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レッツ、リノベーション‼︎

『あーあ! あーーーあ‼︎ ちょっと目を離すとこれだもんな! 何だよ抱き合っちゃって! 僕のリリーだったのに! 僕の方がリリーをずっと大事にしてたのに‼︎』


 ローズガーデンを出ると、半泣きのロジーがスノーに首根っこを掴まれていた。

『お前、リリーの幸せの為に身を引くんじゃなかったのか……』

隣ではスノーがロジーにそう言って呆れた顔を向けていた。

『頭では分かってるけど、悔しいんだよ! 僕の……僕のリリーだったのに〜』

そう言ってとうとう本気で泣き出し始めた。


「クラウスさん。ごめんなさい、ちょっと待ってて」

そう言ってロジーの元へ駆け寄り、ギューーーッと抱きしめた。

「ロジー、私ロジーの事大好きよ。それはずーっと変わらないの。だって私達家族じゃない。知ってる?家族の愛は永遠なのよ」

『分かってる。分かってるけど、モヤモヤするんだもん』

「ロジーの焼きもち焼きはいつまでも変わらないわね」

 苦笑いのまま頭を撫で、慰める。

「ほら、泣き止んで。別にロジーの元を離れるわけじゃないのよ? ずっと一緒にいるんだからそんなに泣かないの」

 グスッ。

 目を真っ赤にしたロジーは私に抱きつき離れようとしない。

 すると、それを見ていたクラウスさんが近づいてきて、私たちの前に片膝を突いた。


「花の精霊に神獣よ、貴方方が大切に守ってきた彼女をどうか私にも守らせて頂きたい。私は貴方方のリリーへの愛と同等に、心から彼女を愛しています。どうか許しては頂けないだろうか」

 わがままロジーに真摯に向き合ってくれるクラウスさんはほんと大人ね。

『人間よ。すまないな、わがままな精霊で。こいつも頭では分かってるがまだ若い精霊ゆえ、感情が抑えられないのだ。だがな、こいつの気持ちは私にも十分分かる。だからな、もしリリーを泣かせでもすればこの私がお前を跡形もなく消し去ってやろう。それだけは忘れるな』

 スノー! 怖いこと言わないで!

『僕もリリーを完全にお前にやるわけじゃないからな! 今まで通りリリーとずっと一緒にいるし、今まで通りベッドも一緒だからな! 泣かせたら……絶対許さないからな!』

 ロジー! 余計な事言い過ぎ!


 わがままな弟と過保護な兄はそれだけ言うと姿を消した。


「クラウスさん……本当にごめんなさい。あの二人は私の兄と弟だと思ってくれていいので……」

 言いたい放題言って消えた二人のせいでとてもいたたまれない。

「ふふっ。ははははは。リリーは本当に彼らに愛されているんだな。私は彼らに少しは認められたかな?」

「クラウスさん、逞しすぎ。怒ってない?」

「怒るわけないよ。彼らから大事な大事なお姫様を奪ったんだ。彼らのあの態度は当たり前だよ」

 大人の対応ありがとうございます。


 家に戻ればアニーさんがお帰りと言ってくれる。

「さて、二人も戻った事だし、これからの事を話し合うよ」

 そう言ってディランさんは私達にソファに座る事を勧めた。

「まず、リリーには魔素の浄化について教えてもらいたい。具体的にどうやって魔素を浄化してるんだい?」

 隣ではクラウスさんが手を握ってくれている。

「具体的にと言っても、私的にはほとんど何もしてないようなものなんですけど、神様が言うにはこの世界で息をするだけでも少しずつ魔素を浄化できるそうなんです。それと、この世界にやってきて発見したのが花による浄化作用です。特にこのヒソップは魔素をグングン吸収し浄化する事が分かりました。実際、森の近くにヒソップを大量に植えたら浄化のスピードが上がり、森の深いところまで行っても大型の魔獣は出ないようになりました」

 ヒソップの花をアイテムボックスから取り出し、机の上に置いた。


 ディランさんは私の言葉を全てメモに取っている。

「そのヒソップとは、元々特別な力があるのかい?」

「いえ、私の元いた世界では魔法のような特別な力はありません。ちなみにこのヒソップもハーブの一種で、元の世界の植物です」

「それを発見したんだね。そしたら、リリーはそのヒソップを世界を巡り植えていく……って事でいいのかな?」

「まぁ、大体はそんな感じですけど、一年くらいはその土地に滞在して調査もしたいなと」

「例えばだけど、リリーからそのヒソップの苗を分けてもらい、王国の騎士達で各地に分布させるってのはどうかな?」

「ん〜、残念ですけど、私が持つハーブの苗は、私が土魔法で耕した土地でのみ成長します。これも既に実験済みで、バースの村で種を蒔いたり、苗を植えたりしてみたんですが、種は芽が出ず、苗は枯れました」


