新たな出会い
それから私は孫ちゃんズを引き連れ村の外までやって来た。外と言っても村の柵の外側である。小さい子を村から離れたところになんて連れて行けないもんね。
そうそう。あれから孫ちゃんズと改めて自己紹介をして、上からマリア十一歳、リース十歳、シルヴィ八歳、セリア八歳、そして最年少ミリア六歳であることを知った。
ちなみに、マリア、シルヴィが姉妹でリース、セリア、ミリアが別姉妹である。
「さ〜てみんな! 今日はお手伝いお願いね!」
『は〜い!』
アイテムボックスからペパーミントを取り出し、孫ちゃんズに預ける。
私が土魔法で土を耕し、孫ちゃんズがペパーミントを植えていく。
そして、村の周り計三箇所にペパーミントを植えていった。
「みんなお顔が泥だらけよ。家に帰って綺麗にしないとね!」
「あはははは! 魔女さまもお顔に土が付いてるよ」
「えっ? やだ本当みんな同じね。ふふふっ」
『あはははは!!』
楽しい時間もあっと言う間に過ぎて、気付けば西の空が茜色に染まっていた。
「そろそろ帰らないと。みんな今日はありがとうね」
そう言って村の入口で別れを告げた。
さて、帰るか。と村を出ようとしたら、声をかけられた。
「魔女様、これからお帰りかい? これからじゃ、暗くなって危ないですぞ? 夜になればモンスターの動きも活発になりますから、今日は村に泊まっていかれては?」
と、バルテロさんとは違う門番の男性に引き止められた。夜の見張りの人かな?
「大丈夫ですよ。一時間半くらいで家に着きますし、いざとなったら魔法で何とかなりますから。」
心配してくれる門番さんにそう告げて自宅へと向かった。
だが……
「い、意外と暗くなるのが早い?」
一時間歩いたあたりで空は既に暗くなっていた。こんなこともあろうかと、アイテムボックスに入れてあるランタンを取り出す。ランタンには火の魔石が入っており辺りを照らしてくれる。
「後三十分くらいかな。急いで帰ろう」
その後は特に何事も無く無事に家にたどり着いた。
門番さんが心配してくれた通り、ソニアさんの所へ泊まれば良かったかも。などと考えながら家の敷地に入ると、何だか違和感と微かな音が聞こえる。
家の前、カバードポーチの手前のあの深紅のバラがある所……。
「うっ……だ…………か……」
ヒッ!! 誰かいる!! ランタンをかざしてみても自分の周りしか見えないので、暗闇から聞こえる声に恐怖を感じる。
やだ、どうしよう。あまりの恐怖に心臓がバクバク音を立てる。
「だれか……助けてくれ…………」
また声だ。助けてくれ? 恐る恐る左手でランタンを掲げ、いつでも魔法を打てるように右手をかざしながら近づいていくと、そこには……
「すいません、ここの家の方ですか? 助けてください」
なんと、深紅のバラにグルグル巻にされた鎧を着た男性が二人。バラに巻き付かれていて顔はよく見えないが、一人は意識が無いように見えた。
大変!! とバラに近づくと、バラの枝が一本私の前に出てきて「近づかないで」と言っているようだった。
すると、男性は素早く口を開いた。
「そのまま聞いてください。私達は王都から派遣された騎士です。名はフレドリック・フォン・ブラバンドール。この辺りの魔素の調査に訪れていたのですが途中強力なモンスターと出くわし、他の調査隊とはぐれてしまったのです。その時に私を助けてくれた隊長が大怪我を負ってしまい、森をさ迷っていたらこの家が。勝手に家の敷地に入ったのは申し訳ありませんでした。どうか、どうか隊長を助けてください!!」
必死でこちらへ訴える男性の緊迫した様子に心が折られた。
「ねぇ、離してあげて。一人は怪我して意識がないみたいだし、私、その人助けてあげたい」
そうバラにお願いすると、スルスルとバラが解けていった。
「私の為に家を守ってくれたんだよね。ありがとうね。でも、やり過ぎよ」
そうバラに声をかけ、男性の方へ体を向ける。随分と若い騎士のようだった。
「すいません。ありがとうございます」
フレドリックさんはバラの棘が所々に刺さっていて痛そうだ。
「うちのバラがすいません。手当をしますので、どうぞお入りください。その代わり、一つだけ条件があります。何も見ても口を挟まない、聞かない。約束できますか?」
そう言って、家の扉を開け明かりを灯す。
「分かりました。隊長を助けてくれるなら何でも従います。お願いします」
そして、男性は意識のない方の男性の腕を肩に回し引きずる形で家の中へ入ってきた。
「こちらのソファーにどうぞ」
隊長と呼ばれていた男性をソファーに寝かせ、手当をしようとするも鎧が邪魔で怪我の具合がわからない。
「すいません、鎧を外してもらっていいですか? 怪我の具合が分からないので」
そう言って、フレドリックさんに鎧を外してもらう。
「あなたの手当も後でしますので、鎧を外しておいてください。あと、これ。見える部分はご自分で棘を取っていてください」
そう言って、タオルとピンセットを渡した。
「さてと、早く手当をしないとこっちの男性が危なさそうね」