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いざ、隣町へ

 ジェフから感謝祭へのお誘いを受けてからの二週間、目まぐるしい日々を送っていた。


 一番頭を悩ませたのは、孫ちゃんズ。

 自分たちも付いていきたいと、強請られ大騒ぎされてしまった。村長からのお許しが出なかったので、こればかりは仕方がない。街まで片道二日の距離、流石に十歳前後の少女たちを連れては行けない。街で可愛いお土産を買ってくるからと言って何とか宥めた。


 次にどの商品を売るのかを話し合う。散々話し合って選んだ商品は、気付けばほとんど全ての商品だったのには笑った。孫ちゃんズのプレゼンは完璧で、私の心を鷲掴み。あれもこれもと採用して行ったらほとんど全ての商品になってしまった。

 何て優秀な営業たちなんだ! それに比べ、私は言われるがままホイホイ判子を押す、ダメな上司みたいじゃないか。うっ、もっとしっかりしよう。


 私は私で、バラを使った商品を開発。


・ローズペタルのバスソルト

ローズガーデンで採取したバラを岩塩と花びらで塩漬けにした物。ガラス瓶に入れて塩、花びら、塩、花びらの順に重ねて漬けたので見た目も美しい。


・ローズペタルシロップ

バラの花びらをステビアシロップで漬けたもの。紅茶やハーブティーに入れれば花びらがカップ内に広がり彩りと香りをプラスする。


・ローズオイルのボディークリーム

バラの花から抽出したエッセンシャルオイルで作ったクリーム。練り香水としても効果大。


 などなど。

 バスソルトに使った岩塩、実は森の中を散策していた時に見つけたもの。これで暫くは塩に困ることはなくなった。

 エッセンシャルオイルは、バラの花びらを魔力を流しながら乳鉢でゴリゴリしていたら、エッセンシャルオイルになった。


 その他には庭で咲いた花々を切り花にしブーケにした。こちらは買ってくれた人へお礼のプレゼント。

 アイテムボックスに入れておけば萎れることも無く、新鮮なままで運べる。


 そんなこんなで、私とミラと孫ちゃんズは感謝祭の為の商品作りに追われ、あっという間に二週間が経った。


「さあ、出発するよ。忘れ物はないね?」

 ジェフとミラが御者台に座り、私はスノーに跨る。ロジーはいつもの定位置のペンダント。

 馬車を引くのは普通の馬よりも足が太く逞しい馬だった。この日の為にわざわざジェフのお父さんが貸してくださったのだ。

 ふふふっ、ミラったらカチコチに固まってる。頑張れミラ!


 村の入口では、孫ちゃんズ、ソニアさん、村長さん、バルテロさん、ハリスさんを初め村のみんなが見送りに来てくれた。

「気を付けて行ってくるんだよ」

「土産話楽しみに待ってるぞ」

「知らない人に付いてっちゃダメだぞ」

 などと、色んな人に声をかけられる。ん? 最後の何か失礼じゃない? 誰よ言ったの。


「それじゃあ皆さん行ってきます!」

 そう言って村を出発した。


「それにしても、ほんとにリリーの馬は綺麗よね」

「ああ、僕もそう思う。まだ、リリーのお父さんとお母さんがいた頃に連れてきたんだっけ?」

 ギクッ。そんな話にしておいたような気がする。

「うん。その辺の事情は私も知らないんだけどね。しばらくこの子の具合が悪かったから最初の頃は村に連れて来れなかったのよね」

『リリー……苦労をかける。』

いいのよ。流石に神獣スレイプニルだなんてバレたら大騒ぎだもんね。その為なら嘘の一つや二つ仕方ないわ。ちょっと心苦しいけど。私の存在も嘘みたいなものだしね!


 街へは順調に進み、日が傾き始める。

「暗くなる前に今日の野営の準備をしよう。今日はここまでだね」

 特に大きなアクシデントもなく、途中何度かの休憩を挟み、約半分の道のりを進んだ。

 ミラは、う〜ん! と伸びをしてストレッチをしてる。

「ミラちゃん疲れたでしょ? 馬車ってガタガタ揺れるから、ただ乗ってるだけでも意外と疲れるんだよ。リリーは……平気そうだね」

「ええ。馬が気を使ってくれるからね」

 そう言っていつものように首筋を撫でる。

「ありがとうね」

「リリーと心が通じあってるみたいね。まるで言葉が分かるみたい。素敵ね」

 ええ、言葉が分かるし心は通じあってるわよ。ふふふっ。


「さて、まずは火を焚くよ」

「はーい」

 私はアイテムボックスから焚き木を取り出し、魔法で火を着ける。それから、ロールキャベツの入ったお鍋とパンと食器を取り出す。

「ジェフ、このロールキャベツね、ミラが作ってくれたのよ。温めて頂きましょう」

 このロールキャベツ、昨晩ミラに作り方を教え、ミラが一人で作ったものだ。私は手を出さず教えるだけ。

「へぇ〜! いい匂いだね。ミラちゃん料理上手なんだね!」

「でしょ〜? きっといいお嫁さんになるわね」

 よし、掴みはバッチリだ!


 その後は三人で食事をして、焚き火を囲みティータイム。

「ねぇ、そう言えばまだ街の名前聞いてなかったわね。何て言う街なの?」

「そっか、まだ知らないんだったね。街の名前はブローディア、水の街としても有名なんだよ」

「水の街?」

「うん。少し離れた場所に、山から流れる大きな川があるんだ。そこから水を引き、街中に水路が張り巡らせてあるんだよ。小さな水路から大きな水路までね。きっと見応えがあると思うよ」

水の街かぁ、すっごい楽しみ! 一人で想像を膨らませる。


「ジェフリーさん、あたし達の日程ってどうなっていますか?」

 そうミラがジェフに尋ねていた。

「そうだね。今のうちに説明しておこうか。リリーもちゃんと聞いといてよ。まず、このまま順調に進めば明日の夕方前には街へ入れると思う。疲れているところ悪いんだけど、そのまま父の商会へ行くね。そこで、露店の許可証や説明なんかを受ける。その後は宿に行って休むだけ。宿は父が取ってくれているから、心配無用だよ。翌日は一日オフだ。リリーとミラちゃん二人で観光するのも良いんじゃないかな? その翌日はいよいよ感謝祭だ。露店を三日間出すからね。どう? 覚えた?」


「……わくわく。わくわくしてきた! ミラ! 観光するわよ、水の街! ああ、今日は楽しみすぎて寝れないかも!」

 遠足の前の子供の気持ちが分かるわ。

「私も街へは初めてだからドキドキするわ」


「感謝祭の三日間で時間を見つけて他の露店も見に行こうね。僕はリリーとミラちゃんの隣のブースにいるから時間が合えば一緒に行こう」


 そうして夜は更けていった。夜はジェフが見張りをすると言ったが、私が既に野営地ごと隠匿の魔法で覆ったから大丈夫だと伝えると目を見開いたが、直ぐに真顔になって、肩を掴まれた。

「リリー……街では目立つ魔法は使っちゃダメだからね。リリーみたいに魔法使える人いないんだからね。大騒ぎになっちゃうからね。お祭りどころじゃなくなっちゃうからね」


 と、しつこく、しつこく念を押されたのだった。



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