎、葉の全てにおいて粘質成分が含まれている。特に根はより強い粘質を含み、長く煮出せばゼラチンの代用として使える。


 いつものハーブ調合の様にマシュマロウの根を刻んで乳鉢でゴリゴリしてみれば、白っぽい粉が出来上がった。試しに少量を湯で溶いてリモーネジュースに溶かして冷やしてみれば、思った通り、リモーネゼリーが出来上がった。

 暇を持て余したロジーがちゃっかり隣でつまみ食いをしている。ロジーは今精霊サイズなので、リモーネゼリーが大きく見える。

「ゼラチン出来ちゃった。ゼリーもババロアもムースも作り放題ね。それにこの透明度。ゼラチンよりアガーに近いかも……」

 アガーとは海藻が原料の植物性のゼラチンの事。ゼラチンよりも透明度が高く見た目が綺麗に仕上がる。


「さて、それじゃあレアチーズ作るわよ〜」

 まずは土台から。ビスケットとバターをボウルに入れて、細かくなるまで砕きながら混ぜる。


 次に、砕いたビスケットを円柱の型に敷き詰め魔法で冷やす。

「ラクチン、ラクチン」


 ボウルにクリームチーズを入れ、木べらでよく練り、なめらかになったらステビア粉を加え、泡立て器で混ぜる。

 ちなみにこのステビア粉も乳鉢でステビアをゴリゴリしたら砂糖より甘い粉が出来た。お菓子を作るならステビアシロップより、ステビア粉の方が使いやすい。用途に合わせて使い分ければ、料理の幅も広がるだろう。


 生クリーム、リモーネ汁の順に加え、そのつどよく混ぜ、ふやかしたマシュマロウ粉をクリームチーズに加え混ぜる。


 ビスケット台にクリームチーズ生地を流し、魔法で冷やせば、ひんやりプルンなレアチーズケーキの完成だ!


 仕上げに、ストロベリートマトのジャムを添え、八分立てに泡立てたクリームを絞り出し、ミントの葉を飾れば見た目もオシャレだ。

 

「私、スイーツ専門店出せるかも……」

 思った以上にうまくいき、自画自賛で自惚れる。


 さてさて、どんどん作るわよ。作ったそばからアイテムボックスへ入れれば、温かいまま、冷たいまま保存できるので便利だ。


 しばらくすると、アニーさんがコカトリスの解体を終え、それぞれの部位ごとに切り出された食肉が並べられた。全長四メートルにもなるコカトリスからはあり得ないほどのお肉が手に入った。その後、アニーさんに手伝ってもらい、部位ごとに分けたお肉を防腐効果のあるコモンタイムと一緒に布に包んでもらった。


 うん、お肉だわ。あの見た目からは想像できないけど、普通に鶏肉っぽい。もも肉、胸肉、手羽元、手羽先、ささみ、せせり、砂肝、軟骨、レバー辺りは普通の鶏肉と一緒。あとは、あの尻尾の部位は、脂が乗っていてぼんじりっぽい。普通の鶏肉の場合、一羽から取れるぼんじりの量はほんの僅かだが、コカトリスの場合だと、蛇の様な長い尻尾部分が全てぼんじりなので贅沢に使えそうだ。


 さぁ、このコカトリスで、今日は定番中の定番、唐揚げを作ろうと思います。

 ほんとはね、手羽先でチューリップ唐揚げを作りたかったけど、体長三メートルのコカトリスの手羽は大きいのなんのって……。手羽先はかぶりついて食べるのが醍醐味だが、今回は諦めるしか無さそうだ。

 なので、ここはやはりもも肉を使った唐揚げを作ろうと思います。と、そこで問題発生。

「醤油ないじゃん。にんにくも、生姜もないじゃん……」

 クッ……無念‼︎ にんにくと生姜は栽培すれば問題ないが、醤油……。いつか必ず見つけるわよ‼︎


 仕方がないので、唐揚げは断念してタンドリーチキンを作ることにした。カレースパイスはハーブ畑にあるので、これならば作ることが出来るだろう。

 

