表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/153

神の箱庭

ブックマーク、評価、ありがとうございます。

毎度のことながら誤字報告下さる方々には頭が上がりません。皆さんありがとうございます!


 取説を片手に持ち、表紙の魔石に手をかざす。


 表紙には大きな金色の木が描かれており、枝の先々には色とりどりの魔石が実のように埋め込まれていた。おそらく、全属性の魔石が取り付けられている。

 赤は火、青は水、茶は土、緑は風、黄は雷、黒は闇、白は光。そのほかにも、これ何属性だろう? って思える桃色の魔石や、橙色の魔石、紫の魔石、その他諸々が埋め込まれている。


 さぁ、正確なイメージは思い浮かべた。後は魔力を流すのみ!

「レッツ、リノベーション‼︎」

 膨大な量の魔力が取説に流れ込む。取説の魔石は空に向かって色とりどりの光を真っ直ぐ放ち、辺りを輝かせる。放たれた光は今度は凝縮するかのように一気に本に戻り、ぶわりと家を包み込んだ。

 目を閉じ、正確なイメージを送り続ける。私の感覚でだが、約五分程で魔力の放出が緩やかになり、フッと消えた。

 目を開ければそこには、以前のログハウスとはまったく別の洋館が建っていた。

 

 「リリー! な、何をしたんだ⁉︎」

 ふっふっふっ……大成功よ‼︎ 外壁は白を基調にし、窓枠や屋根は淡いグリーンで統一。そして、もちろんテラス付き。

「出来たーー‼︎」

「俺、今更ながらリリーが怖いよ」

 顔をピクピク痙攣させ固まるフレドリックさん。


「さぁ、みんな。男女のプライベート空間を完全に分けたシェアハウスの完成よ! 中を案内するからまずは見てから考えてみて」 


 南向きに作られた洋館の扉を開くと、そこはエントランスになっており、左右には壁に沿うようにサーキュラー階段が設置されている。

 階段を通り過ぎれば、左にはダイニングキッチンへ繋がる扉、右にはリビングに繋がる扉がある。リビングからは外のテラスに出られるようになっている。

 正面は私の植物研究のためのラボ兼工房を作った。ここではハーブによる魔素浄化の研究や、新しいメディカルハーブの開発、そして、販売用の量産などを行う予定だ。

 左のサーキュラー階段を登れば、男性陣のプライベート空間、右のサーキュラー階段を登れば女性陣のプライベート空間だ。

 ちなみに、男性陣と女性陣のプライベート空間の間にはバルコニーが設けてあり、どちらのプライベート空間からもバルコニーに出ることが出来る。

 バス、トイレ、ランドリースペースは男女別々に一つずつ。

 バスルームは特にこだわった。開放感を重視し、窓は大きくした。この窓、マジックミラーになっており、外からは窓ではなく壁に見えるようになっている。正にマジック! 湯船は大きく、三人一気に入っても余裕があるくらい。

 男女それぞれ、見られたくないであろう下着なんかを干せるように、ランドリースペースも作ってみた。

 個人の部屋は、一人八畳ほどの大きさに、ベッドと机を一つずつ。もちろん収納も大きく取った。共有スペースを広く便利に作ったので、個人の部屋はほぼ寝るためだけの部屋となった。


「完璧……」

 乏しい想像力をフル回転させ、ここまで完璧な間取りを実現させたのは、きっとこの本のサポートがあったからだろう。

 

 ありがとう。取説さん。


 一通りみんなを案内し、真新しいリビングにみんなを座らせ、さあどうだ‼︎ と、ドヤ顔をしてみれば、みんな口を揃え、「参りました」と乾いた笑いをこぼした。


 数日後、ブローディアから帰ったディランさんからは、「なぜ俺のいない所でこんな大魔法使ったんだ! 俺も見たかったのに!」と怒られてしまった。

 

