十四歳……
伯爵様と作戦を練り、大まかな流れを確認しあった後、伯爵邸を後にする。
伯爵様の部屋を出た際、部屋で待っているように。との言い付けられていたヴェロニカお嬢様が部屋の外で待っていた。
「ヴェロニカ、部屋で待っているようにと言ったはずだが?」
伯爵様は厳しい顔でそう告げる。
「お父様、先程わたくしは淑女として誤った振る舞いをしてしまいました。どうか、魔女様にきちんと謝罪をさせてください」
そう、真剣な顔で伯爵様へと訴えた。
その後伯爵様の許しを得て、ヴェロニカお嬢様から再度きちんとした形での謝罪を受けた。
「あのような態度を取ってしまいましたが、是非わたくしと友人になっては頂けないでしょうか」
そう、提案を頂いた。ヴェロニカお嬢様は友人と呼べる存在がいないのだとか。
「ふふっ。光栄ですヴェロニカお嬢様。私の事は魔女様ではなくリリーとお呼びください。お友達なんですから」
そう言うと、頬を赤らめる。
「わ、私のことはヴェロニカと。そう呼んでください。あと、丁寧な言葉ではなく、友人なんですからもっと親しい話し方にしていただければ……」
そんな事を言ってくる。
可愛いじゃない! ヴェロニカお嬢様……ヴェロニカは頬を赤らめまだモジモジしている。
「分かったわ。ヴェロニカ。これからよろしくね」
そう言うと、頬を赤らめたままニッコリと笑顔が向けられた。
その後は、アルベルトさんに馬車でフロスト商会まで送って貰う。
「リリー様、ヴェロニカお嬢様とご友人になって頂き有難うございます。お嬢様はまだ十四歳の為、多感な時期でいらっしゃいまして……」
「じゅ! 十四歳⁉︎ あれで⁉︎」
なんて発育がいいんだ‼︎ てっきり二十歳くらいと思っていた私は衝撃を受けた。
「私……てっきり二十歳くらいかと思っていました。貴族のお嬢様って皆あんなに大人っぽいんですかね……」
「そうですね。皆様立派な淑女になられる為に、日々努力をなさっていますからね。ヴェロニカお嬢様も毎日家庭教師が付きっきりでお勉強をされているんですよ」
貴族のお嬢様も大変なのね……それじゃあ、友達なんて作る暇ないじゃないの。
貴族のお嬢様方は、十五歳で王都の学院に通うそう。学院に通えば友達もできるのだろうけど、ヴェロニカはまだ十四歳。だから友達がいない訳ね。来年には王都での生活が始まる訳だ。それまでは私が友達として接しよう。
十八歳になるとデビュタントと呼ばれる初めての夜会に参加するのだとか。いわゆる社交界デビューね。そこで恥をかかないためにも一生懸命勉強をし、そこから貴族女性として繋がりを増やしていくのだそう。
この国では遅くとも二十歳で結婚するらしいので……二十二歳の私はいわゆる行き遅れになるわけだ……別に気にしてないけど……
アルベルトさんと話をしていると、あっという間にフロスト商会へ着いてしまった。
アルベルトさんにエスコートされ馬車を降りると、ジェフとミラが迎えに出てくれた。
「それではリリー様。例の件よろしくお願いします」
「ええ。作戦通りに……」
短く言葉を交わし、アルベルトさんは伯爵邸へと戻って行った。
「リリーおかえり!」
「お疲れ様、リリー。さぁ、中へ入ろう」
フロスト商会へ入り、先程の部屋に通される。
「あ、ジェフ。着替えてきてもいいかな。ドレスお返ししないと。ギャレットさんは?」
「ああ、その事なら……そのドレスはリリーにプレゼントするって。とっても似合っていたからね。あの後の父さん、リリーの事をべた褒めでね。『なんて美しいんだ!』って一人で盛り上がってたよ」
ええ‼︎
「こんな高価なドレス受け取れないよ!」
見るからに仕立ての良いドレスは私にはとても受け取ることは出来ない。
「いいんだよ。その代わり、村で作ったハーブの商品をフロスト商会に卸してもらえると助かる。さっき、ミラちゃんとも話をしていたけど、工房で作ったものを、フロスト商会に卸してもらって、ここで販売を受け持ったらどうだろうって相談してたんだ」
「それはいいけど……本当に貰っていいのかしら? 何だか悪いわ……」
「そこは喜んで貰って欲しいな。父さんもきっと喜ぶ」
「分かったわ。有難く頂くわ。それでギャレットさんは?」
「父さんなら商会の用事でどこかへ出かけたよ。今日は戻らないって」
ドレスのお礼をしたかったが、残念ながら不在の為、次の機会になった。
「取り敢えず、着替えてくるね。このままじゃ落ち着かないから」
着替えの部屋を借りて元の私服へと着替えた後、先程の部屋へ向かった。