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ミラが可愛いです

 スノーと出会ってから約一ヶ月。家と村を行き来し、週に三度村を訪れ、二度はミラと孫ちゃんズにハーブの修行。もう一日はソニアさんと村長さんとジェフと四人でハーブを使った新しい商品開発に勤しんでいた。


 週に三度も村に来れるようになったのはスノーのおかげ。スノーはスレイプニルの姿の他に人の姿ともう一つ、普通の白馬の姿にも変化出来た。流石にスレイプニルに乗っての移動は大騒ぎになってしまうだろう。


 ハーブの修行も順調に進み、彼女たちは優秀な魔女の弟子となった。この地で作られるハーブティーやポプリはいつの間にか隣の街でも噂されるようになり、村にわざわざ買い求めに来る者も増え、客の中には貴族の使いまで現れるようになった。

 何でも、ハーブティーは貴族の間でちょっとしたブームになっていて、お茶会などで出すのがステイタスシンボルなのだそう。


 お値段は大分高めだが、誰もが買い求めてくれる。この村の人にはお安く提供し、村以外の買い付けには高めのお値段設定。これはソニアさんとの約束もあるので、お値段に関しては口出ししない。村で作られたハーブ商品はソニアさんがお値段設定している。私にも他で売るならこのくらいで。とお値段設定をされた。


「リリーのおかげでこの村は活気を取り戻したよ。ハーブの買い付けに来た商人が宿に止まってくれるおかげで私も潤ったしね」

 そう話すのはソニアさん。これから冬になり客足が遠のくので、蓄えは多いに越したことはない。

 ハーブも冬の間は収穫が出来ないので、今のうちに刈り取っておく。


 それと、ミラと孫ちゃんズとで色々と実験してみて分かったことが二つある。


 一つは、ハーブを育てるには私が魔法で耕した土地に限るということ。その他の畑でも種を蒔いたり挿木で増やしたハーブ苗を植えてみたのだが、種は芽が出ず、苗は枯れてしまった。

 なので、六人が管理できる最大の面積を一気に耕し、そこでハーブの栽培をすることになったのだ。


 二つ目は、まぁだいたい予想はしていたが、私の家では種を蒔くと次の日には花が咲くが、村では開花まで一ヶ月はかかる。それでも普通の植物に比べれば早い方だが……私が耕した畑には私の魔力が込められているからだろうとスノーが言っていた。


 ミラと孫ちゃんズはとてもいい関係を築いていて、孫ちゃんズは五人それぞれが担当を決め、ポプリ、ハーブティー、スキンケア、ステビアスイーツ、医薬品に分かれて栽培、商品作成。ミラはその全体の管理、販売を担当している。


「皆上手くやってるみたいね」

「リリー‼︎」

「魔女さまー‼︎」

 ここは、彼女たちにハーブ作りを教えると決めた後に、工房として使っている村長所有の建物。簡単な作りの建物だが、すぐ近くにはハーブ畑があり、ハーブ商品作りにはピッタリの場所だった。


 工房でミラと孫ちゃんズとティータイムを楽しんでいると、ジェフがやって来た。

「やあ、ここか木漏れ日亭にいると思ったよ」

「あれ? ジェフ、どうかした?」

「お嬢様達、僕もティータイムに混ぜてもらえるかな?」

「あっ、ジェフリーさんいらっしゃい。どうぞ、今ハーブティーを入れますね。」

 ミラはそう言って席を立ち、新しくハーブティーを入れる為お湯を沸かしに行った。足取りは軽く、顔がほんのりと赤い気がする。

 おやおやおや? これは……いつも揶揄われているので後でお返ししてやろう。ふふふふふ……


「お待たせしました。どうぞ」

 そう言ってお茶を勧めるミラ。孫ちゃんズはティータイムを終え作業場へ戻って行った。

「すまないね、突然押しかけて。実はリリーにちょっとした提案があってね。ミラちゃんにも関係することだから一緒に聞いて」

「あ、あたしもですか?」

 ジェフに話しかけられ顔が赤い。ミラ、可愛い!

「ミラちゃんなら知っていると思うけど、この時期隣の街であるイベントが行われるんだ」

「あ、感謝祭!」

「そう、感謝祭。それでね、感謝祭では露店が立ち並び色んな商品が売買されるんだよ。リリー、興味ない?」


 へぇ! 感謝祭ね! この世界にも感謝祭ってあるのね。確か、初めての収穫を神様に感謝するんじゃなかったっけか。

「何だか楽しそうね! 因みに何に感謝する祭りなの?」

「豊かな大地をもたらしてくれた神様に感謝する祭りだよ。この地を見守ってくれている神々への感謝を伝える日なんだ。それでここからが本題、僕の父も露店を出すんだけれど、もし良かったらリリーとミラちゃんも露店出してみる気ない? 父に、リリーとミラちゃんと孫ちゃんズの事を話したらぜひ会ってみたいって言われてね。それで、露店の手続きもしてくれるって言うんだ」

「ほんとに⁉︎ すごい! 楽しそう! 行きたい! やりたい! ねぇ、ミラ! 行こうよ!」

 嬉しさのあまり興奮しながらミラを見ると、完全に挙動不審になっていた。

「ジェフリーさんが、あたしの事をお父様に?」

 と、真っ赤な顔をして小さな声でブツブツ言っていた。これはダメだ。

「ジェフ、私とミラ、二人で参加させてください」

「分かった、父に伝えておくよ。出発は二週間後。この村から馬車で移動するね。荷物は……リリー達はアイテムボックスに入れていく?」

「そうね。それでもいいけど、今回は馬車に積んで行きましょう。それも楽しみの一つって事で。乗り切らなかった分は私がアイテムボックスで運ぶね」

「分かった。それじゃあ、二週間後に」

 そう言ってジェフは工房を後にした。


「こら、ミラ! しっかりしなさい!」

「ど、どうしよう! ジェフリーさんと隣街に行くだなんて。しかも、お父様に話してただなんて!」

 ミラは頬を押さえソワソワしている。

「ミラ〜? 何だかお顔が赤いようね〜? ど〜したのかな〜? あ! ジェフ!」

 そう言うと、ハッと振り返る。

「嘘よ、う・そ。も〜ミラったら可愛いんだから〜♪」

「リリー‼︎」

「あはははは、ミラ分かり易すぎ。好きなんでしょ? ジェフの事。私応援しちゃう!」

「うぅぅ。そんなに分かり易い?」

 まだ頬が赤い。

「そんなに頬を赤くして、これで分からなかったら相当なニブチンよ?」

「リリー……あたしね、ジェフリーさんはリリーの事が好きなんだと思うんだ。だから、その……リリーもジェフリーさんの事、好き、なのかなって」

「えぇ⁉︎ ないないない! 私とジェフはそんなんじゃないよ。この先もきっとそんな関係にはならないと思う。だからミラは自信持って! 今年の感謝祭でグッと近づいてチャンスをもぎ取るのよ!」


 ジェフとミラが上手くいけばいいな、などと思いながら二週間後の感謝祭に胸をふくらませたのだった。


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