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スーパーフード

「ロジー、これ食べてみて」

 そう言って、ある物を小さくしてロジーに渡す。

『なにこれ? 食べ物?』

 そう言って、渡した物をひっくり返したり匂いを嗅いだりしている。

「いいから、いいから」

 そう言って、自分も口の中へ放り入れる。それを見てロジーも少し大きいそれを一齧り。

『へぇ、美味しいね。これ何なの?』

「さて、何でしょう。ヒントはこの部屋の中にあります」

 そう言うと部屋の中を見回す。


『食べ物っぽいのある? 花くらいしかないぞ?』

「そうよ」

『そうよ、って。え? 花? これ、花なの?』

 そう、私たちが食べたのは大輪の黄色い花。一番最初に植えた【ひまわり】の種。

「その花、ひまわりって名前の花でね、その種は食べられるのよ。しかもとっても栄養が豊富。今食べたのは採れたての生の種なんだけど、これから乾燥させてローストするとカリッとしてまた違った美味しさになるのよ」

『種か。少ししっとりしてるのは採れたてだからなんだな』

「そうよ。今日はこれからこのひまわりの種を乾燥させるの。それから塩と一緒にローストね。ロジーも手伝って」

『任せて! リリーと一緒にいると飽きないな。花の種を食べるなんて、誰も思いつかないんじゃないか?』

「そうでもないよ。この世界でも木の実は食べるよね? その木の実なんかも花が咲いて実がなるでしょ、それと一緒よ。そうだ……ひまわりの種って名前、長いから「サンシード」なんてどうかな? ひまわりって別名サンフラワーって言うんだけど、その種=シードだから「サンシード」。栄養価が高いから、例えば旅のお供とか、あとは貧しい土地でも手軽に栄養を取れるから飢餓なんかも無くなるんじゃないかな」

『サンシードね、リリー、ナイスネーミング!』


 うん、なんか閃いたかも! 取り敢えず鑑定。


【サンシード】

☆☆☆☆

アンチエイジング効果、抗酸化作用、

リノール酸、ビタミン類、ミネラル類、セレンが豊富。

少量で満腹になり、腹持ちも良い。保存食に向いたスーパーフード。


※その種から取れるオイルに魔力を流すと……。



「オイルに魔力を流すと……何が起こるの? そこは教えてくれないのね。自分で作ってみろってことかしら? それに、星が五個。これはアタリかも!」

 そう、鑑定スキルがレベルアップしてから、☆が付くようになった。そして、星の数が多ければ多いほど特殊な効果があるようだ。

 これは是非オイルを抽出して魔力を流してみなければ!


「ロジー、星四つよ。何か凄いものが作れそうな気がする! まずはひまわりを刈り取るわよ。全部で十輪あるからね、残りの九輪の収穫よ!」

『おう!』


 何が出来るのか期待に胸を膨らませて庭へ向かった。


「まずは花から種を取るわよ。こうやって手で擦り落とすの」

 種のぎっしり詰まったひまわりの花を片手で持ち、もう片方の手で種を擦るとポロポロと種が落ちる。

『へぇ〜、意外と簡単に取れるんだな。じゃあ、僕も』

 そう言うと、体を大きくて種を擦り始めた。二人で黙々と、ただひたすら種を落としていく。黒に白い縞模様の殻に包まれた種はどんどん山のように積み上がった。

「ふ〜。これだけあると結構大変ね。あ、失敗した〜、手袋するんだった……」

 手を見ると赤くなっていてヒリヒリする。


『リリー、なんの為に手袋買ったのさ』

「うっ、ごもっともです」

 呆れた顔で見ていたロジーだが、アロエの軟膏を棚から取り出すと手を取り、手のひらに塗ってくれる。

『リリーの薬はすぐ効くからね。でも、あんまり怪我しちゃだめだよ』

「分かってます。鑑定結果が気になっちゃって手袋の事まで頭が回らなかったの」

 そう言うと困った顔で笑われた。


「ありがとね。さて、随分と沢山取れたけど実はね、このひまわりの花、食用なんだ。種は取れるけど、オイルはあまり取れないのよね。搾油用の種ならもう少し取れるんだけど、今回は諦めましょう」

『食用に、搾油用。そんな種類があるんだね。ちなみに花壇の小さいひまわりは何用?』

「あれは観賞用よ」

『観賞用……。ひまわりって奥が深いね』


 花壇に植えられたミニひまわり。そう言えば、孫ちゃんズにもプレゼントしたことがあったな、なんて思い出した。プレゼントした時のあの子たちのキラキラした顔は忘れられない。


「さてと、ここからが大変なんだけど、種の食べられる部分はこの殻の中に入ってるのね。それをまぁ、剥いていくんだけど……」

 調子に乗って十輪全ての種を採取したけど、大体5kgほどあるんだよね。

『まさか地道に一つずつ剥いていく気じゃ……』

 ギョッとした顔でこちらを見るロジー。

「まさか! 私だって遠慮するわよそんな作業。ここはね、魔法でやっちゃおうかなって。半分はローストして加工したり、そのまま食べたりするから取っておくとして」


 そう言って半分の量のサンシードに風魔法を発動、指をクルクルと回し風を操る。イメージは小さな竜巻。種同士をぶつけて殻を破る。

「力加減が難しいわね、粉々にならない様にしないと」

『僕も手伝うよ。リリーはそのまま魔力を込めてて。僕が魔力のコントロールをするから』

 そう言ってロジーは私の真似をして指をクルクル回し始める。すると力強く安定した竜巻が生まれた。

 カラカラと音を立てて種がぶつかり合うと、次第に殻が破れて割れる。

「ロジー、魔力の制御上手ね。私、魔力のコントロールが下手なのか不安定なのよね。突然暴走しそうになっちゃうの」

『僕は精霊だからね、魔力の制御はお手の物さ。リリーはコントロールが下手って言うよりも、魔力が多過ぎるんだよ。それだけの魔力のコントロール誰だって難しいさ。精霊の僕より多そうだもんね……魔力。暴走されちゃ困るから、強い魔法を使う時は僕が制御をサポートするよ。後は何度も魔法を使ってれば慣れてくるはずだよ』

「お手数おかけします。よろしくね、ロジー」


 そんな事を言っているうちに種は殻を破り、ほとんどの種の中身が出た。あとは中身と殻に分けて取り除くだけ。

「よしっ、あとは殻を取り除くよ。もちろん魔法でね!」

 種を大きな平たい、籐で出来たザルに移し外へ持っていく。

「ロジー、私がザルを振って中身と殻を浮かせるから風魔法で殻だけを飛ばしてくれない? 最初は弱く、徐々に強く」

『オッケー』

 私はザルを振りロジーが魔法で風を起こす。すると、中身よりも軽い殻だけが飛ばされる。


「そろそろいいかな。ロジーありがと」

『どれどれ? お〜ほんとに中身だけ残ったね。これ、オイルにするんだっけ?』

「そうよ。次は根気のいる力仕事よ。まずはキッチンへ行こう」

 二人で家の中に入るまでにロジーは何度もサンシードをつまみ食いをする。

「気に入った? 後でローストしてあげるからつまみ食いは終わりね。楽しみにしててね」

 そう言うとにこりと笑ってまた一粒つまみ食いしたのだった。







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