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感謝祭です

 全くもう! 油断も隙もないんだから!


 いつの間にかベッドに潜り込んで一緒に寝ていたロジー。

『だって一緒に寝てくれるって言ったじゃん』

「それは、あの時だけでしょ? 毎日とは言ってません!」

『じゃ、毎日一緒に寝よ? 言う事聞いてくれるって言ったじゃん。』

「一つだけって言いました」

『だから一つだけじゃん、リリーと眠るって。一つだけだよ?』

「もう、屁理屈言わないでよ。毎日だなんて、ここの宿のベッドは大きいからいいけど、うちのベッドは一人用でしょ? あ、大きいベッドを買うなんてしないからね」

『うっ、じゃ、じゃあ! この街にいる間だけ! この宿に泊まってる間だけでいいから‼︎』

 んもう! わがままなんだから!

「分かったわよ。いい?この街にいる時だけだからね!」

『分かった! リリー大好きー!』

 そう言って抱きつくロジーを、しょうがないな……と頭を撫でてやる。


『リリー、それは酷くないか? 私が一緒に寝たら懇々と説教されたのはなんだったんだ』

 そう言うのはスノー。

 スノーと出会った翌日、いつの間にか隣で寝ていたスノーに懇々と説教したのは今でも覚えている。

「分かったわよ。スノーも一緒に寝ればいいんでしょ? 二人ともこの街にいる間だけだからね」


 朝から二人のせいでバタバタとしてしまったが、急いで支度をしてミラと共に朝食を済ませ、感謝祭の広場へと向かう。


「やあ二人共。おはよう」

「おはようジェフ」

「おはようございますジェフリーさん」

 軽く朝の挨拶を済ませ、私たちの露店のブースへ行ってみると、

「す、すごい。ジェフ! これ一晩で作り上げたの⁉︎」

 そこには【ハーバルアロマ ミュゼ】のウェルカムボードが設置されていた。

「いや〜昨日あの後、ミュゼの看板考えてたら止まらなくなってね。今回はウェルカムボードって形でお客様を迎えられたらな〜って考えてて、気付いたら作ってた」

 ウェルカムボードはスズランの花をモチーフにした可愛らしいデザインになっていた。

「ジェフ……ありがとう!」

 ジェフにはほんとお世話になりっぱなしだ。何かお礼を考えておかないとね。


 フロスト商会の隣に併設された私たちの露店は、簡易テントで場所が確保されていた。そして、テントの前にはウェルカムボード。

 私はアイテムボックスからハーブの寄せ植えを取り出し、ウェルカムボードの脇に置いてみた。

「うん。とてもいいね! 植物があるといい雰囲気がでる」

 ジェフにも好印象だったようだ。

「さて、ミラ。商品並べるわよ」

 アイテムボックスから工房で作った商品次々と出していき、ミラが綺麗に並べていく。それから……


「よいしょっ!」

 ドーン‼︎

「リリー‼︎棚ごと持ってきたの⁉︎」

 そう、私が作った商品は棚ごとアイテムボックスに入れたのだ。

「一回棚から商品を取り出して、並べ替えるの面倒だな〜、棚ごとアイテムボックスに入らないかな〜って試したら、入っちゃった……」

「まさか入ると思わなかったけどね。冗談で言ったのにほんとに入るって……リリーのアイテムボックスどこまで懐が広いんだろ?」

「……もう、好きにすればいいと思う」

 ジェフには呆れられてしまった。


『リリー!手伝いに来たよ!』

 準備を始めていると、そう言ってロジーとスノーが二人揃ってやって来た。昨日の夜、さすがに三日間お留守番はキツいと抗議があり、それなら……と露店を手伝ってもらうことにしたのだ。

「ありがとうね、二人とも。二人は私の作ったものなら全部把握しているから何か説明を求められても完璧に答えてくれるわ。ミラも大変になったら二人に頼るのよ」

「分かったわ。頼りにしてます!」


 それからしばらくして感謝祭のセレモニーが、広場の中央で始まった。

 私たちは露店の準備があるから、遠目に見る。


「ねぇ、今スピーチしてる人誰かしら?」

 どう見ても一般市民とは違うオーラを持つ人物が、広場に作られたステージのようなところでスピーチをしている。

「ああ、あの方はこの街を治めているブローディア伯爵様だよ」

 伯爵様!

「伯爵様って貴族よね! へぇ〜! 初めて見た! すご〜い、貴族っぽ〜い!」

「リリー? 初めてじゃないでしょ? お二人の事忘れてるでしょ」


 あ。

「そっか、クラウスさんとフレドリックさんも貴族だったわ。でも騎士って言ってたけど、貴族も騎士になれる訳? 今イチその辺分からないのよね」

「おそらくお二人は貴族の次男以降の方々だと思うんだよね。貴族の長男は爵位を継ぐ跡取りとして、次男以降は騎士として育てられることが多いからね」

「ん〜、よく分かんないけど、貴族の世界って難しいのね。私には関係ないから別にいいけど」

「…………」

騎士の誓いを受けといて関係ないわけないじゃん……そう言いかけたジェフリーだが、リリーに説明するのは大変そうだと諦め口を閉じた。


「貴族ってさ、もっとこう……民と距離を置いた遠い存在? だと思ってた。こうやって街の祭りに足を運んでくれるのものなのね」

 貴族って聞くと、偉そうにふんぞり返って民から税を搾り取るイメージよね。


「この街の伯爵様が特別なんだよ。この街の伯爵様は代々、民と距離を置かず、忙しい合間を縫って、時々だけどこうやって街にいらしてくれるんだ。無理な税を科す事もなければ、民を苦しめることもしない。おかげで支持率は高く、街には人が集まる。人が集まればその分街が栄える。こうやって伯爵様は街を大きく豊かにしていったんだ」


 すごい人格者ね。ジェフの話で街のカリスマ的存在だと言うことが分かる。


「ほら、感謝祭が始まったよ! リリーの露店は街で噂になってるからね、お客さんが沢山来てくれると思うから頑張るんだよ!」


「うん。ミラ、頑張ろうね!」


 感謝祭初日スタートです!










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