自白
この所更新の間隔が開いてしまい申し訳ないです。そして更新の度、誤字報告を下さる方々ありがとうございます!ほんっ・・・・・・・・・・・・とうに助かってます!
皆さん、引き続きお付き合い下さい。
は私がベッドルームへと入ると、子爵は扉を閉め鍵をかけた。
「さぁ、これで邪魔は入らない。楽しませてくれよ」
子爵は舌なめずりしながら私に近づいてくる……
まぁ、まずは待ちなさいよ。貴方には聞かなければならない事が沢山あるんですから。
「レール様、先程、私が魔女と呼ばれるようになった由縁をお話致しましたよね? 薬草を使って色んな物を作っているんですけど、少しお試し頂きたいものがあるんですの。ついこの間、試しに催淫剤を作ってみたら巷でとても評判でしたの。なので……私達も紅茶に混ぜて飲んでみませんか? 使用者に話を聞いたところ、今まで体験したことの無い快楽だったと……」
嘘ですが。貴方に飲んで頂きたいのは催淫剤入り紅茶ではなく、お口が軽くなる自白剤入り紅茶ですが。
庭のハーブ園で収穫したハーブの中に、面白い効果のあるハーブを発見したのだ。
【チャービル】
☆☆☆
「グルメのパセリ」と呼ばれ、魚や肉料理の風味付けに向いています。
※魔力を流してみましょう……。
鑑定に言われるがまま魔力を流し、乳鉢ですり潰したところ、薄い黄緑色の透明な液体が完成した。
その液体をさらに鑑定したところ……
【チャービルの自白剤】
☆☆☆☆☆
ほんの一滴でお口が滑らかになり、どんな秘密も素直に答えてくれます。この薬の効いている間は体に力が入らなくなり、動けなくなります。
何と、恐ろしい自白剤を作ってしまったのでしょう……まぁ、こんなもの一生使わないだろうな、封印物件ね。な〜んて思ってたものがここに来て活躍する事になったのだ。
「何!? お前、そんなものまで作れるのか! い、いや……だが、お前のような身元もはっきりしない者に言われるがまま口にするわけにもいかないし……」
私の誘いに、心が揺れているような子爵に、追い打ちをかける。
「ご心配には及びませんわ。私も一緒の物を飲ませて頂きます。それなら安心していただけるでしょう?」
ニッコリと笑いかけると子爵は安心したのか、身を乗り出し「そうか! それならば試してみよう!!」と、そう答えた。
簡単に引っかかってくれてありがとう。私はここに来る前に、どんな毒でも解毒する特製解毒剤を飲んできたから効かないわよ。
さぁ、洗いざらい話してもらうわよ。
「おい、魔女。さっき紅茶と言ったが、私は紅茶より酒の方が好みだ。私の取っておきのウィスキーをお前にも飲ませてやろう。そちらに混ぜて飲もうではないか」
えぇ〜。ウィスキーですか……私、ワインや果実酒は好きだけど、ウィスキー苦手なのよね……でもここで渋るわけにもいかないし……仕方がない。
「レール様。私、ウィスキーは初めてですの。楽しみですわ!」
私が喜んでみせると、子爵はベッドルーム脇のサイドテーブルからウィスキーのロックグラスを二つ手に取り、もう片方にはウィスキーの入ったデカンタを持ってきた。
そこからグラスにウィスキーを注ぎ私に渡してくる。
「さぁ、次はお前の番だ」
「えぇ」
私はポケットから取り出すふりをして、ポケットに手を入れ、アイテムボックスから小さな小瓶を取り出した。
「こちらが催淫剤になります」
ガラス瓶を開け、蓋についているガラス棒に自白剤を付けると、お互いのグラスに一滴ずつ垂らした。
「それではご一緒に」
「ああ。一気に飲み干すとしよう」
カチン。とグラスを合わせ、お互い一気に飲み干す。
うっ!! の、喉が焼ける!! ウィスキーのアルコールの強さに、体の中から熱くなる。
「はぁ〜。いい、気分だな」
「けほっ! そ、そうでしょう? どうです? 力が入らなくなってきましたか?」
「ああ……力が入らない」
「貴方の名前は?」
「ああ……私はルドルフ・レールだ」
バッチリ!
『リリー、これからどうするの?』
静かに見守っていたロジーが声を掛けてきた。
「まずは女性達の居場所ね。子爵、貴方が今まで攫っていった女性達はどこ? 教えなさい」
「私が攫った女性達……数人はメイドとしてこの屋敷で働かせてある。残りは地下に」
ん? メイド達ってさっきの双子も? あの子達も攫ってきたわけ?
