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山盛りフルーツ

 翌日、身支度を整え森へ入る準備をする。

「一応魔獣避けに作ったサシェ持っていった方がいいよね」

 ペパーミントの香りのするサシェを身につけ外へ出る。

 改めて見てみると家の目の前は広い草原、家の裏は深い森。何だか広い世界に一人取り残されたような感覚になる。

「なんか、ちょっと寂しいかな」

 そう呟きながら苦笑い。

「今日いいものが見つかれば、明日近くの村へ行ってみよう」

 気合を入れ直し、いざ森の中へ。


 森の中で迷子になんてなったら洒落にならないので、あまり奥まで行かずに探索を続ける。

 草をかき分けながらしばらく探すと、胸くらいの高さの低木に小さな赤い実を見つけた。

「綺麗ね。これ食べられるかな?」

 低木ごと鑑定にかけると


【ルビーベリーの木】

世界中どこでも見つけることができる一般的な果実。

甘みの中に爽やかな酸味がある。


「おぉ。これはいいね」

 一粒摘んで口の中に放り入れると甘酸っぱい果汁が口の中に広がった。

「これ、ジャムにしたら美味しいよね」

 ハーブの種類に【ステビア】という甘いハーブがあるからそれでジャムが作れるね。

 ルビーベリーの木から果実をとりアイテムボックスへ入れていく。当たりを見回すと、何本かルビーベリーの木を見つけることが出来た。


 その後も、鑑定を続けながら数種類の果実を見つける。


【キンキツの実】

世界中どこでも見つけることができるが、この世界では食用としてはあまり普及していない。


「これって金柑よね? 確かに実は小さいから中身を食べるって意味では適さないけど、皮ごと甘露煮にしちゃえば美味しく食べれるのに」

 これも甘露煮用にたくさん獲っていこう。


【リモーネ】

世界中どこでも見つけることができる。酸味が強すぎて食用には向かない。この世界で食べるのは罰ゲーム。


「これはレモンね。ステビアとレモンでレモンシロップ作って、レモネードなんていよね。罰ゲームだなんて、可哀想よ。美味しいんだから」


【グリーンフルーツ】

世界中どこでも見つけることができる。

外皮の醜さからは想像がつかないほど、鮮やかな緑色をした果肉は甘みと酸味のバランスがよく、一般的によく食べられる果実。


「これはキウイっぽいね、凄い剛毛だけど。これもジャムにしたら美味しいよね。それにしても凄い剛毛。バリバリだ。」


 ある程度採取しそろそろ戻って調理しますか。


 家に戻るとアイテムボックスから収穫したフルーツを取り出す。

「まずはジャム作りからね」

 綺麗に洗ったルビーベリーを鍋に入れ、昨日から仕込んでおいたステビアの甘味液と共に煮詰める。


 グリーンフルーツは皮をむいてサイコロ状にカットして甘味液と共に煮詰める。


 ちなみにステビアの甘味液は、粗めにざく切りしたステビアの葉と水を1:1の割合で浸け置きにしておく。丸一日経てば甘味液の出来上がり! 簡単でしょ? そこからザルで漉して煮詰めればシロップの完成。漉さずに葉ごと煮詰めると苦味が出るので要注意。


 焦がさないように煮詰めていけば完成だ。


 出来上がったばかりの熱いジャムを息をかけながら冷まし、一口食べてみる。

「ん〜! おいしいっ!」

 大満足の仕上がりだ。


 次は、キンキツの実のコンポートね。

 綺麗に洗ってヘタを取ったキンキツの実を二、三時間水に浸けてアクを抜く。

 半分に切ったら種を取り除いて、鍋に入れ、甘味液と共に煮る。キンキツの実が柔らかくなったら、リモーネの搾り汁を入れてひと煮立ちさせれば完成。


 最後はリモーネシロップ。

 こちらも簡単で、薄くスライスしたリモーネの実と甘味液を煮詰めて作ったシロップを交互に入れて蓋をすれば完成。こちらはしばらく置いておかなければならないので、日の当たらないところに置いておく。


 ……甘いものばかりね。まぁ、保存も利くしいいでしょ。


 残りわずかとなった食材で軽く夕食を済ませると、明日の為に早めに就寝。

「明日は近くの村まで行ってみよう……朝早くに出発ないとね」

 初めての異世界交流にはやる気持ちを落ち着かせ眠りについた。


 翌朝、出来上がったジャムとコンポートと、昨日作った、カモミールの安眠ハーブティー、風邪に効くスペアミントのうがい薬、ラベンダーの魔力回復ポプリ、ペパーミントの魔獣避けサシェ、花壇の花で作ったミニブーケを持って近くの村へと向かった。


 【ストレリチア図鑑】の中に簡単な地図が載っていて、ここから太陽の昇る方角(東でいいのかな?)に向かうと、人の通る道に出られる。そこから道なりに進めば村へ着く……はずだ。

 三十分くらい歩くと人の通る道に出ることが出来た。

「ここから道なりに進めばいいのね」

 地図通りの方角へ一時間ほど歩くと村の入口が見えてきた。

「緊張するな〜。まずは笑顔ね」

 両手で頬をグニグニとマッサージし、緊張をほぐす。

 

 そして村の入口へ向かった。


 村は簡単な柵で囲まれたのどかな村だった。そして村の入口では警備の為か四十代くらいの門番らしい男性が立っていた。


「こんにちは。いいお天気ですね」

「おっ、珍しいな。こんな田舎にお客さんとは。ここはバースの村だ。お嬢さん一人かい?」

 門番の男性はキョロキョロあたりを見回しながら尋ねてきた。

「ええ。どうかなさいました?」

「いや。一人でここまで来たって言うのに馬もなければ護衛もいないからな。ここから隣の街までは馬で2日はかかかるだろ? それに道中にモンスターもいただろう。この村だって小さいがモンスターはやってくるからな。他に同行者がいただろうと思ってな」

 と、男性は不思議そうにこちらを見た。

「ああ。その事でしたら、私の家はここから西の方にある森と草原の境に住んでいますので、一時間半程で着きましたよ」

 そう答えると男性は目を見開く。

「あ、あんた、あんな魔素の濃い場所に住んでるのか! 普通は魔素中毒おこして正気を失うはずだぞ。それにモンスターも……」


 ん? 全然暮らしやすい、のどかでモンスターも出ない平和な所ですが。

「そんな事ありませんよー。この通り無事に住んでいる訳ですし。どこかと勘違いなさってるのでは? あれ? 私、方角間違ってる?」

「き、きっとそうだな。あそこは人が住めない土地だから。それで、今日はこんな田舎の村へどんなご要件だい?」

 何とか納得してもらい今日の目的を話す。

「森で採取したもので作ったジャムなんかを売りに来たのですが、買い取っていただけるところなどありますか?」

「それならこの村に【木漏れ日亭】って宿屋があるからそこの女将が買い取ってくれるだろう。相談してごらん」

「そうですか。ありがとうごさいます。行ってみますね」

「ところでお嬢さん、荷物は? 手ぶらじゃないか」

既に歩き始め村へと入った私に後ろから声をかけられたので、

「あ、荷物はアイテムボックスに入れてますので」

 

 そうにこやかに答えると男性はまたまた目を見開き驚きの表情で見送ってくれた。




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