 ガシガシと頭を掻き、ペンを放るディランさん。

「そっか〜、やっぱりリリーが各地を回るしか方法はないか。ちなみにリリーはこの土地にあとどのくらいいる予定?」

「最低でも冬を越して次の春を迎えるまではここに留まろうかと」

 冬の寒い時期に旅に出るほど私も馬鹿ではない。


 しばらく頭を悩ませていたディランさんだったが、ソファからヒョイっと立ち上がる。

「よし、分かった。取り敢えず俺たちもこの地に残ろう。どの道、王都に帰るにも一ヶ月はかかるし、ここまで戻るのも一ヶ月かかる事を考えれば、この地に留まった方がいいな。じゃ、俺はこの事をライアン殿下に伝えなきゃいけないからブローディアに行ってくるよ。伯爵の騎士に密書を運んでもらうように頼んでくる。クラウス、後はよろしく」


 ディランさんは誰にも口を挟ませず、言いたい事を言うと一人ブローディアへ向かって馬を走らせた。


「……ディランさんって、いつもああなんですか?」

 あまりの行動力に感心を通り越して呆れてしまう。

「そうだな。日々王太子殿下にこき使われてああなった。って言った方がいいかな」

 少しばかりディランさんに同情してしまった。


「それにしても、ディランさんあんな事言って勝手に決めちゃったけど、本当にこの地に残るんですか?皆さんはそれでいいんですか?」

「私達は王太子殿下より、リリーを最優先にと命じられている。リリーがここに残るのなら私達もここに残るよ」

「すみません。私に合わせてもらってるみたいで」

「俺はリリーの美味しいご飯が食べれるなら喜んで残るよ!」

 フレドリックさんはそう言って笑わせてくれる。


「そう言えば皆さんこれからどうしましょう。アニーさんだけなら大丈夫ですけど、みんなでこの家に住むには狭すぎるし、バースの村に滞在しますか?」

 流石に男性と一つ屋根の下はマズいだろう。

「そうだな。護衛としてアニーを残すとして、我々は村の宿に滞在するか」

 クラウスさんがそう言うと、スノーが突然現れた。


『リリー、ほら』

 そう言って渡してきたのは、最近全く見なくなった【お家の取扱説明書】だった。この世界に来たばかりの頃は、魔石の使い方も分からず何度もお世話になった本だ。

「これがどうしたの?」

『取り敢えず読んでみろ』

 言われるがまま本を開くと、後ろのページにとんでもない説明が載っていた。


【神の箱庭リノベーション機能】

・神の加護によって護られたこの箱庭は、必要に応じて縮小、拡大が可能です。

・神の加護によって護られたこの建物は、必要に応じて増築、リノベーションが可能です。

・この本の表紙に飾られた魔石に手をかざし、正確なイメージを魔力に乗せて、魔石に流しましょう。

・増築、リフォームの際は非常に危険な為、必ず外に出て行いましょう。

・自分に合った理想的な住まいを手に入れましょう。


「スノー、これって……」

『リリーの想像次第でどんな家にでもなるだろうな』

 マジですか⁉︎ これって今の私たちにとって一番嬉しい機能じゃない?

 シェアハウス、と言うよりかは二世帯住宅かな? いや、二世帯ではないからやっぱりシェアハウスか。共有のリビング、ダイニング、キッチンは広々と取って、バス、トイレ、個人部屋を男女で分ければ気まずくないはず。

 

「リリー、どうかしたか? さっきから固まってるぞ」

 声をかけられハッと我に返る。

「みんな。ここに一緒に住もう」

 そう声をかければ、今度はみんなが固まった。

「リリー、流石にそれは……」

「リリー、自分が女の子だって分かってる? 騎士の私とは違うんだよ」

「いや、毎日リリーのご飯食べたいって言ったけど、流石に……」

「男と女が一つ屋根の下で暮らすなどありえん。嫁入り前の女なら特にだ」


 ごめん。言葉が足りなさ過ぎたよね。

「あのね、この家これから大きくして、男女のプライベート空間を分けちゃうから、それ見てから考えてよ」

 さぁ、さぁ! とみんなを庭まで追い出し、本を手に外に出た。


 何を始めるのかと聞かれたが、それは出来てからのお楽しみだ。


 さぁ。レッツ、リノベーション‼︎







 

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