「さっきの双子たちも?」
「あれは……ネルソンの娘達だ」
「はぁ? なんでネルソンさんの娘達な訳? 詳しく話しなさい」
「ネルソンの娘達は見目も美しく、私が欲しがった。しかし、ネルソンにどうか娘達はと言われて……代わりに女達の調達をさせていた。逆らったら娘達を頂くと言って……」
「最低ね。それじゃあ、ネルソンさんは娘達を人質に取られて言うことを聞いているのね」
「そうだ」
「それで? 娘達もそうだけど、他のメイド達の意識が無さそうなのはどうして? 貴方が操ってるの? 貴方魔力無さそうだけど。」
「私は魔力持ちではない。メイド達に魔法をかけたのはベラドンナ殿だ」
出た。ベラドンナ。
「ねえ、ベラドンナってさっきの女性よね? 貴方との関係は?」
「ベラドンナ殿とはお互いに協力関係にある」
「まずはベラドンナについて詳しく」
「ベラドンナ殿は西の国、サラセニアの人間で魔法使いだ。サラセニアの中でも上位の人間らしい。魔法で外見を若く見せているが、八十を超えていると聞いた」
そう言えば、見た目の割に言葉遣いがおかしいと思ったわ。
「それで、そのベラドンナは何をしにここに来ているの?」
「私に魔道具や魔法での協力をする代わりに、この国について話すようにと」
「何を話したの?」
「王都の造りについて。王城の造りにいて。騎士団について。わかる範囲全てだ」
「ねぇ、ベラドンナは何を企んでるの?」
「分からない。だが、サラセニアはこの世界の頂点に在るべきだと、度々話していた」
……何だか、嫌な予感がするわね。この先は伯爵様に任せた方が良さそうね。
「あ、そうだ。ベラドンナは伝説の神獣に付いて何か話してなかった?」
「それなら聞いたことがある。サラセニアで神獣を呪術で呼び寄せ、呪いの神獣に変えたと聞いた。呪術師二十人の命と引き換えに。それで、この国を滅ぼそうと企んだらしいが、西の森の辺りで突然気配が消えてしまい、成功したかに見えた作戦は失敗したようだと言っていた」
やっぱり……それにしても、二十人の命と引き換えだなんて……スノーの事にベラドンナが関わっていた事はまず間違いみたいね。スノー、いつか必ず奴らに報いを受けさせるわよ。
『リリー……』
「さて、メイド達は後で魔法を解くとして、残りの女性は地下にいると言ったわね。地下の入口はどこ? きっと鍵でも掛かってるんでしょうけど……」
「こことは逆の最奥の部屋に地下へと通じる階段がある。鍵はネルソンが持っている」
「そう。貴方はあとは用無しね。これを飲んで寝てなさい」
私はアイテムボックスからカモミールの眠り薬を取り出し子爵に飲ませた。
【カモミールの眠り薬】
☆☆☆☆☆
強力な睡眠剤。飲んだ瞬間朝までぐっすり。
ハーブティーとしては心地良い眠りを提供するカモミールだが、魔力を注いで精製した物は強力な眠り薬になりました。
子爵は眠り薬を飲ませた途端、カクンと首を落とし眠った。
「さて、まずはネルソンさんを探して説明して、メイド達の魔法を解いたら地下室の女性達を助けるのを手伝って貰いましょう」
『リリー、僕達もう姿現して良くない?』
『そっちの方が役に立てるな』
そう言う二人に待ったをかける。
「二人ともちょっと待って。これから子爵に酷い目にあわされた女性達の元へ行くのよ? 男性のあなた達は姿を見せるべきじゃないわ」
『あ、それもそっか』
『すまない。配慮が足りなかったようだ』
「気持ちだけ受け取っておくね。ああ……それにしても……さっきのウィスキーが……」
毒は効かないが、アルコールは普通に効いて体がポッポする。
『リリー大丈夫? 体熱いよ?』
『頬も赤いし、瞳も潤んでるような……』
「普段飲み慣れないウィスキーのせいね。ま、そのうち抜けるでしょ。さぁ、行くわよ」
念の為、椅子に座って眠る子爵をロープでぐるぐる巻きにして部屋を出る。
待っててよ。今、助けに行くからね……




