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魅惑の……

 翌朝ベッドで目を覚ますと、背後から優しく包み込む腕に一瞬ハッとしたが、「あ、そうだった。なんだロジーか……」と思い出す。

 昨晩はとんでもない勘違いをし、動揺していた為に「朝まで一緒に眠ってほしい」とのお願いを「なんだ、眠るだけか」とホッして承諾してしまったが、改めて考えてみると……これはこれで心臓に悪いわ。この状況、誰かに見られでもしたら誤解を生むわよね。


 そんなことを考えながらも、ロジーを起こさないようにそっとベッドを出る。

『リリー、おはよう。昨日は大変だったな』

 いつの間にか部屋でくつろぐスノーに声をかけられた。

「スノー……昨日は大変だったなって……見てたの?」

『ああ、ソファに二人で倒れ込んだところから』

「もう……見てたなら止めてよ」

『リリーが何でも言う事を聞くと言ったんだろう。次からは言葉に気をつけた方がいいな。今回はロジーだったから良かったが……もし私だったら……』

 もしスノーだったらどうなのよ! 怪しく口角を上げ、スノーが言葉を続けようとしたが、止めるように上から言葉を被せてた。


「い、以後気を付けます‼︎」


 スノーはクスリと笑うと寝癖のついた私の髪を優しく手で梳いてくれる。

『今日はこの街を観光すると言っていたな。私達もついていきたいが、リリーはどう思う?』

「そうね、今日は二人で観光に行かせて。ミラと二人でお土産を買ったり、女の子同士の話もしたいしね」

 そう言って、どうやってあの二人をくっつけようか、などと考える。


『ところでリリー、ずっと気になっていたのだが、髪に何か付けているか? 微弱が魔力を感じる』

「え? 髪って……ローズオイルを塗ってあるけど、魔力?」

 なんの事か全くわからずにいると、スノーが目をしかめた。

『リリー、そのローズオイル、ちゃんと鑑定したか?』

 そう言われ、そう言えば何か作る時は必ず鑑定するようにってロジーから言われてたんだった。

「これ、まだ試作品だったから鑑定まだだったんだよね」

 そう言ってアイテムボックスから取り出し、鑑定をしてみる。


【魅惑のローズオイル】☆☆☆☆☆

髪に塗るとツヤが出て指通りも滑らかになります。

※オイルの香りを嗅いだものは心がとろけ甘えたがります。濃度に注意。

※効果時間は約六時間ほど。


「………………」

肩に手を掛け同じく鑑定を見るスノー。

『やはりな。微弱な魔力を感じると思った。もう、効果は切れかかっているが、もう少し待ってから外に出た方が良さそうだな。それとリリー、次からは作ったものはすぐに鑑定する事、試作品でもだぞ。それに、庭に植えてある花たち、あれも鑑定しておけ。リリーの作るものは何が出来るか分からないからな』


 ロジーと同じことを言われ項垂れる。

「その言葉……ロジーにも言われた……」

『リリー……』

 スノーは呆れて言葉も無い様子。白い目で見られる。

「ロジーはこの香りに反応したって事よね。元々うんっっと甘やかすって言ったのもあるけど」

『恐らくな』

 次からはちゃんと鑑定しよう。すぐしよう。このオイルは別のオイルと割って効果を薄めればいいよね!


 そんな話をしていると、のそのそとロジーが起きてきて『リリーおはよう』そう言ってギュッと抱きしめられる。

「おはよう。ロジー。よく眠れた?」

『うん。リリー大好き……』

 よしよしと頭を撫でて今日の予定をロジーに言って聞かせる。まだ、オイルの効果が効いているのか随分と甘えてくる。

「……だから今日はミラと二人でいさせてね。ロジーとスノーにもお土産いっぱい買ってくるから。ね?」

 ロジーは意外とすんなり『分かった。待ってる』と私を離してくれた。

 さて、ミラも起きてるかしら? 朝の支度をしないとね。


 身支度を整えてミラの部屋の扉をノックする。すると、準備万端のミラが扉を姿を見せた。

「おはようリリー。よく眠れた?」

「何とか……」

「やっぱり? 私もあまりの部屋の広さに落ち着かなくてさ、眠るまで時間かかっちゃった」

 私の場合ロジーのせいで眠れなかったんだけどね。

「朝ごはん食べたら出発しよう」

 そう言って、食堂でこれまた豪華な朝ごはんを頂き街へと繰り出した。


「今日は夕方までフリータイムだからね、時間はたっぷりあるし、まずは街を歩いてみましょ」


 街はどこへ行っても水の流れる音が聞こえ、近くには必ず水路がある。そして、所々に住民用の公共洗い場があり、上から飲料・冷蔵・炊事・洗濯と順番に用途によって使い分けられていた。そこでは水路の水を引かずに湧き水を利用しているようだ。


「へぇ、よく考えられてるね。一つの場所で色んな用途があるわけね。村では飲水は井戸から。洗濯は近くの川でしているから、これは便利かも。村にも湧き水が湧いてればいいんだけど、こればかりは無理だもんね」

 ミラは街の水場の利用方に感心していた。


「ねぇ、ミラ? 思ったんだけど、水の魔石って使わないの? いくらでも水出るんじゃないの?」

「……はい? リリー、何言ってるの? 魔石なんて貴重で高級なもの田舎の村になんかあるわけないじゃない。この街にだってお店や貴族の屋敷にくらいしか置いてないんじゃないのかな? もぅ、リリーったらどこでそんな魔石の知識知ったのよ。田舎に住んでれば一生お目にかからないわよ」

「へ、へぇ……前に本で読んだんだっけかな」

 う、うちに火の魔石と水の魔石あるけど……あと光の魔石……黙っておこう。

「魔石って便利そうなんだけど、魔石の魔力を使い切ってしまえば、ただの綺麗な石だからね。外から魔力を補充するか、買い換えるしか無いもの。村では買うお金も、補充できる魔術師がいないから必要ないのよ」

「なるほどね。勉強になります」


 魔石の真実を知ったリリーであった。


「あら、観光のお客さん?こんな所に珍しいわね」

 そう言って、地元の方だろう奥様方が洗濯物を抱えてやってきた。

「すみません。地元の皆さんの公共の場所にまで見学に来てしまって」

「あら、いいのよ! この街の水場はほかの街じゃ珍しいからね」

 それから街の奥様方と少し話をしてその場をあとにした。


「それじゃあお土産探しに行きますか」

「そうだね。楽しみだわ〜」


 そう言って二人は街の繁華街へと足を運んだ。

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