 その後、戻ったディランさんから色々と今後のプランの相談があった。


 まず一つは、この家のすぐ裏の森の調査について。クラウスさん達特務部隊も、ただ私のお守りの為に家にいる訳にはいかない。元々、あの辺りの魔素の調査をしていたので、引き続き調査の続行を行うことにしたのだ。私も、その調査に付いて行きたかったが、流石に騎士の体力には付いて行けないだろうし、足手纏いになるのは確実なので、大人しく家で研究や商品開発をする事となった。


 もう一つは、私の魔法と魔力について研究させて欲しいとのディランさんからの要望だった。基礎魔法は勿論の事、ハーブを使った魔法も対象だ。クラウスさん達が調査に行っている間は、ディランさんと二人で魔法の研究をする事となる。


 そうそう、同居人が増えたことにより、食材の確保も増える事となり、庭に新たな畑を作ることにした。ただ、現状の庭の広さでは畑を作ることができない。だが、私にはもう一つの切り札がある。【神の箱庭の拡張】だ。


 家をリノベーションした数日後、私は取説を片手に庭に出た。勿論、前回リノベーションを見逃したディランさんが隣で張り付いている。

 まずは土地の拡張。取説に魔力を流せば、庭の面積がグッと広くなった。

 次に、ハーブ畑とお野菜畑の拡張。私が植えるものは季節感関係なく、全ての植物が芽吹く。だが、これから冬がやってくれば流石に植物は育たないだろう。この地域は豪雪地帯ではないが、雪が積もるらしいのだ。そうなれば、植物を育てることは出来ない。

 なので、思い切ってガラス温室を作ることにした。ビニールハウスも思い浮かべたが、この世界にはビニールの存在がない。この世界には無用の産物。作るべきではないだろう。

 取説に魔力を注ぎ、ガラス温室を組み立てる。組み立つ様子はまるでパズルの様。


 デデン! と立派な温室が出来ました。

 

 最近気付いたことだが、神様に頂いたアイテムボックスにはお野菜の種も入っていた。てっきり花の種だけだと思っていたが、色んなお野菜の種も取り出すことができた。まぁ、お野菜だって花が咲いて実がなるものね。

 ガラス温室は、お野菜専用とハーブ専用に分け使うことにしよう。

 これならば、寒い冬でも収穫可能になるだろう。


 雪が降るまでは冬の蓄えを確保するべく、毎日お野菜とハーブの収穫に追われるだろう。


 無事に冬を越し暖かな春を迎えれば、この地ともしばらくお別れだ。それまでは私に出来ることをしっかりとしよう。


 ディランさんからは、この地を離れ次の地へ旅立つ前に、一度王都に向かって欲しいと懇願された。我々の仕える王太子殿下との謁見も考えて欲しいと。勿論、私の使命を尊重し、長く王都に滞在させる様な事はしないと約束もしてくれたので、快く承諾した。

 きっとそこでは、西の隣国【サラセニア】についての情報提供及び、協力依頼もされるであろうと前もって教えてくれた。

 私もスノーの事があるから他人事では無い。協力は惜しまないつもりだ。


 クラウスさんから教えてもらったが、クラウスさんとディランさんは王太子殿下、ライアン様と小さな頃からの幼なじみで、同じ学園(カレッジ)の学友なんだそう。

 王子様と同級生って想像がつかないわ。同じ学園(カレッジ)に通っていたって事は、クラウスさんもディランさんも相当爵位の高い貴族なんでしょうね。


 この国の貴族についてはまだよく分からないが、王都へ行けば王城へ行くことになるだろう。貴族どころか王族に会うんだもんね。失礼のないようにクラウスさんから王族、貴族に対する振る舞いを教えてもらわなければ……。

 

 今から胃が痛い思いだわ。


 さあ、しばらくはスローライフよ。旅立ちの日まで力を温存しましょう。


 私の第二の人生はまだまだこれから! 楽しむわよー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