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マヨとあん

ブックマーク&評価ありがとございます。誤字報告もとっても助かってます。

 フロスト商会のキッチンにて。


 アイテムボックスからエプロンとレッドボーネを取り出す。

「まずはレッドボーネを茹でるわよ」

 大きめの鍋にレッドボーネを入れて、たっぷりの水を注ぐ。その後火にかけ軽く茹でたら20分ほど火を止めて放置する。


 その間に、マヨネーズも作っちゃおう!

 まずは卵黄。テニスボール程の大きさの卵を割り、黄身と白身に分ける。白身は後でメレンゲクッキーにでもしよう。

 卵黄、リモーネ汁、塩、ほんの少しのステビア、そして果実酢をしっかりと混ぜる。ついでにコモンタイムを乾燥させて砕いたものをこれまたほんの少し。


 なぜコモンタイムかと言うと、さすがにこの世界で生の卵を食べる勇気がないから。日本のように衛生管理がしっかりとした養鶏では無いので、お腹を壊したら泣くことになる。


【コモンタイム】☆☆

抗菌効果、抗ウイルス効果

チモール、リナロール、カルバクロール、フラボノイドなどが豊富。

その強い効能ゆえに古代エジプトでは、ミイラの防腐剤・保存剤として使用されていた程。


 なので、コモンタイムを少量加える。


 次に、少しずつ少しずつ植物性の油を入れてその都度よく混ぜていけば……

「はい、完成!」


 穀物酢が無かったので、フルーツから採れる果実酢を使用。

 そして、植物性油も実は無かった。この国で油と言うと、ラードなどの動物性油脂。さすがにマヨネーズにラードはね……なので、数ヶ月前にアブラナから採ったなたね油を使用。この国の人達、ラードばかりで胃もたれしないのかしら? などと思いながら作った事を覚えている。


「リリー、そのぽってりしたのがマヨネーズ?」

 食いしん坊のミラは早速食いついてきた。

「そうよ。食べてみる?」

 そう言って、生野菜をスティック状に切って、セルリーにマヨネーズを付けた。

「こうやってマヨネーズを掬って食べてみて」

 うんうん、これこれ。シャキシャキとしたセルリーにマヨネーズのマイルドな酸味が……たまらん!

「へぇ……じゃあ私はキャルノットで試してみる……」

 そう言ってマヨネーズを掬い、口の中へ入れポキンとキャルノットを折ると、もぐもぐと咀嚼する。

「はわわわわ……」

 え? 何だって?

「ほいひぃ……ごっくん。おいしぃ……おぃしいよぉ!」

 ミラは次から次へと野菜スティックを手に取り、もぐもぐ、シャクシャクと食べていく。ミラ……貴女セルリー嫌いだったわよね……嫌いなセルリーまで全て平らげたミラだった。


「リリー、これは革命よ! これって売ったり出来ないかな?」

 そう言うミラだが、心配なことが一つある。

「う〜ん。買う人いるかな? これ、生の卵使ってるのよ? もちろんコモンタイムで殺菌しているからお腹壊すことはないけど、知らない人は生の卵って聞いただけで買わないと思うけど……」

 そう、この世界で卵を生で食べるのは御法度。生の卵は危ない事は誰でも知っている。

「そこは、魔女様のハーブの力で浄化してますって言えば……」

 そこまでして売りたい?

「そこは、ジェフと相談ね。いくら美味しくても信用が第一だからね」


「ねぇ、後で私に作り方教えてくれる? もちろん勝手に売ったりはしないわ。私用の……ね?」

 余程気に入ったのだろう。ミラはもうマヨネーズの虜だ。

「別にいいけど、コモンタイムは絶対使ってよ? お腹壊すからね。それと、大事な事をもう一つ。さっき、作ってるところ見てたから分かると思うけど、マヨネーズって何から出来てた?」

「えっと、たまごでしょ、あとリモーネ、果実酢、ステビア……油……」

「はい、正解。マヨネーズってね、油をいっぱい使う訳。その油を取りすぎると……」

「と、取りすぎると?……」

「おデブになっちゃうぞ〜!」


 そう言ってミラのお腹をモニモニとつまむ。

「ひぃ〜!!」

「あはははは!! でも、本当に気を付けてよ? 気が付いたらまん丸になってたなんて、シャレにならないからね」

「うっ……気を付けます……」


「さて、レッドボーネもそろそろ進めないとね」

 そう言って、放置していたレッドボーネを一度ザルにあけ、もう一度鍋にレッドボーネを戻して、今度はレッドボーネがひたひたになるくらいの水を入れて、弱火でコトコト一時間。

 レッドボーネが指で潰れるくらいの柔らかさになるまで煮込む。


「ふふふふ……」

 これから寒くなったらお汁粉が恋しくなるはず。こっちに来てもお汁粉が飲めるとは思ってなかったけど、街でレッドボーネを見つけた時は歓喜した。

 よく、寒い時期に缶のお汁粉飲んでたっけな……白玉粉でもあればお団子を入れることが出来るけど……今のところ発見には至らず。


「ねぇ、そんなに美味しいの?」

「うん……それはもぅ……ゴマ団子でしょ、アンパンでしょ、アンドーナツでしょ、酒まんじゅう、あんバターサンド、どら焼き、おはぎに、あずきカボチャ、そしてお汁粉。はぁ……ほんと、美味しいのよ。ただ、材料が足りなくて作れないものもあるけど」

 どこかにうるち米かもち米あればいいんだけど……そうすれば、白玉もお団子も作りたい放題なのに!


 この国では小麦や大麦、ライ麦などが広く栽培されているが、稲は栽培されていないようだ。


「ねぇミラ。粘り気の強い穀物って聞いたことない?」

「粘り気? ベタベタする麦ってこと?」

「まぁ、ニュアンス的にはそんな感じ」

「えぇ〜、そんな麦見たことないよ」

 ですよね〜。

「それがあれば、美味しい〜スイーツが作れるのに……」

「美味しい、スイーツ……ねぇ、リリーはその麦知ってるの?」

「そりゃ、もち……」

 もちろん知ってるなんて言えないよね! この世界にないもの食べたことあるなんて言えないよね!

「まぁ、一度だけそんな感じの麦を手に入れたことがあって、試しに作ってみたら美味しかったのよ」

 うん、そういう事にしておこう。


「うーん……じゃあさ、感謝祭の露店に麦を扱うお店ないか見てみたら? レッドボーネみたいに、豆類を扱うお店があったんだもん、もしかしたらあるかもよ?」

 ……!!

「ミラ! 冴えてる!!」

 これは、もしかしたらもしかするかも!


「うふふふふ……ふふふふふっ……」

「リリー……気持ち悪いわ」


 明日……探しに行くわ。絶対見つけてやるんだから!

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