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誓い

「リリー、お料理上手だよね。昨日のシチューも美味しかったな〜」

「何言ってるの。王都ならもっと美味しいもの、沢山あるでしょ?お世辞なんて言わなくていいのよ」

「そんな事ないよ、確かに王都は高級な食材を使った料理が沢山あるけど、リリーの料理は…なんて言ったらいいかな、同じシチューでも何かが違うんだよね。香り?」

「そうだな、それにこのスープ、一見普通の野菜スープに見えるが力が湧くと言うか、不思議な感じだな」

「隊長もそう思いますよね。不思議だな〜。とにかく美味しいんですよ」


 二人共、勘が鋭いです。恐らく、ハーブの事だろう。二人に元気になってもらう為に、シチューにも、野菜スープにもブレンドハーブを使用していたのだ。


「あ〜、それ、ハーブを使っているからだと思います」

「ハーブ? 聞いたことないな」

 不思議がる二人に、ソニアさんや村長さんに説明したように説明をする。

「へぇ〜なるほどね〜。リリーって俺達が知らない事たくさん知ってるのに世間知らずっぽいから、見ていて面白いよね」

「それやめてください。それ言われるのフレドリックさんで三人目です」

「調子に乗りすぎだフレドリック」

と、フレドリックさんはクラウスさんに頭を叩かれていた。

「良いじゃないか世間知らずでも。私など女性に「クラウスさん」などと呼ばれたのは初めてだが、新鮮で嬉しかったしな」

「あ、確かに! 王都では隊長、ウィンザーベルクさ……」

 何か言いかけた時、クラウスさんに口を塞がれるフレドリックさん。

「どうかしましたか?」

「いや、何でもない。そうだなフレドリック?」

「はい! なんでもありません! スープ美味しいです! おかわりお願いします!」

 何か誤魔化されたような気もするけど、ま、いっか。


 そうして三人は朝食を済ませたのであった。


「ご馳走様」

朝食を済ませ後片付けをしていると「リリー、ちょっといいかい?」と、クラウスさんに呼ばれキッチンから出る。

「はい、どうしました?」

「リリーには世話になった。私達はそろそろ出発するよ」

「え? もう体は大丈夫なんですか? あまり無理しない方が……」

 傷が治ったと言ってもまだ万全では無いはず。本当は時間をかけて治すのがベストだったのを、薬と魔法で無理に治したのだ。まだしばらくは安静にしてた方がいいと思ったのだが、

「ここには魔素の調査に来たと、フレドリックから聞いたよね」

「ええ。それで、モンスターに襲われフレドリックさんを庇ってクラウスさんが怪我を。その時に他の隊の皆さんと逸れたと」

「そうだ。フレドリックと話をしたが、隊から離れてまだ3日。調査が滞りなく終わっていれば、そろそろ王都へ向けて出発している頃だろう。急げばまだ追いつける距離だ。ここから王都まで、馬を使い一ヶ月はかかるから今のうちに合流しておきたい。ここから近い街で馬を手に入れればすぐに追いつくだろう」


 一緒に過ごした時間はたった一晩だったけど、少し寂しく感じる。

「そうですか、調査隊の皆さんもきっと心配しているでしょうからね。無事に皆さんと合流出来ることを願ってます」


 それから、クラウスさんとフレドリックさんは出発の準備を整えると、少ない荷物を持ち外へと出る。

 ここから隣町までは徒歩で二日ほど。私は二日分の簡単な食料を二人分用意して見送りに出た。


「クラウスさん、フレドリックさん、どうかお気を付けて。これ簡単なものですけど、二日分の食料とハーブから作った薬です。薬は説明書きを付けたので使い方はそちらを読んでください」

そう言い二人に差し出す。

「ありがとう、リリー。王都に来てくれる日を心待ちにしているよ」

フレドリックさんは昨日の約束を口にして荷物を受け取った。

「何から何まですまない。私にはまだ何も返すことが出来ないが……」

そう言ってクラウスさんは荷物を置き……


左足を立てて片膝を突いた。

「貴方は私の命の恩人。この恩はいつか必ず返すと誓おう、この命はあなたの為に。それまではこの短剣を貴方の傍に置いて欲しい」

 そう言って短剣の柄をこちらに向けて差し出す。差し出されたそれは鞘と柄に綺麗な装飾がされていた。


「え? あ、あの、クラウスさん……?」

 真剣な表情のクラウスさんを前に戸惑う。片膝をつくなんて、まるで……。いやいやいや。


どうしていいか分からず狼狽えていると……


「何も考えず受け取って下さい。次に会う時までこの短剣を預かってて欲しい。いつか必ず再会しましょう」

 言葉と表情を柔らかくし、こちらへ微笑む。


「わ、、分かりました。預かるだけですよね。次に会う時まで大切にしておきます。」

 思わずドキッとしてしまい、照れを隠すようにそう言って受け取った。


 名残惜しいが、そろそろお別れ。二人は背を向け歩く。


 すると、しばらく歩いたところでフレドリックさんが走って戻ってきた。

「どうしたんですか?」

「さっきの、騎士の誓いだから。その短剣、大事にして。隊長はリリーに忠誠を尽くすと誓ったんだ、忘れないで」

 そう言って走り去って言った。


 ーーーーーーーーー!!!! 心の底から叫びたくなる!

 忠誠だなんて、そういうのは王様に誓うんでしょ? 何であたしに誓うのよ! どういう事よ!


 先程の真剣な顔のクラウスさんを思い出して赤面し、膝を抱えてしゃがみ込んだ。


 しばらくは何度も思い出して赤面する日が続くだろう。




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