これから
「神様? 意味が全く以て分からないんですが、分かるように説明してくれませんか?」
『すまんすまん。詳しく話すとな、お主にはストレリチアの地で溢れかえっている魔素を体に取り込み浄化してほしいのじゃ。お主の魂は面白いかたちをしているのでな、それが可能なんじゃ。それでお主を地球から引っ張ってきたわけじゃ。濃すぎる魔素はモンスターを生み出し人が住めない土地にしてしまうからの』
「そんなこと言われても、私魔法も使えませんよ。浄化のやり方なんて分かりませんし」
『そこのところは心配しなくても大丈夫じゃ。お主はストレリチアで生活してもらうだけでよい。自然と体に魔素を取り込んで浄化できる体になっておるからの。息をするだけで魔素を消費してくれるだろう。第二の人生楽しむくらいの気持ちでいればよい』
「あ、そんな感じでいいんですね? てっきり体を使ってなんて言うから変な儀式でもさせられるかと思いましたよ!」
『お主には世界を救ってもらうのだから、そんなことさせるわけがなかろう』
なんだ。ちょっと安心した。ようは人間浄化槽になればいいのね。神様が言うとおり、現世でできなかったことを第二の人生で楽しむことにしますか。
「分かりました。せっかく神様に拾ってもらった命、ストレリチアの為に使います。そして第二の人生楽しみますね」
『そうか。お主には期待しておるよ。それで、いきなり転移しても暮らしていくのは大変だろうから、儂からのギフトを授けるでな。それで生活をしていってほしい』
神様からもらったギフト
・自動翻訳(言葉がわからないと生活できないもんね)
・鑑定スキル(異世界で暮らすにはまずは知識がないとね)
・製薬スキル(世界に一つの私専用スキル)
・アイテムボックス(神様特別仕様∞収納)
神様曰く、そんなに多くのギフトは授けられないが異世界を安心して暮らせる必要最低限のギフトだそうだ。まぁ、これが後々波乱の幕開けになるのだが。
『それとな、ある程度の魔法は使えるようにしておいたでの。あとで確認してみるとよい』
「おぉ。魔法ですか。お水とか火とか出せれば生活に便利ですもんね! あ、神様。突然転移しても異世界に慣れるまで不安なので、大都市は避けて田舎の人の少ない場所から始めてもいいですか?」
『そうだの。それでは田舎から少し離れた森の入り口あたりに住めるような家を用意しておくでの。ただ、もし出来るのであれば一箇所に住み続けず、世界各地に拠点を置いてくれれば浄化もスムーズにいく。ということを覚えておいてくれ』
「分かりました。至れり尽くせりありがとうございます。お花でも育てながらのんびりスローライフでも楽しみますね。あ、地球にあったお花って向こうにもありますかね? いろいろ育てて愛でたいんですが?」
『ふむ。ちと分らんな。それならアイテムボックスに地球にある花の種を入れておくから、それを育ててみるのはどうかの?』
「ありがとうございます。ストレリチア固有の花も楽しみです」
『さあ、長くなったがこれから儂の世界をよろしく頼む』
そう言い神様はまたひらりと手をかざすと光り輝く門が現れた。あの門をくぐれば私の第二の人生が始まるのだろう。静かにゆっくりと門へ向かう。神様に最後にこれだけは言っておかないとね。
「そうだ、まだ言ってなかったよね私の名前。私の名前は鈴音、香月 鈴音。地球のスズランって花が名前の由来なんだけど、鈴のような花を咲かせるんだ。その鈴の花が鳴ったらきっと素敵な音だろうね。って理由で鈴音って名付けられたんだ。そして、花言葉は【再び幸せが訪れる】神様。私の命、拾ってくれてありがとう」
そう告げると神様から
『お主の【輝かしい未来】を楽しみにしておるよ』
とにこやかに返された。
そして第二の人生に向け輝く門へと一歩足を踏み入れた。