【本日のスペシャルメニュー】

・彩り野菜とアイスプラントのバーニャカウダ

・ロマネスコとベーコンのクリームグラタン

・トマトとゼブラナスの生パスタ

・白ナスのバターソテー

・レタスで包むそうめんかぼちゃの生春巻風

・バターナッツポタージュ

・ビーツで作るマーブルブレッド

・タンドリーコカトリス

・レアチーズケーキ〜ストロベリートマトと共に〜


「以上が本日のスペシャルメニューになります」

 日が落ち辺りが暗くなってきたところでディナーを頂く。


「これはまた‥‥随分と張り切ったな」

 クラウスさんは並べられた料理に舌を巻く。

「今日のメインはガウルさんが調達してくれたコカトリスをカレー風味に仕上げたタンドリーコカトリスです。それからガラス温室で育った珍しい種類のお野菜をふんだんに使った料理なので、楽しんで食べてくださいね」


 そして、今日の乾杯酒を配った。

「今日の乾杯はいつものワインではなく、これまた珍しい種類お野菜、ルバーブから作ったシロップで焼酎を割ったものです。酸味が強いけど、その分甘さも加えてあるので味わってみてくださいね」

 

 今日の乾杯はガウルさんに挨拶をしてもらい、みんなでグラスを合わせた。


「さあ、アニーさん。アイスプラント食べてみましょ。この、バーニャカウダソースを付けて食べてみて。」

 アイスプラントにソースを付けて食べてみれば、アイスプラントの程よい塩味と、バーニャカウダソースのまろやかさが後を引く。にんにくが無かったので少しパンチが控えめなソースになってしまったが、これはこれで悪くない。


 「おいしいよ」とアニーさんに勧めてみれば、恐る恐る口の中へ運んだ。その様子を見ていたら、一口噛んだ瞬間に「⁉︎」と目を見開いた。そうそう、このシャキシャキ、シャリシャリとした食感がたまんないのよね〜。

「お、おいしいかも……本当に塩味が付いているんだね」

 アニーさんはソースを付けずにアイスプラントを食べて、その塩気に驚いていた。

 ちなみに悪魔の実の様なロマネスコのグラタンも絶賛してくれた。


 タンドリーコカトリスはと言うと、高級肉とあって深い肉の味がカレースパイスに負けておらず、鶏肉よりは七面鳥に近い深みのある味だった。これ、庶民の味、唐揚げには向いてないかもしれない……。

 次回作はこの濃厚な深い味に合う様な料理を考えなきゃね。


 ちなみにスノーは先ほどからずっと、ルバーブ酎ハイを楽しんでいる。ワイングラスに入った酎ハイってのもどうかと思うが、本人は喜んでいる様だし、とても酎ハイを飲んでいる様には見えないのでよしとしよう。アイスプラントをつまみつつ、満足そうに飲んでる姿はとても絵になる。


 おのおの一頻り料理を堪能してデザートのお時間です。

「待ってました!」

 デザートの準備をしていると、スイーツ大好きロジーが目をキラッキラさせて「早く、早く〜」と急かす。


「それじゃあ皆さん、本日最後のお料理です。新作ハーブを使用したチーズケーキになります。今まで経験したことのない様なプルンとした食感を楽しんで下さいね」

 小皿に取り分け、ストロベリートマトのジャムを添えてサーブする。


 さぁ、驚いて!

「「「「「〜‼︎‼︎」」」」」

 でしょうでしょう! みんな一口食べた瞬間、驚きの表情を見せた。クラウスさんは目を閉じてその食感を堪能し、ディランさんは「これは是非、ライアンにも……」と独り言を呟き、アニーさんは頬に手を当てて「ん〜〜〜‼︎」と妙に色っぽく、フレドリックさんは目を見開き、ガウルさんはその食感が気になったのか、スプーンでお皿のチーズケーキをつついていた。

 ロジーは……黙々と、ただひたすらに食べ続けている。しかも、精霊サイズで。おいしい物を食べた時、人は言葉を失う。ロジーもまた然り。

 スノーはストロベリートマトのジャムを酒の肴にしている。よく、「酒好きは甘いものが苦手」とか言うけど、とんでもない酒好きは、一周回ってチョコレートなど甘いものでも酒の肴になるらしいので、スノーも同じ部類なんだろうね。


「これも元いた世界の食べ物?」

 「そうよ」と答えれば、また次の新作も期待している。と喜ばれた。


 さてさて、料理にスイーツ作りもいいけど、そろそろ本格的に次のメディカルハーブの新作を考えないとね。


 今日もおいしいご飯とお酒に酔いしれ、夜は更けていくのだった。


 


 





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