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露店閉店のお知らせ

 感謝祭二日目。今日は開店前から長蛇の列が続いている。

「それじゃあ皆、今日も張り切っていきましょう!」

 開店前に昨日の売上からの予測で、ハーブティー、ポプリをメインに配置する。やはり、お手ごろ価格で手に入れられる商品が売上を伸ばしている。


 そして、昨日の販売時に多く声をかけられたのが、効能について。広く知れ渡っているカモミールティーですら、「どんな効果があるのですか?」など、説明を必要とする場面が多かった。

 なので、それぞれのコーナーに簡単な説明書きのポップを加えてみたのだ。


【カモミールティー】

眠れない夜に効果的。穏やかな眠りをもたらしてくれます。また、疲労回復効果も期待できるので、ティータイムにもオススメ。


【美肌ブレンドティー】

ハイビスカス、ローズヒップ、ネトルのブレンドティーです。どの素材も美容成分が豊富で、飲めばお肌ツヤツヤになるでしょう。


【どくだみティー】

ドクダミの葉を煎じたお茶。ニキビや吹き出物に効果的。体の老廃物を排出するデトックス効果も期待できます。

※アクネ化粧水との併用をオススメします。

※飲みすぎるとお腹が緩くなるので飲みすぎ注意。


【アクネ化粧水】

エルダーフラワーとセージから作られた化粧水。どちらもニキビに効く抗菌作用があります。

※どくだみティーとの併用をオススメします。


【マロウブルーティー】

とても鮮やかなブルーのハーブティーです。喉がイガイガした時にどうぞ。

※別名、夜明けのハーブティーと呼ばれ、リモーネシロップを加えることで可愛らしいピンクの紅茶に大変身。


【アップルミントティー】

ミントの種類の中でもフルーティーな香りのミントを使ったミントティーです。スッキリと気分転換したい時にどうぞ。香りはリンクの実に似ています。


【フェンネル催乳ティー】

赤ちゃんのいるお母さん向けのハーブティーです。このハーブティーを飲めば母乳の出が良くなり、赤ちゃんに必要な栄養を確保することができます。

フェンネル、ダンデライオン、フェヌグリーク、ネトル、レモングラスなどのナチュラルハーブのみを使用しているので安心してお飲み頂けます。


 ティーコーナーはこんな感じで、ポップを作ってみた。

「分かりやすくていいね。よく考えたね〜」

 ジェフからもお褒めの言葉を頂いた。


 ポプリの方は小瓶に香りの見本を作った。よく日本の洗剤コーナーなどで見かけるアレだ。これならば香りを確認する時だけ蓋を開ければ、ほかの香りと混ざらずお気に入りの香りを確認することが出来る。


「それじゃあ、ハーバルアロマ ミュゼ 開店よ」

「おー!」

 みんなの元気の良い掛け声とともに感謝祭二日目が始まった。


 昼頃になるとアクセサリー屋の彼女も来てくれた。

「こんにちは! 売り切れる前に来ちゃったわ!」

「いらっしゃいませ。昨日はごめんなさいね。ゆっくり見ていってください」

 そう言うと、しばらく商品を眺めていた彼女に呼ばれた。

「オススメってどれかしら? 噂では聞いてたけど、実際どんなものがいいか分からないのよね」


「そうですね……まずはハーブティーでしょうか。一番売れ筋がいいのはこの【カモミールティー】ですね。アクセサリー制作の休憩時間に飲んで頂ければ、体力回復の効果も期待出来ますよ。それと、【ラベンダーのポプリ】は魔力回復にも役立ちます。この香りは魔力回復を早めてくれる効果があるんです。魔力を使ってアクセサリーを作ってる貴方にはピッタリかと」

「へぇ! ただ香りが良いだけでなく色んな効果があるのね。どちらも頂くわ。それと、あの棚の上にあるガラス瓶に入ってるものは何? 随分と綺麗ね」


 そう言って指さしたのは、ローズペタルのバスソルト。

「あれはバラと言う花びらで作った入浴剤ですね。バスタブに入れると、花びらが浮いて綺麗なんですよ。香りも良いですし」

「バスタブか……綺麗だけど、貴族向けなのね。残念……」


 そう、後から知ったことだが、この国ではまだ【湯船に浸かる】と言うことは贅沢な事だそう。それもそうだ、湯船に浸かるには火の魔石と水の魔石を使わなければお湯は張れない。湯船に浸かるのは貴族くらいなんだって。


 なので、せっかく作ったバスソルトだが、売れ行きは良くなかった。


「代わりと言ったらなんですが、同じ花びらから作ったシロップもありますよ。こちらは紅茶に入れてもらうと、紅茶の中で花びらが踊り、見た目も綺麗ですし、甘くて美味しいですよ」

 そう言って、試食用の【ローズペタルのシロップ】を取り出す。

 使い捨ての紙製のヘラに一掬いし「試食もしてるのでどうぞ」と渡すと、遠慮がちに受け取り口に入れる。

「……甘っ……こんなにお砂糖使ってるもの試食になんて出したら赤字じゃないの? 高級品じゃない」

 そんな事を言われるが、なんの問題もない。

「これは砂糖を一切使ってないんです【ステビア】と呼ばれるハーブを使ったシロップで一瓶銀貨一枚で販売してるんですよ」

 そう伝えると、ローズペタルのシロップとリモーネシロップと数種類のジャムを購入してくれたのだった。


「沢山買ってくれて有難うございました。これ、買ってくれた皆さんにサービスとして付けているブーケです。良かったらお部屋に飾ってください。ローズペタル商品の元になっているバラの花です」

 そう言って、バラのブーケを渡す。

「初めて見る花だけど、綺麗ね……この花をデザインしたアクセサリー作れないかな……」

 そう言った彼女は「創作意欲が湧いてきた!」と言いながら帰って言った。


 開店と共に多くの女性たちが訪れ、客足が途絶える事はなかった。おかげで、夕方になる頃にはあんなに沢山用意したハーブティーとポプリが完売。コーナーには完売のポップを急遽作り、露店の目立つところにも【ハーブティー、ポプリ完売致しました】の看板を設置した。


「リリー、アロエ軟膏とジャムも残りわずかよ」

 そう報告してくるのは在庫確認をしていたミラ。

「思ったより早く完売しそうね……」

 三日間の日程を見越して十分な量を用意したつもりだったが、あまりの売れ行きの良さに次から次へと完売していき、気がつけば、ほとんどの商品が売り切れてしまったのだった。


「明日の開店は無理そうだね。こんなに早く売り切れるなんて、さすが魔女様の商品」

 店の様子を見に来ていたジェフは空になった商品棚を見回してそう言った。

「明日はお店の外に看板を出して、完売のお知らせをした方が良さそうね。後日、フロスト商会を通じて販売をする事も一緒に書いておきましょ」


 フロスト商会との取引は、ジェフとミラに全て任せる事にしたので、二人が上手くやってくれるだろう。


 こうして思ったよりも早く、感謝祭の露店を終えることとなった。


「ミラ、明日は売上の整理をしたら他の露店巡りしましょ。売上金の中から次の商品に使う瓶とかも買って帰らないとね」

 買い物が終われば、いよいよ作戦開始だ。メリハリは大事なので、買い物中は何も考えずに楽しむことに決めてある。

「リリーってば、ほんと呑気ね。これから重大作戦を控えてる人には思えないわ」

「何事もメリハリよ! 日中は精一杯楽しむわよ!」


 そう言って露店の片付けをするのだった。


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