眩しい光に閉じていた目をそっと開くと、そこは心地よい風に吹かれる草原と森との境。風に揺られる草原の草の音が心地よい。私の立っている場所は神様から与えられたログハウス風の家の外。しばらくぼーっと突っ立っていたが、頭を振り今度は空を見上げる。青い空に白い雲、地球となんら変わらない風景に早まっていた鼓動は落ち着きを取り戻してきた。
ほんとに来ちゃったのね。これから第二の人生が始まる訳だから、新たに名乗りを変えてみようかな。スズランの英名は【Lily of the Valley】谷間に咲くユリだから、リリーでいいかな。
取り合えず家の中に入ってみよう。玄関へ続く階段を上り扉を開けてみると、中は窓からお日様の光が入り明るく暖かい雰囲気の内装。暖炉まである。使ったことないけど! リビングは吹き抜けになっていてとても広さを感じられる。暖炉の他にもソファーにローテーブルなどの家具まで。
奥にはキッチンにテーブルと椅子、少量の食物、食器棚など生活に必要なものはすべて揃っていた。ワクワクしながら探索を続け、リビング脇に階段を発見。二階に行けば寝室にベッドが置いてあり、思わずダイブしてしまった。
「あぁ~快適。神様ありがとう」
しばらく柔らかなベッドを堪能したのち、眠ってしまう前にむくりと起き上がりお部屋探索を続ける。部屋にはクローゼットがあり、扉を開いてみると異世界のものであろう服が何着かあった。ちなみに今の格好は現世で事故に遭う前に来ていた服。これではこちらで浮いてしまうので、着替えてみた。うん。サイズぴったり。
一階に下りて、そういえば魔法を使えるようになったんだよね。と思い出し、何かやってみようと思ったのだが、あれ? 魔法ってどうやって使うのよ。神様! 肝心の使い方が分かりません!
そう思っていたら飾り棚にあった本が薄く光を放った。不思議に思いながら手に取ってみると【魔法辞典初心者編】なるものが。ページを開くと見たことのない文字で『これをよく読み勉強すること。神様より。ちなみに門外不出じゃ』の文字。見たことない文字だけど読めるね。これが翻訳機能なのだろう。
その他の本もあり、【ストレリチア辞典】や【植物図鑑】【魔物図鑑】【お家の取扱説明書】までもが揃っていた。こちらは後々見るとして、【魔法辞典初心者編】を読んでみた結果が……
・魔法の属性は大きく分けて、火、水、風、土、雷、光、闇の7属性。
・7種類から派生したその他の属性もあるが、お主には必要なかろうとのこと。
・魔法の他にも魔石を利用した生活グッズがある。
・自分のステータスの確認の仕方。
などなど、ほんとに初心者のためのガイドっぽかった。
魔力は個人差があり、使える魔法も様々との事。あと、すごい大事なことが書いてあった。
・魔力が多い人間であろうと少ない人間であろうと使い果たせば死に至る。
怖っ! ちゃ、ちゃんと勉強しよう。そのためにはまずは自分のステータスの確認から。
名前 リリー
職業 なし
称号 なし
魔力 ∞
スキル 鑑定スキル 製薬スキル(特殊)
特記 創世神の加護 アイテムボックス∞ 自動翻訳
色々ツッコミどころ満載なんだけど、まずは名前は既に改名済み。流石です。
職業は無職だって。社会人として色々だめだと思う。早く仕事見つけないとね。
称号って何だろうね?
魔力∞って何よ。って事は魔力使いすぎて命を落とす心配がないのかな?
そういえば、神様が私の体を媒体にして世界の魔素を浄化するって言ってたから、その関係で∞なのかしら?
スキルは神様に頂いたものの通りなので後々試してみる。
特記には創世神の加護だって。神様って創世神だったんだ。創世神ってこの世界を作った神様ってことよね? アイテムボックスと自動翻訳ってスキルじゃないんだね。
う~ん。勉強不足で分からないことがいっぱいだな。
ま、なんとかなるか!